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僕とサービス業。対公僕バージョン。

 今回も『飲食業などのサービス業の人からいわれもなく邪険に扱われる男』の続編です。
 しかも今回の相手は、捕らまえようによっては『究極のサービス業』といってもよい、公僕、英語でいえばその名もシヴィル・サーヴァント、ときの体制側に属し、特にその体制からのお墨付をもらって、市民にサービスをすることを義務付けられている人たち、すなわち公務員です。

 その中でも、きょうは『治安維持方面担当公僕』、つまりは『警察』、とのことです。
 おいおい、ポリース(『ぽりーす』、と伸ばしてお読みください。・・特に意味はありませんけど。)と相性がよろしい人となんて、そもそもそうはいないんじゃないか、何しろ公僕とはいえ、市民を『取り締まる人たち』だからさ、と思われる方もおられるでしょう。そういうご感想には、僕も無条件に与してしまうものです。
 だいたい『私って、警察とすっごく相性がいいの。駐車禁止で指摘されても、結局、切符をきられなかったことが20回くらいあるのよ!』なんて人がいたら、それは『その人と警察官との相性』云々以前に、この国の治安維持自体はいったい大丈夫なのか、だの現行憲法が謳う法の下での平等はきちんと担保されているのか、だの、という壮大な論争をしなければならならくなっちゃいます。もちろん、そんな高邁な話をするつもりは全然ないです。
 或いは、そうかと言って、『へへ、間抜けな野郎だ。一回でお縄かよ。俺なんか今まで百回以上ヤマを踏んだけど、一度も捕まってないぜ。』という、非合法的生業を職業的になされている方面の方、『どろぼう』ですね、と同じ土俵にのって、彼らと比べて、僕の警察との相性がどうの、などという論争をするつもりもございません。
 
 そんな難しいことでも、うしろめたいことでもなくて、僕は『一市民としてなんとなくいわれもなく警察と相性が悪い』んです。
 断っておきますが、僕は、ポリースという、体制側の恣意的な治安を維持せんがため、ある種の暴力的な権力を天賦されることになった公僕、-ええ、しつこいですが、英語でいうところのシヴィル・サーヴァント、ですね。-に特に恨みがあるとかいうことではありません。特別に応援もしてませんけど。それが証拠にここでは以後、警察官、と書かずに、おまわりさん、といや、もっと親しみをこめて、そうですね、『コウボク』だけに『おまわりくん』と呼ぶことにしましょう。
 もうそういうことに決めちゃいました。

 先日、なんでだかは覚えていないんですけど(だいたい僕は結構な頻度で、自分の行動の原因を覚えてません。特に結婚してからは激しいです。)、僕はさい君と二人で、東京駅の地下コンコースを歩いていました。休日の昼間だったと思います。どうしてだかは覚えていませんけど、息子は一緒じゃなかったです。僕の家から東京駅は、決して近くないし、そもそも人混みが嫌いな僕が、さい君とわざわざ東京駅のコンコースなんぞにいたんだから何か理由があってのことだったはずです。その理由はちょっと思い出せないんですけど、とにかく、広くて人が大勢行き交うコンコースを何かの目的をもって僕らは歩いていました。
 と、目の前の人混みの中から、雲の端がちぎれ落ちるように、なんだか、冴えないサラリーマン風で、太い眉と妙にくっきりした二重瞼、という濃厚な顔つきの、地味なブルゾンを着た小柄な年配男性がふわりと現れて、僕らの前に立ちはだかりました。
 なんだろう、電車の乗り継ぎでも聞こうってのかな、そんならわかる範囲で教えちゃうけど東京駅の番線を全部知ってるわけじゃないぞ、それとも何かの勧誘かな、だとしたら無視に限るな・・、と一瞬のうちに僕なりに対応策を検討していたら、その男性が、いきなり、小声で、
 「ちょっとすみません。」
 と言いながら警察手帳を僕らに示しました。どうやらその年配の小男は、話に聞く、私服警察官、ええと私服おまわりくん、ですね、だったわけです。

 -ええ、余談ですけど、最近おまわりくんと接触したご経験のある方ならご存じかと思いますけど、現在の日本の警察手帳って、アメリカ映画のそれと同じく縦に開閉できる型の手帳になっているんですね。以前は日本の刑事物のテレビドラマでは聞き込みに回る強面の刑事が眉間に皺なんか寄せて『こういう者ですが。』なんて言いながら左右見開きの手帳を見せていたように記憶していましたが、最近日本のテレビでもアメリカ映画みたいに縦にぱらり、と開閉する警察手帳を使っていて、僕はてっきり『ははん、格好いいからってアメリカの映画を真似してるな。全く日本人はなんでもこれだから。』と決め付けていましたが、そうではないんですね。日本の警察手帳もいつのまにか左右見開きじゃなくて上下に、ぱらり、と開閉するようになっていてその事実をドラマ制作者側がちゃんとアップデートして模倣していたわけです。-

 その小柄な年配おまわりくんは、しかし眉間に皺を寄せて『こういう者ですが。』なんて重厚な態度ではなく『ちょっとすみません。』とだけ手短に言うと、ごく自然な澱みない動作で、すーっと警察手帳を出すと、ぱらり、と、縦に開いて僕たちに見せ、さらに、まるで見せ惜しみでもするかのように、これまた、あっという間に、さっと手帳をしまいこんでしまいました。
 なんだなんだ、私服おまわりくんに追われるようなことをした覚えなんかないぞ、と、しかし、それでも警察手帳の力に、僕は心ならずも歩を止めました。そして、私服おまわりくんが何かを言い出そうとするのと同時に、僕としたことが、事情が全然飲み込めないさい君に『私服おまわりくんだってさ、なんだか知らないけど。』と、さい君の母国語で説明してしまいました。
 すると、さすが世界に冠たる日本のおまわりくん、この短い会話を聞き漏らすはずもなく、目をぎらりと光らせ、
 「こちらは・・・外国の方?」
 とあたかも攻めどころを得た、といわんばかりの勢いで、僕の横に立っている女が外国人であるらしい、という情報にするどく突貫してきます。(さい君は、そのDNA方面においては100%モンゴロイド、なので黙っていたら日本人に見えないこともないんです。)うわ、しまった、面倒くせえなあ、と思っていたら、案の定、
 「外国人の方なら、アレ持ってますよね。」
 と言われ、さい君の外国人登録証明書の提示を求められてしまいました。さい君はさい君で、
 「黙っていればいいものをケイタが余計な説明をするからこんなことに・・・。」
 と半分むくれてぶつぶつ言いながら億劫そうに鞄の中から外国人登録証明書、-以前説明したその英文名も『certificate of alien registration』と書いてある自動車免許証大のカードですね。-、を出して私服おまわりくんに渡しました。おまわりくんは、
 「ええと、おふたりは・・・?」
 と僕らの関係を詮索してきます。
 「夫婦ですけど。」
 兄妹のわきゃねえだろ、愚問だ、と思いつつ、しかし、やましいことは何もないし早くこの事態から抜け出そう、と、できるだけ簡単に返答します。ところが、その私服おまわりくんはおまわりくんのくせに外国人登録証明書にあまり詳しくないのか、あるいは、よほど外国人登録証明書好きなのか、手渡されたそれを、老眼のためかすこし自分の顔から遠めに持ちながらも、ためつすがめつ、或いは何度も裏返したりして、いやに熱心に熟読しています。

 と、ふと気づくといったいどこにいたのか、コンコースの人の雲のなかから、別の若い短髪の、今風の垢抜けた服に身を包んだ若者が僕らに近づいてきた、と思ったら、無言で、例の如くすーっと警察手帳を出すと、ぱらり、と見せ、あっというまにさっと懐にしまいこんでしまいました。ほう・・・これまた私服おまわりくんか。でも別に俺んちには法律的な何も問題はないと思うんですけど。
 「ほう、ご夫婦・・、えっとそのことはここには書かれていないようですね・・・。」
 おいおい、あんた、おまわりくんという身分にあって、しかもあんだけ熟読しておきながら、それはないだろう。僕は、何か言いがかりをうけたような気になって、予想外に長い時間足止めを食らっていることも手伝い、気分を害しました、少しですが。
 「え、いや、書いてあるはずですけど。ええと・・・」
 言われて見ると、灯台下暗し、ではないですが、僕もさい君の外国人登録証明書なんか熟読したことなんぞないので、即答できずに、多少目が泳ぎました。が程なく表に印字されている僕の名前をみつけ指差しました。
 「・・・ええと、あ、ここにほら配偶者、って書いてあるのが僕です。」
 「ほ、ほう、なああるほどお!ここに書いてあるわけですか?ここにねえ?普通こういうのっていうのは裏に配偶者の名前とかビザの種類とかが書かれているもんじゃないんですかね?ねえ?」
 私服おまわりくんは妙に大仰に関心してみせたかと思ったら、なんと僕に対しての質問でひと台詞を終えました。そんなこと、俺が詳しく知るわきゃねえだろ。むしろ公僕たるあんたたちのほうが詳しいべきじゃないんですか?それに『普通こういうのってのは裏に・・・』の『普通』ってなんだ?
 「ほ、ほう、ここにねえ・・・、でお二人はご夫婦と・・・。」
 だから!さっきからそう言ってるでしょ、となかなか外国人登録証明書を返してくれない私服おまわりくんに多少苛々しながら、ふと周りをみて驚きました。
 なんとなれば、いつのまにか僕らを囲む私服おまわりくんは、4~5人もいたんです。その人たちがどこからともなく現れて、いちいち、僕らにむかって、無言で例の『すーっ、ぱらり、さっ』を繰り返すわけです。さすがにこれだけの人数の私服おまわりくんたちに囲まれて、しかも一様に『すーっ、ぱらり、さっ』をやられると威圧感があります。その様相はたまたま僕の手元にある夏目漱石の『吾輩は猫である』新潮文庫の230ページ風、に言うと、『・・そうすると、烏賊の墨を吐き、べランメーのほりものを見せ、主人が羅甸語を弄する類と同じ綱目に入るべき事項となる。』ていう感じにぴったりです(注:まがうことなき『引用』ですので『引用部分の言葉使い』に納得がいかない方は、僕に、ではなくて、新潮社さんか『吾輩は猫である』の現在の版権所持者の方、にお問い合わせください。)。
 いや、驚きましたねえ、侮ることなかれ私服おまわりくん、一体全体どこにいたのか、と僕が思うのも道理、改めてよく見てみると、女性こそいないものの、その見た目は実にバリエーションに富んでいて、ひとりめの『冴えないサラリーマン風』、ふたりめの『今どきのあんちゃん風』以外にも、『30代半ばのスーツを着た、痩せて背の高いちょっと神経質な技術職風』『休日に都心をぶらついている中肉中背の可もなく不可もない独身サラリーマン風』・・・、と見事におまわりくん臭を消して、いろいろ取り揃えて大衆に溶け込んでございます、といわんばかりの陣容でした。
 その私服おまわりくんたちが、冴えないサラリーマン風おまわりくんが僕らを足止めしたのを見て、餌にたかる生簀の魚のようにコンコース全体から集まってきてしまったわけです。
 「はい、夫婦です。」
 けれども驚いてばかりいてもしょうがないので、早く解放してくれないかな、と僕はじりじりしながら先ほどと同じ返答をしました。いくらたくさん集まってもなあんにも収穫なんかないよ。しかし、濃い顔の私服おまわりくんは、まださい君の外国人登録証明者を片手に粘った挙句、ようやく、彼らの目的を吐露したんです。
 「いやね、今、私たちね、家出人を探してましてね。」
 ・・・???!! 
 こらー!おまわりくん諸君!それは、二人とも垢抜けないものを着てるかもしれないし、さい君は年齢のわりには童顔かもしれないけれど、なんで小学校に通う子供のいるいい年をした夫婦に『地方から家出してきて東京駅を徘徊するカップル』という疑義を抱くのかね!そういう先入観で見ていたもんだから片方が外国人と知って二人の『身元不詳度』がとりあえず深まったので、しつこく食い下がったんですね。しかもその様子を遠巻きに見ていた私服おまわりくん仲間が、これは脈あり、通常の男女ではないようだ、それっ、てなもんで、勘違いして集結してきて『警察手帳ぱらり連発』になったようなんです。
 なんで私服おまわりくんに突然囲まれたのか、という理由を『釈放寸前』に知った僕は、『獲物ではなさそうだ』と判断したあと打って変わってさっさと群集に消えていった私服おまわりくんが僕のことを家出人、どころか、あやうく女衒扱いをしていた可能性も高い、ということにようやく気づき、それでもあんたらプロか、どんだけ無駄な時間や血税を俺らふたりに使ってるんだ、と憤慨しましたが、そこはプロ、ついさっきまで僕らを囲んでいたはずなのにもうどこにいるのかもわからず、それこそあとの祭りでした。

 『なんとなく相性悪い』でしょ?
 しかもなんかこれも極めて理不尽じゃないですか?

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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