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就業規則違反。

 最近はそういうことをしなくなったけれど、若い頃は、よく、と言わずとも何度か仮病をつかって会社を休んだことがあります。難しく言うと、たいていの会社ではそうだと思いますけど『就業規則違反』と定義されるもので、簡単に言うと『ずる休み』ってやつですね。じゃあ『就業規則違反』したらどうだったか、というと、これがもろ手を挙げて爽快なものか、というとそうでもないです。したことのある人ならお分かりになると思うんですけど、それはやっぱりその日は仕事から解放されるし、携帯電話もまだ普及していなかったから、お客さんから追いかけられることもない上に、二度寝なんぞもできちゃうんですけど、ずる休みをしてしまった、という少しの罪悪感、と、もともと仮病を使うくらいモチベーションが低いうえに、結局は休んだぶん『ああ、あしたは、あれとこれとそれもやらないと・・・』と、自分の翌日の業務に跳ね返ってきて、明日は普段より倍忙しいだろうな、と簡単にできる予想からくる強い重圧、とを感じて、なんだか気分が晴れないです。といって外出するような元気もなく、つまるところ、まったりと、そして、鬱鬱として一日をすごすことになっちゃうんです。

 それで、悶々としながら、日の明るいうちからだらだらとテレビを見てすごす、というより『なんとなくテレビの前で凝固させられる』というネガティブな、かつ受動態的極まりない時間を消費する場合がほとんどでした。では、そんなにテレビが面白いのかというと、これがまるで逆で、すごくつまんないんです。ただし『受動的に時間を消費する』にはテレビというのは秀逸な道具なので、結果そうなるだけです。
 だいたいが、平日の昼のテレビ番組(そのころは衛星放送はまだありませんでした。)は、『就業規則違反をした会社員』なんて視聴者として前提にしていないから、僕には面白くないのも道理です。よろめきドラマだの、料理番組だの、ゴシップを詳細に追いかけるワイドショーだの、特に知りたくもない有名人の家の詳細な紹介だの、家ならまだしも有名人の飼っている犬の紹介だの、(断っておきますが、僕はそれらを否定しているわけではありません。僕の興味と、その時間の視聴者の大半を占めるであろう、世の中の専業主婦層のみなさんと嗜好が違うんだから興味がわかないだけです。もとよりこっちは何を隠そう『ずる休み』をしているので、そもそもが平日の昼のテレビ番組を批判できるような立場ではございません。)を『つまらんなあ』と思いながら見るわけです。

 それやこれやでアンニュイに時間を浪費しているうちに、16時近辺から突如多くの放送局で『時代劇の再放送乱発』が始まります。これがまたつまんないんです。そもそもが時代劇というのはどれも『予定調和』の典型みたいなもので、番組によって、形には若干の違いはあれど、おおよそ、お涙頂戴、勧善懲悪、ハッピーエンド、の連発です。僕は、再放送のみならず、時代劇そのものにあまり興味がないです。
 そこで、その日の始めてのそれといってもいい、僕の思考回路が『仕事』を為します。
 すなわち、『そもそもが面白くもなんともない時代劇の、しかも再放送を、こんな時間帯に見ているのって一体どういう人達なんだろう?』と、『ビュッ!』『グサッ!』と何十人も殺戮されるお侍さんたちを見ながら、ぼんやりと、しかし、素朴に『疑問を感じる』わけです。自分の境遇を棚にあげておきながら、です。『たくさんのテレビ局がこぞってこの時間帯に時代劇の再放送をするからには、この時間帯にテレビを見ている人のマジョリティーは【平日の16時ごろ在宅していて時代劇好きな人】ってことだよな。ほんとかよ。信じられんなあ。』ってね。少なくとも『就業規則に反して家にプチ引き籠りをしている若いサラリーマン』をテレビ局がターゲットにしている、とは考えにくいです・・・。
 僕の斯様な素朴な疑問は、-しかし、特に執着するような疑問でもないです。―、『ずる休み』をする度に繰り返し反芻されることこそあれ、長らく解決されることはありませんでした。

 ところで、話は全然変わりますけど、僕はある時期、もう妻子もちになってからですが『ちょっとした事情』があって数年間仕事もせずに家でぶらぶらしていたことがあります。そういう時期が僕にとってどうだったか、というと、これはその原因である『ちょっとした事情』に起因するところが大なんですけど、てんで楽しからぬ日々でした。が、その事情は本題とは関係ないのでここでは触れません。ただ、そういう身分なので時間だけはたっぷりあって、それで安い時間帯の会員になって近所のフィットネスクラブに通い始めました。
 フィットネスクラブに通われたことのある方なら、よくご存じだと思うんですけど、実はフィットネスクラブというところは高齢化社会という今の世相を、これでもか、というくらい如実に反映しています。イメージは『健康』だったり『若々しさ』だったりするわけなんですけど、実態はというと、そこにいる人は殆んどが40歳以上です。僕は間違えてもそういう目的で通っているわけではありませんが、自然とみなさん肌の露出が多い、あるいは体のラインがでやすい服装で運動されているにも拘わらず、『目の保養』という面では、ほとんど期待できないですね。ごくたまに、年齢に反して体型を保たれている女性なんかに出くわすと『お―!』って感じです。(他意はありません。)さらに、数か月に一度くらい、20歳代と思しき方をみると『うお―!若い!』って瞠目しちゃうくらいです(他意はありません。)。場所柄、あるいは経済的な側面、ということもあると思いますが、まず10代の人は皆無と言ってもいいですね。
 僕の観察によると、20~30代の方よりも、40代~50代の方のほうが足繁く通われているようです。そういうつもりはないのに、こっちが顔を記憶しちゃうくらいですから(じゃあ、そういう人達の体型がその目的に近づいているか、というとこれがそうでもなくて、御顔も体型もほとんど変わらないので、通っている僕としては『通っても無駄だよ』って例示されているようで結構不安になっちゃたりするんですけどね。)。
 そういう『常連さん』はお互いに知り合いになってなんだかとても仲好さそうにしています。僕は元来、人見知りするほうで、そういうところで知り合いを作るのは苦手なので、いつも黙々とやってましたけど、それはお互いの価値観だから別にかわまわないわけです。ただ、そういう常連さん、なかんずく日本が誇る中高年のご婦人方の中には『運動にくるついでにおしゃべりをしているのか、おしゃべりの合間に運動をしているのか』わかんないような集団が散見されます。
 先日も、-夏の暑い日でした。-、僕が『チェストプレス』という、主に大胸筋を鍛える座って錘を上げるマシンで、僕にとってはMAXに近い重さをあげようと顔を真っ赤にしてうんうん踏ん張っている、まさにその時のことでした。
 『チェストプレス』の前にはベンチがあります。これは、そこでお目当てのマシンが空いていないときに順番を待ったり、セットとセットの間で筋肉を休めるために供されているベンチです。間違ってもおしゃべり用におかれているベンチ、ではありません。しかし、そこは百戦錬磨の中高年のご婦人方の常連さん、一応スポーツウエアに身を包んではいるものの、数人で占拠しておしゃべりに興じています。僕は別に関係ないから、いつもの光景だな、と思いつつ黙々とチェストプレスをこなしています。向きでいうと僕とベンチに横一列に並んだご婦人方は1メートルほどの距離をおいて正対しています。
 僕は、黙々とチェストプレスをこなし、だんだん錘をあげていきました。ご婦人方のおしゃべりは、-これもまたそういう集団に顕著に見られる特徴のひとつですが。― 頻繁に話題を替えて、そうですね、さっきまで某芸能人の話をしていたかと思えば、今度は、健康食品の話をし、それがまだ終わっていないようなのに、あっというまに、おのおのの子供の話をして・・・、と続きます。これは、しかし、話題を替えたければいくらでも替えてくれたらよろしいのであって、何しろ1メートルしか離れていないので、聞くとはなしに僕の耳にその会話の内容は入ってはきちゃいますけど、興味もないし、僕の関知するところではありません。
 そして、僕にとってのMAXに近い重さをあげようと踏ん張ったそのときでした。突如、ご婦人方のひとりが例の如く話題を前の話題に全く関連もなくドラスティックに、しかし、シンプルに切り返しました。
 「もう、暑いわねええ!」
 僕は、まさに錘をあげている途中で最後まであげきろうと渾身の力を振り絞りました。
 「ほんと!そうよね、今年はほんとに暑いわよね!」
 ・・・次の瞬間、不覚にも僕はご婦人のひとりの返答に完全にやられて、脳から心から、全身の筋肉までが『いや、あのね』と脱力してしまい、錘を上げるどころか、へなへなと錘をおろさざるを得ませんでした。すなわち、その方は我が意を得たり!という真剣な表情で、かつ大声で、こう言われたのです。
 「そう、あっつい!だから、こういう日はここへきて
  涼まなきゃねえ!」
 !!?・・そりゃあ、本末転倒、ってえもんでげしょ!
 「そうよねえ、ほんと!」
 「そうそう、ここは涼しいから!」
 侮るなかれ、日本のご婦人たち。

 さらに某日、その時は僕が運動を終えて、フィットネスクラブの出口を出て階段をおりて、駐輪場に向かおうとしたときでした。やはり帰宅しようとして僕の後から階段を下りてきたひとりのご婦人が、階段を登ってきて、これからフィットネスクラブに行こうというひとりのご婦人に大きな声で、話しかけられました。
 「あら、奥さん、これから?今日は、おそいじゃない?」
 それに対する登って来たご婦人の答えは、僕の長きにわたる疑問を一瞬にして解決、しかも氷解と言っていいでしょう、してくれました。
 「そうなのよ、ほら、わたし、あれ、ほら、みとこーもんを
  みないといけないから!」
 「ああ、そう!なるほど、だからこの時間なのね!またねえ!」
 おお!夕方の時代劇の再放送をその日の生活の優先順位として高く位置づけている人はこんなところにいたのかっ!『みないといけないから』って、どういう類の義務なんだろう。
 しかもそれに対しての返答が『ああ、そう!なるほど』ってなんだ!?

 たしか村上春樹さんの文章にあったと記憶しているんですけど『世の中の専業主婦が日頃考えていることは完全に僕の考えの埒外にある。』っていう言葉に、僕は無条件で賛成しちゃいます。

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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