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アントニオ猪木さん。

 何が『ぶれない』といって、『アントニオ猪木さん』と『日本の酔っ払ったサラリーマンの常軌の逸した行動』ほど、期待を裏切らないものはない、と思います。
 登場する度に『んんみ皆さん、んん元気ですかっ!』と『近況を尋ねること』を叫ぶだけで大衆の空気を一気に掴み、彼らの横っつらを満場注視の中、次々と張り倒して、何事もなかったかのように帰っちゃうんであります。斯様な光景は、日本滞在歴の浅い外国人なんかには理解できないんじゃないでしょうか?だって、時にはそれを食らうため行列までできちゃうわけです。それも何年にもわたって、猪木氏がでてくると同じ光景が洩れなくついてくるわけですから。幸い、僕のさい君は、まだこの偉大なる普遍性にまだ気づいていないらしく、彼女から詰問されたことはないですけど、聞かれたらうまく説明する自信はないですね。なぜ、大勢の人がこの人がビンタするたびに、そうするのはわかっているくせに『お―』と喚声をあげるのか、また、されたいがために『喜々として並ぶ』のか、ってちょっと外国語で簡単に理解を求め得るとは思えないんです。光景はシンプルなんですけどね。

 同じように、『日本の酔っ払ったサラリーマン』のパフォーマンスは間違えても時代に阿ることなどもなく、今こうしているときにもあちこちで営営と繰り返されているわけです。いったいあんな凄い行動をとる御仁が昼間にはどこにどんな顔をして一般人に埋没しているんだろう、と、自分のことは脇において感心してしまいます。

 前編の『隊員募集中。』の中で紹介した仲のよい後輩の一人に田淵君がいます。
 一時、彼も僕も、-色んな意味で本当に『若かったんだなあ』って思います。-毎日のように終電まで仕事してました。とにかく忙しくて、その日の仕事が終わったから帰る、っていうよりも、仕事はまだまだあるけど、電車が無くなっちゃうので今日のところはここまで、っていうことで帰るわけです。いや、正確にいうと、その0時27分発の地下鉄の終電に乗って帰るのではなく、『飲みに』行ってました。僕と田淵くんは帰る方向が同じだったので、終電に乗って、電車で30分くらい先の、お互いの家の最寄りの繁華街のある駅で降りて、25時くらいから飲みはじめるわけです。ちょっと異常です。なにが異常って、終電間際になるとどちらからともなく声をかけてきて、いろんなことを話しながら、連れだって駅に行き、終電に乗るんですけど、しかし『今日は今から飲みに行くぞ』なんて、一言も言及せずに『ごく自然に』25時にはビールを飲んでるんです。(まあ、しかし、田淵君はわかんないですけど、僕に限っていうと、確かに自分の能力の何倍もの仕事に追われていた、のは間違いないですが、業務の優先順位の付け方など要領が悪かった面は否めないと思います。いずれにせよ、若かったな、って思います。)

 斯様な時間帯に電車に乗ろうとかという人は、僕らみたいに『これから飲みに行く派』っていうサラリーマンは少数で、どっちかというと『もう出来上がってる派』が殆んどでした。それで、僕も田淵君も素面で『出来上がってるサラリーマン』に遭遇することが何度もありました。
 
 ある日、いつものように、僕と田淵君が終電で帰ろうと地下鉄のホームに降りていくと、すぐに、
 「あ・・だはははは!みどりさん、すごいっすよ!」
 と田淵君が叫びました。
 「え?おおお、なんだこりゃあ、わはははは!」
 と僕も弾かれたように笑ってしまいました。
 
 そのプラットホームの端には、二人の泥酔したサラリーマンが微妙に距離を、-たしか、5,6mくらいです。-おいて、ひとりは頭の方向をのぼり方面に、もうひとりは頭の方向をくだり方面に向けて二人とも仰向けに、眼鏡が斜めにずれて、髪も服装も乱しに乱し、しかし、線路とはやや角度をもって、ちょっといびつな『ハの字』のように、完全に眠りこみ、倒れていました。
 僕らのその『ハの字』を通り抜けながら、
 「いやあ、なんですかね。はは、この人たちは、なんか
  『終電に間に合うように、必死になって駅にきてプラッ
  トホームにまではなんとか辿りついたものの、その時点
  で全てを出し切って果てた、無念!』って感じが見事に
  感じられますねえ。だはは!」
 「そうだなあ。ぐふふ。ホームにはベンチもあるけど、
  『そこまでは無理でした』って見事に表現されてるなあ。」
 「しかも一人目が力尽きて、まず倒れて、それを助ける
  余力もなく、5,6メートル先で『俺も力尽きた、
  すまん!』って語ってますよね。」
 「うん、なんかあれだな、見ようによっては、西部劇の決闘
  ごっこでもして相撃ちでお互い『うう、やられた』っ
  ていう風にも見えるぞ。」
 「酔っ払って西部劇ごっこして、そのまま寝ちゃったんです
  かね、がはははは!」
 「いや、確かに酔っ払いといえどもこの距離と果て方は
  説明がつかんなあ、だはははは!」
 と、その『ハの字に駅で果てているサラリーマン』には申し訳ないものの、笑いをこらえきれませんでした。そのあと、僕らはホームの半ばまで行って、来た電車にのっちゃったのでお二人がどうなったのかはわかんないです。

 さらに別の日、またしてもいつもの如く、終電で飲みに行こうと、夜中のプラットホームに降りて、しばらく歩いました。
 田淵君の、
 「あれ・・?うわあ、わははは、みどりさん、
  すごいことしてますよ、あの人っ!」
 という呼びかけと、僕らの後ろから駆けてくる駅員の、
 「こらあ!何やってんだあ!やめろ!」
 と真夜中のホームに響く大きな怒気を含んだ叫び声が同時に聞こえた時、その先に見たものは・・。

 「???だはははは!」
 「いやはは、すんげえっす!」

 そこにはコートを着たひとりの明らかに泥酔したサラリーマンがいました。彼は、ホームの壁に顔を向けてほぼくっついて、しかし、ややはすに、僕らに背中を向ける態で立っています。彼が立っている場所は、ホームの空調機があり、空調機が壁から、そうですね、20センチくらい、ホームにはみ出しています。彼は、そのわずか20センチが作る凹凸の直角点に正対して張り付いてるわけです。しかし、張り付いているだけではなく、彼の足もとにからは尋常ならざる量の液体がホームにじりじりと滲み出ています。

 「がはは、あの人、一応ばれないようにやっている
  つもりなんですよ、きっと。」
 「ぶふふ、そうだな、だけど、後ろから見たら
  ほぼ180度全露出、じゃねえか!」
 「ですよね、だは、誰が見ても『ホームで立ちション』
  ってわかりますよね。」
 「うん、でも一応気をつかって、『隅っこ』を探し
  たつもりなんだろう。」 
 「『隅っこ』つったって、空調の壁は、20センチしか
  ないっすよ!」
 「ひゃはは、うん、しかも、結局はホームに盛大に垂
  れ流してるし!」

 駅ですから、もちろん、トイレはあるんです。でもそのサラリーマンの方はそこまで行くのは面倒だなあ、どっか『人眼のつかない隅っこで』と一応気は遣ったようなんです。でも、その彼が『ロックオンした隅っこ』はたかだか20センチの空調機の凹凸によってつくられたものなので、実際には彼の背中からみたら『明らかにプラットホームの壁に向かっておしっこしてる』のは火を見るより明らかで、20センチの隅っこにへばりつこうが、結果は同じなんです。
 『ゴルゴ13』ならもっとも許し難い状況であります!
 そして、僕らには、彼がその己が股間を小さな隅っこへ密着させている懸命さが、

 ①尿意が限界だ。
 ②でも改札の方まで戻るのは面倒だ。
 ③ホームでするのは、ちと、しのびない。
 ④だから、行動可能範囲内で『よりふさわ
  しいところ』を探してみました。

 という『ささやかな気遣い』を如実に語っているのが明らかに感じられて、さらに、それらを一掃して台無しにして余りある、あたかもいにしえ太陽の沈まぬ国と異名をとったスペイン帝国無敵艦隊かのごとく、その侵略領域を拡大する一方の彼の足元の湖面が放つ堅牢な雄弁性に、笑いをこらえきれませんでした。
 残念ながら、彼の正体は少なくとも『デュ―ク・トウゴウ』ではなかったらしく、彼が頼りにした隅っこは文字通り『金隠し』以外の機能は何ものをも果たしていなかったわけです。
 
 彼は、
 「やめろ!」
 と駅員に言われているのにも拘わらず、一応口ではむにゃむにゃいいながらその邪悪な帝国支配拡大を継続していました。そらそうですよね、そんなまともな判断ができるくらいならかような蛮行には及ばないし、途中でやめろ、っていわれても泥酔してる身では簡単にはとめられないでしょう。

 今ではさすがに終電で飲みに行く、なんて不毛なのか、消費活動に貢献しているのか、よくわかんないことはしなくなりました。それでも、かつて僕と田淵君が素面でじっくり観察できた『日本の酔っ払ったサラリーマンの常軌の逸した行動』は実は上記だけではないんですけど、この二件は今でも思い出すとにやにやしちゃうし、田淵君と会うと何度も反芻したはずなのにどちらからとはなく話し始めては大笑いを繰り返してしまう出来事です。
 『アントニオ猪木さん』と、みなさんいろいろあるんだろうけど時勢に全く左右されない『日本の酔っ払ったサラリーマン』は、侮るなかれ、です。

 ところで、僕らは決めつけちゃってましたけど、今思うと『ハの字に相討ちのように果てていたサラリーマン』のお二人が、実は赤の他人で、一人目の方が『うむむ、ここまで着ておきながら・・無念!』と果てて、しばらく後に、二人目がホームにたどりついて『俺もだめだあ!』って寄り添って時間差で倒れていたんだとしたら、これは驚愕すべきで、しかも、ご当人たちには申し訳ないですが、さらに笑いが増幅されちゃう光景ですよね。

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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