スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

5千円、って・・・・?

 「今から家族会議を開きます!
  フジも参加しなさい!」
 「なに、パパ、どうしたの?」
 「たいへん、重要なことであります。」
 つい先日、帰宅するなり、僕の招集により『臨時家族会議』を開きました。

 僕は、その時、明らかに違和感を感じました。仕事を終えて、一旦帰宅して外出し、財布の中味を確かめる機会があったときです。
 「・・・千円札がいちまいって・・?」
 その見た目も実態もうすい財布の中身は僕には唐突感があって、納得しかねるものでした。もちろん、僕は妻子ある普通の会社員なので(じゃーん、初めてはっきりと筆者の正体の一部を告白してしまったんであります。・・ま、わざわざもったいぶるような身分でもないです。)、ときにはその経済状態、特に格好良くいうとキャッシュフローにおいて、財布の中味が心もとない状態になることはあり得るわけです。
 でも、その時はあきらかに見た瞬間その千円札一枚のみ、というミゼラブルなキャッシュフローに僕の直観が得心しかねたんです。
 僕は、あれ?と思いながら、しかし、我ながら信頼できるとは言いかねる自分の記憶を頼りに、その日一日の僕のキャッシュフローの動きを頭の中で追跡してみました。
 まず、家を出るときの朝の財布の中のキャッシュは・・。残念、確かな記憶がないです。こういうところは実は僕の欠点で、良くいうと鷹揚、なんですけど、悪く言うと、自分の金銭管理に杜撰、なんです。

 ここだけの話ですよ、ここだけの。(といってもこのブログは全部『ここだけの話』以上の価値はないですけど。)僕は、入社して数年、かなりの年月が経つまで、自分の会社の給料日を正確に知りませんでした。これは、別に僕がお金持ちの子供で『今の給料なんて、僕の学生時代のお小遣いの半分だから、どうでもいいんだよねえ。いやあ照れるなあ、ははは。』なんていうことではなくて、今思うに、精神的に幼なすぎてお金の価値がよくわかっていなっかった、からなんですね。それに、-これは全然言い訳にはならないんですけど。―、給料日はちゃんと決まっているんですけど、そこに土日が絡むと前倒しになったりするわけです。それで実際に振り込まれるのは、毎月同じ日とは限りません。さらにさらに、-これも恥をしのんで告白します、-僕は結婚してさい君に教えてもらうまで、『クレジットカード』というものは一括払いでも手数料がかかるもの、と思い込んでいて、要は現金で買い物するよりも必ず高くつく、と思いこんでいて、殆んど使ったことがなかったんです。それでカードでの買掛金と振りこまれる給料を考慮して自分の経済状態を管理する、なんていう必要も僕には無かったんです。そんなこともあって、なんとなく、毎月だいたい25日近辺に給料がはいっているんだな、って漠然と捉えていて、そのうち、入社二、三年目のある時、キャッシュフローが困窮したわけでもなんでもないけど、純粋な疑問として『あれ?俺の会社の給料日って正確には何日なんだろう?』って、『ふと思った』んですけど、入社して二、三年もたっているのに、そんなことも知らないのはさすがに恥ずかしいな、まあいいや、というわけで周りには聞くことができずに、そのまま数年たっちゃったんです。
 
 『ふむ、キャッシュのスタート金額は・・・わからん。でも、千円札一枚っていう寂しさ、は無かったような・・・』、ということで、恥ずかしながらキャッシュフローを計算しようというのに、『今朝どれくらい財布が寂しかったか』というまことに心許ない『感覚』が根拠になって収支計算をスタートせざるを得ませんでした。
 次に、その日のキャッシュインについて顧みてみました。今日は、給料日でもないし、間違いなくATMで降ろした記憶もないです。そうか、ふむ、スタートの状態は『そんなに寂しくなかった』としかわからんが、キャッシュインは無い、よな。

 そうなると、問題はキャッシュアウトです。

 出勤の電車代は定期でしょ。昼飯は、社員食堂で、プリペイドカードで払ったから、インもアウトも関係ないな、うん。会社が終わったあとについては、まだ記憶が新しいし、今日は寄り道せずに帰ったから帰りの電車代は定期だし、勤務後の支出はないのは間違いない。ふーむ。
 ということは、今朝『そうでもなかった』のに、今見た千円札一枚に『新鮮に寂しさを感じる』この僕の直観が正しければは、やはり『昼食を除く勤務中の支出』を精査すべきでしょう。
 うーむ。むむむむむむ・・・。お、そうだ、そう言えば今日は社内にはいっているコンビニに二回言ったぞ。朝いちで『脂肪燃焼を助けるというお茶』と、それからあんまり眠いので11時くらいにブラックの缶コーヒーを買ったな。あまり脂肪は燃焼できているかどうかわかんないけど、それはともかくとして『脂肪燃焼を助けるというお茶』は確かに普通のお茶よりも高い。さい君には秘密ですけど、その効能を期待してほぼ毎日買っているのでそういう知識は確かなわけです。
 『いや、でも、お茶もコーヒーも社食で使った
  のと同じ、プリペイドカードで購入したはず
  ・・・。あ、そうか!』
 僕には珍しく、思い出しました。そうです。たしか11時にコーヒーを買ったとき、支払前に、そのコンビニのレジでプリペイドカードに入金したじゃないですか!・・・・入金したのは確か、五千円。それで入直後金にコーヒーをそのカードで購入したはず・・・。ということは、朝はすくなくとも六千円は財布の中にはいっていた、ということか・・・。でもなんかおかしいなあ・・。
 僕は、一日の自分のキャッシュのイン・アウトを全部洗いだした後にも、この千円札一枚、という『寂しい~~~感じ』には違和感がありました。なぜなら、その寂しさは妙に新鮮だったからです。いくらお金の管理に杜撰と言っても、もし、五千円を入金してそのとき、財布の中が千円札一枚になったのであれば僕は、そのキャッシュフローの頼りなさと共にコンビニを後にしたと思うんです。でも、そういう記憶はなく、今『新鮮に寂しい』わけです。
 『ふーーむ・・・・・・・。・・!!
  あ、ひょっとして!?』
 僕には珍しいことに、あることが閃きました。
 僕の記憶によると、僕は、5千円をカードの入金したとき、1万円を出して、それで5千円のボタンを押して、そのあと、そのカードでコーヒーを購入して、コーヒーとレシートだけを持って職場に戻ったんです。つまり、僕のこの推理があっているとしたら、僕は5千円の『お釣り』をもらい忘れてコンビニを後にしたことになります。そして、この5千円という差額は、僕の『1千円札しかない財布に感じる寂しさ』とほぼ釣り合っていました。
 
 『う~~~む・・・。』
 しかし。しかし、僕は考え込んでしまいました。まず、僕にはこの推理が100%合っている、という自信がなかったからです。実は、僕はすごく前、新入社員の頃、なんですけど、逆の立場になって苦い思いをしたことがあるんです。おそらく、そのことに関係した人達はみんなそのことは覚えておられないような些細なことですけど、僕にとってはなぜか忘れ難い出来事としていまでも鮮明に記憶に留まっています。

 その頃、僕は、ある商品を扱う営業に配属になって、しかし、そこは新人ですから個人的な予算もなく、先輩達の手伝いを、―しかし、とても忙しい日々でした。― していました。ある時、お客さんには売れないいわゆる『少々難あり』商品を社内販売で売ることになり、僕と二人の入社2年目の先輩女性社員が、本社の(そのころ僕は
本社勤務ではなかったので。)購買コ―ナ―の一角を1日借りて社員に現金限りの決済で販売していました。なにしろ、新人と入社2年目の三人ですし、もともと対面販売など本業じゃないし、売る相手は顔見知りとはいわねど、全員社内の人間なわけですから遊び気分半分で気軽に応対していました。と、ある若い女性客に商品とお釣りを渡すと、ものすごい怒気をはらんだ声でこう言われたんです。
 「ちょっと!今、1万円渡したんだけどっ!」
 僕は、5千円を受け取って、それで商品とお釣りを渡したつもりだったんですね。え?と思って、先輩女性社員の顔を見ると、その二人も、
 「いえ、いただいたのは5千円です。」
 と直接、僕を援護してくれました。断っておきますが、そもそも僕は新人で予算ももっていないし、商品も少々難有り、を廉価でさばいているので、利益なんかもともと期待していなし、僕ら三人には沢山売れたところで個人的にもいいことは何にもないわけです。だから、釣りを胡麻化そうという動機なんかないんですね。しかし、その女性の態度はすごく高圧的で、どうも、僕らを、女性二人が制服を着用していないことも手伝ってか、『出入りの難あり商品販売を本業としている業者』(もちろん、そうならいいのか、って思いますけど。)とみなして、すごく剣のある態度と言い方で、全く譲りません。
 「いえ、でも僕らは三人とも5千円いただ
  いたことを確認しているので・・・」
 「1万円よ!お釣りたりないんだけど!」
 しょうがないです。別にそこで喧嘩するほどのことではないですから。少しの押し問答のあと、僕は黙って、彼女の主張する残りのお釣りを追加して差出しました。すると彼女は商品とお釣りを鷲掴みすると『失礼しちゃうわね!』(もちろん今時実際に、こんな話言葉を使う人はいないです。そういう感じでっていう比喩です。)と言わんばかりの剣幕で、鼻息荒く立ち去っていきました。あとに残ったのは5千円の損、となんともいえない苦い気分でした。
 そのことがあって、僕は初めてスーパーやコンビニのレジ、駅の窓口の人達がいちいち『1万円お預かりします。』と言って、しかも、ときにはそのままレジにすぐに入れずに、磁石でレジの上にパチン、と紙幣を止めておく意味を実感しました。

 そもそも、自分の金銭感覚に自信がない上に、そういうほろ苦い思いがあったたために、今度は自分が『払ったのは1万円であるぞ』とあの時の鼻息荒く立ち去った女性社員の立場になるんだな、しかも、言いに行けるとしたら明日になっちゃうわけですから時間も経ってしまっているな、と思うと言いに行くのはあまり気が乗りません。
 これが独身の頃だったら、僕はまず100%放っておいたでしょう。
 その理由は『独身にとっての5千円と妻帯者にとっての5千円とはお小遣いとして価値が違うから』、ということとは微妙に意図を異にしていまして、僕の場合、金額の多寡云々というより恥ずかしながら『独身の頃はお金の価値が全く分かっていなかったけど、結婚して、子供もできて、いろいろあって、ようやくお金の価値を正しく理解し始めたから』というべきだったからです。簡単にいうと独身の頃は、お金というものに対して、例えば仮に100円として、その手元にある100円で『今何が買えるか』という『交換性』のみにしか認識が無かった、けれど、今は遅ればせながら手元にある100円が『100円であろうと、未来とは無縁ではない』という『生きていくうえでの時間軸』を伴っていることの価値に覚醒した、ってことですかね。だから、もし、本当に、僕が5千円のお釣りをもらい忘れているのなら、これはやはり取りに行くべきだな、と思うんです。でも、新入社員の頃の苦い思い出の掣肘もまた、拒みきれませんでした。なんつっても向うは、そういう大枚のやり取りのプロなわけですから・・。それに結果的に5千円を取り戻すことができても店側が納得しないで、店長さんなんか現れる事態になって、あの時の僕のように渋渋返金なんかされたら、ほぼ毎日行くコンビニだから、『あ、あのいちゃもんつけのおっさん』なんてことで顔なんか覚えられたら嫌だな・・・。

 というわけで、臨時家族会議を開催することになりました。
 「今から家族会議を開きます!
  フジも参加しなさい!」
 「なに、パパ、どうしたの?」
 「たいへん、重要なことであります。」
 
 僕は、食卓に座るさい君と、僕の呼びかけにも拘わらず、テレビの前を離れない息子にも経緯を説明し、意見を求めました。
 他人様はわかりませんが、僕にとって『結婚して、子供が生まれてきてくれたことで変わったこと』のひとつは、是非の程はともかくとして、息子を含めて、僕とは違う二人の人格がいつもそばにいる、っていうことですね。その違いはもちろん、人格の間に軋轢を生むこともあれば、ときには『ほう、そういう考えもあるのか』と僕に違う物差しでの指針の例示もしてくれます。
 僕は、さい君の母国語で上記のいきさつを説明しました。
 「・・というわけだ。どうするべきだと思う?」
 「レシートはどうしたの?」
 さい君、さすがに鋭いです。
 「・・いや、あの、すぐ捨てた・・。」
 果たして、さい君、身ぶり手ぶりを交えながらまったくぶれない主張をしました。
 「明日の朝、即、行くべし!戻って財布を見たら千円
  しかなかった、そんなのあり得ない、五千円返して
  ください、っていいなさい。」
 「でもさ、俺間違ってるのかもしれないよ。」
 「行きなさい!話を聞く限りでは、ケイタが
  間違っている可能性のほうが少ない!」
 「・・・・。」
 すると、それまでテレビの前から離れず、だまって聞いていた息子が反対意見を具申しました。確か、そのときは日本語で答えてくれた、と思います。
 「だめだよ。パパ。」
 え?
 「そんなことしたら、ごうとうはんざい、だと
  おもわれちゃうよ!」
 おー、なるほど。ごうとうはんざい、か・・・。そういう意見もあるわけだ。
 「・・そうか?」
 「そうだよ。パパ。そういうときはね、ください、
  じゃなくて、ちゃんと、せつめい、をしなきゃだめ
  なんだよ。ください、っていうのは、ごうとうはん
  ざい、のときにいうんだよ。」
 「・・ほう。」

 運悪く、翌日は体調を崩して欠勤した僕は、時間はさらに経ってしまったものの、翌々日の朝一番に、さい君の意見に背中をおされつつ、息子の主張も斟酌して、ものすごく卑屈なまでに丁寧に、なにしろ、ごうとう、と思われては五千円どころか人生の終わりですから、微笑みなど浮かべつつ、
 「あのーお忙しいところ(朝いちのコンビニは
  本当に忙しそうです。)申し訳ありません。
  ええと、僕も自信があるわけではないんです
  けど、おとといの11時ごろに、・・・・・・
  としたら、お分かりになるもんでしょうか?」
 と家族の思いを背負って決死の交渉に打ってでました。
 すると、僕の『せつめい』を聞いていたレジの女性は、途中から硬い表情でメモななんぞ取り始めました。とりあえずごうとうはんざい、とは思われていないようですが、『うわあ、こりゃ、やっぱり店長なんか出てきて・・納得はいかないけど・・なんて苦い結末になるんでは・・』と僕が危惧したその時です。
 突然、隣のレジにいた女性がてきぱきとした動作で僕の前に現れ、対応をし始めました。そして、
 「はい、一昨日、5千円ちょうどですね。 
  確かに。5千円、レジがあっていませんでした。」
 というや否や、さっと、5千円を渡してくれました。

 おー、すごい!僕は日本企業の良心に触れた思いがして、あきらかに5千円のお釣りの受け取り間違いには釣り合わない深々としたお礼をし、何度も『ありがとうございました。』と言って、その場を去りました。

 臨時家族会議をした甲斐がありました。
 ええと、『臨時というからには定例家族会議があるのか?』って思われるでしょうが、そいうのは別にないです。

===終わり===
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
フリーエリア
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村
フリーエリア
フリーエリア

人気ブログランキングへ
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。