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おじゃまんが山田くん。

 息子が5歳か6歳のときのことです。息子はなかなかひとりで寝てくれません。そして、さい君が、パソコンの動画で母国のテレビがリアルタイムで受信できるすべを知って以来、息子を寝かしつけるのはいつの間にか家長の仕事である、という困ったコンセンサスが家庭内にできあがってしまいました。おおよそ、さい君のお気に入りのテレビの時間帯が、21時~22時で、さい君が、パソコンにへばりつきながら、
 「明日も学校なんだから、寝なさい!!」
と息子にさい君の母国語で『宣言』します。でも、この宣言は運動会の開会式の校長先生のそれみたく、まさに『宣言のための宣言』であって、校長先生と同じく、宣言した本人は以後何もしません。(話はそれますけど、ああいう類の『宣言』は高校野球の開会式だの卒業式だの、よくありますけど、どういう趣旨・機能なんですかね。結婚式の乾杯の挨拶ほどの意味すらないと思います。プロ野球なんて、だれも宣言しなくても、ちゃんと開幕してますし。) 宣言後、それでも、すぐには寝ませんが、おもむろに、息子は、
 「しょうがないなあ、はあい、寝ま~す。
  お休みなさ~~い。」
と言いながら、僕の顔を見ます。見られた僕は(しょうがない、は俺の言い分である。)と思いながらも、一緒に布団にはいります。たいていそのまんま僕も寝ちゃうんですけど、問題は息子を寝かしつけるまでです。
 息子は暴君です。暴君は、生来落ち着きがないので、目が冴えているときは、なかなか寝てくれません。それで、いろいろ儀式が必要で、スキンシップとしての定番は、背中を掻く(なんだか知らないけど、そういうときは必ず亀みたいに手足をひっこめる態勢をとって、背中全体を掻いてやると、えもいわれぬ気持ちよさそうな顔をしながら、寝入ります。)なんですけど、ことさら眼が冴えているときは、その『亀ポーズ』に至るまでがたいへんだったりします。ただ部屋を暗くして、添い寝しているだけ、ではなかなか寝てくれません。といって、暴君にしゃべらせるとかえって頭が冴えてしまうので、僕が、それこそ『眠くなるような退屈な話』をすることになるんですが、なぜか、暴君は『普通の昔話』の類がお好みでないようで「なにか作った面白い話をしてくれ。」と難しい要求をしたりします。それで苦労して『赤羽三郎さんの話』と題する架空の昔話(内容は忘れました)など、あやしげな話をしたこともありますが、さすがに毎日作り話をするのも面倒だなあ、と思っていたある晩のことです。
 その日も暴君ぶりは健在で布団の中ですらじっとしてません。僕は、(今日は亀になるまで時間がかかりそうだなあ。)と諦めて、むしろ逆に無理やり寝かせようとせず、なかば投げやりになって、ふと、
 「フジ、しりとりしようか?」
と言うと、あにはからんや敵はのってきました。しりとりなんかすると、かえって、頭が冴えるんじゃないかとも思いました。が、ある策を施すと、これが意外なことに、たいてい暴君からギブアップがはいって「もう、寝ようよ。」となることがわかりました。その策とは、
①極力淡々とした流れをつくる。
②父は勝ちにいかない、と言って安易に負けない。
③父は暴君の知識範囲の語彙でのぞみ、反則はしない。
④父はわざとゆっくり考える。 
⑤暴君の反則、負けは指摘しないで流す。
です。有体に言って、そんなに簡単ではないです。僕が外ではいかに惨憺たる『資本主義経済的に価値の低い労働力』とはいっても、そこは大人、対暴君では日本人歴が圧倒的に違いますから、『しりとりに勝つ』のは簡単です。しかし、目標はそこにはありませんから、暴君の知っている範囲の日本語で勝負し、かつ父は反則もせず、勝ちもしなければ、かといって負けない―敵味方に拘わらず、反則や、勝ち負けを息子が認識すると興奮するので―という高度な―え~と、逆ですか?―レベルで戦わなければならないからです。しかし、これがうまくいくと、まさに退屈きわまりなくなるようで何回か成功をおさめました。もちろん、内容は、混沌としていて、とくに暴君は、同じ言葉の連発、母親の母国語を無理やり日本語にあてはめる、語彙に詰まると付け足しで凌ぐ―
 「ぴ、ぴ、ピカチュウ・・・・ピカチュウ。」
また「ぴ」、
 「ぴ、ぴ、ぴピカチュウのひゃくまんぼると。」
また「ぴ」、
 「ぴ、ぴ、ぴ、・・ピカチュウのひゃくまんぼると
  はまけない。」
―という具合で反則連発です。でもこのように、『クライマックスを決して形成しない淡々とした試合展開』で何度か大戦果を収めました。
 そんなある晩、そのときも暴君は目が冴えていたので、しりとりに誘うとのってきました。その晩はめずらしく、少し距離をとって、お互いにあおむけに寝て、淡々と戦っていました。そして、例のごとく、ルール不在の平坦な展開に、次第に暴君の言葉があくびと渾然一体になってきました。(しめしめ、これはもうそろそろ寝るな。)と思っていたとき、僕が「き」で終わりました。すると、暴君は、七割がたあくびをしながら、
 「き、き、き、き・・・・・ふわあ」
とつぶやいています。(ははああ、こいつもう在庫切れだな。またいつもの「付け足しだな」・・・・。いひひ)と僕は心中ミッション成功を確信しました。
 「き、き・・。・キンゾクバット デ、
  リョウシンヲ、ボクサク。」
「!」僕は、気づいたら上半身を起こしてました。
 「フジ!いま何ていった?」
 「ふわあ、パパ早く。『ボクサク』だからパパは
  『く』からね。」
と父の質問の意味を履き違えた息子は、僕の言うべき言葉のかしら文字を確認してくれました。
 「おい、フジ、そんな言葉どこで覚えた!意味わかってんのか?」
と動揺する父に息子は身じろぎもせず、天井をむいたまま、
 「いみはしらないよ。こんぴゅーたの『おじゃまんがや
  まだくん』で見ふあああ。パパ、『く』だよ。もうし
  ないなら、フジねちゃうよ。」
と言うと、暗闇で愕然とする父をあとに、すやすやと寝入ってしまいました。

 僕が、以前パソコンの動画で好きな歌をさがしているとき、(おお、そうだ、あの歌はナンセンスでいいよなあ)と探しあてた『おじゃまんが山田くん』のオープニングテーマを機嫌よく聞いていたら―あの歌いいですよねえ。馬鹿馬鹿しさがなんともいえないです。-、息子が近づいてきて、
 「パパ、なにこれ。」
とパソコンを見ながら言うので、
 「ん?これは、パパの好きな漫画の歌である。
  いい歌であろう。」
というと、
 「うん、いいねえ。」
と言って見入っていました。そのうち、僕が席をはずしたとき、どうも関連画面をクリックすることを覚えた息子は、『おじゃまんが山田くん』の本編を動画で見始めました。(まあ、子供に害悪があるような漫画でもないし、いいか。それより、そもそもあの、おじゃまんが山田くんの真髄が、こいつにはわからんと思うけどなあ。)と、しばらく放っておいたら、
 「へへ、うははは、ううへええ!」
と涎を流しながら喜んでます。僕は、不可解に思う一方、(おう、さすが我が息子だ。5歳にして『おじゃまんが山田くん』を理解するなんぞ、センス抜群だ。うむ。)と、変な満足をしていました。どうも、何回もよだれを流しながらみていた本編のひとつに上記の言葉がでてきた、と推測されます。
 
 でも、『おじゃまんが山田くん』のなかで、『金属バットで両親を撲殺』なんていう言葉、どういうTPOで現れたんでしょう。しかも、それを見てるときも涎を拭うほど面白かったんでしょうか?

 どうもいまだに解せません。
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はい。

はい、跳ね起きました。お褒めいただいて素直にうれしいです!!ありがとうございます。かの地の文豪とはくらべものにはなりませんけど。読みやすさ、とリズムは大事にしてるつもりです。

No title

これはびびるな。
それにしてもアナタ文章うまい。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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