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パレットナイフ 外伝。

 あな うれしや、おもいがけなしや。

 先日『パレットナイフ。』を本人に無断で脱稿したところ、藤代君本人から早速一報がありました。そして、事後快諾をいただき変わらぬ友情を嬉しく思いました。
 しかし、同時に本人より事実誤認を本旨とする指摘があり、その指摘(あえて『事実』とは僕は言いません。『指摘』とします。)に高校三年間同じクラス、同じクラブで過ごした僕にすら信じられないものがいくつかあり、これをそのまま現代という未曽有の情報の大海の藻屑としてしまうには藤代のために、僕一人で独占してしまうのもまた、忍びない、という思いに強く突き動かされ、予定外に『外伝』としてここに記すものです。

 指摘その①-毀損対象物-

  『キャベツで間違いないです。』
    うむ、そうこなくては。レタスではしっくりきません。


 指摘その②-授業態度-

  『毎週しっかりと書いていました。』
    これは俄かには信じがたいです。僕としてはし
   っくりきません。まあ、大勢には影響がないので、
   次、いきます。


 指摘その③-塗った色-

    そう『塗った色』です。あれ?赤じゃなかったっけ?
   違う色だとかなり僕の思い出が壊されちゃうんです
   けど・・・・。

   『黄色と赤に2つ塗ったかと思います。』

    ええ!赤一色じゃなかったんです!度肝をぬかれ
   ました!驚きを通り越して、僕の追想の中での『最
   強の憎めるいたずら者』の躍動感に拍車がかかり、嬉
   しさのあまり快哉を叫んでしまいました!
    しっくりきます!繰返します、赤一色ではなかった
   んであります!


 指摘その④-犯行回数-

    色塗って、『やろう!』って翌週に切り裂いて、っ
   ていう2回じゃないってこと?ひょっとして『切り刻
   んだ』のはよくある『話に尾ひれがついて』ってやつ
   で、犯行内容は、色を塗った、という1回だけだったの
   か・・・・?

   『黄色と赤に2つ塗ったかと思います。それだけでは
    ・・(中略)・・幾つか切ったような感じです。』
   
    っっとと!さすがです!色を塗って、翌週に切り刻ん
   だ、なんて女々しいことはせず、色も塗ってその直後に
   キャベツを切り刻んだんです。爽快感さえあります。
    うん、なかなかよろしい!


 指摘その⑤-犯行動機-

    そうですね。一度に色も塗って切り刻むこともやった、
   となると、僕の記憶していた『やろ、チクリやがったな』
   っていう話のほうが『尾ひれのついた話』だった、って
   ことになります。
  
    藤代曰く『・・やりそうですが、』
   ほう、本人もわかってるね。
   『・・そうですが、報復の為ではないんです。』
    え、仕返しじゃないの?本当かよ、じゃあなんで
    ・・・。

   『最終日に色を完成した後の時間が余り・・』

    ほうほう、ふむふむ、ここまでは僕の記憶通りな
   わけです。なぜって、前回も記述したように僕がつ
   けた本件への、いわばキャッチコピー、は『小人閑
   居して不善を為す』ですから。
    しかし、そのあとの彼の記述は、事件から今までの
   長い時をものともせず、僕を唖然とさせました。
   すなわち『切り刻んだ』どころか『色を塗った動機』
   ですら僕の記憶とは全然違ったんです!

   『・・時間が余り、緑ばかりのキャベツ畑を見ていて
    何かアクセントが欲しいと思い、黄色と赤に2つ塗
    ったかと思います。』

    わかりますか?僕はこれを読んだとき、一瞬理解
   できませんでした。だって、アクセントが欲しい、の
   は『藤代のキャンバスに描かれた風景画』だと思うん
   です。でも藤代は、僕のような凡庸な人間が何回生まれ
   てきても到底思いつかない発想で『もとになる風景その
   ものへまずアクセントをつけた』んです。

    これは、考えようによれば藤代は、弱冠16歳にして超
   写実主義派の画家と自らをもって任じ、その画風の瑕疵
   なき実践・完成に忠実になろうとするあまり、現実風景
   に無いものを描くことは許せなかった、ともとれます。
    しかし、一方で自分の絵の完成度を追求するがゆえに
   色彩としてどうしてもアクセントが欲しい、というインス
   ピレーションをも諦められない。
    画風への忠誠と、インスピレーション実現による絵の
   完成、という深い相克に悩んだ若き画伯は、この両方を
   『風景そのものにアクセントの色を入れてしまう』とい
   う離れ業でもって満たすことでついに克服したんであり
   ます。

    これは凄いです。
   『う~ん、どうもアクセントが無いなあ、こう、キャベツ
   畑のこの隅あたりに異彩がほしい、う~~ん。』
   と悩んだすえに、やおら構図に忠実に『隅っこのキャベツ
   二つ』を緑との相性も考慮した赤と黄色に、専心塗りすす
   めていく若き超写実主義派・藤代画伯の才能がゆえの奇行
   が目に浮かぶようです。

    ところで、ではその直後『切り刻んだ』犯行動機はいか
   なる崇高なものからきているんでしょう?

   『・・・塗ったかと思います。それだけではあきたらず
    ワンホールのケーキを切るように八等分にキャベツを
    切ったのが面白くて幾つかサクサクと切ったような感
    じです。』

   ・・幼稚極まりないです。『動機』として論ずるにも値
   しません。動機なんかないにひとしいです。動機云々よ
   りモラルの問題です。ある意味『当時の藤代君』そのも
   の、でしっくりとはきますけど。


指摘その⑥-後日談-

    これには色んな意味で驚愕しました。
  
   『最後は農家のご主人に丁重にお詫びをし、』
   ええ!そんなことがあったんだ!?
   『・・畑を荒らす奴を見たら教えてくれとの約束を農夫  
    と交わし』
     !!!改心した熱い高校生になってる!
   (尚、被害者を『農夫』と記述しているのは藤代君です。
    僕はなんとなく、そういう書き方は抵抗があるんですけ
    ど、外伝という趣旨に、もとることのないように、画伯
    の言葉を忠実に引用しました。)
   『・・取れたてのキャベツを頂いて終了となりました。』
     なん、なん、なんなんだ、そら~~~!

     これはすごい結末です。画伯の自白、によるといつも
    同じ友人2人と写生していんだそうです。僕が、察する
    に学校にクレームがあったとき、この2人の『目撃者』
    の存在ゆえに画伯は鹿野先生に出頭せざるをえなかった、
    とみえます。
     しかも、出頭のときは『美術準備室でコーヒーを飲み
    ながら』だったそうです。鹿野先生は大らかで、気さく
    な先生だったので、僕みたいに美術選択でもない担任の
    生徒や、もっとひどいのは美術も選択していなければ
    担任もしてもらったことのない山案山子君などの(いく
    ら気さくな先生だからって、なんだって山案山子が臆面
    もなくそこでコーヒーを飲んでいたのか、については今
    もって不思議ですけど。)いわば部外者も、用もない
    のにコーヒーをたかりによく美術準備室でたむろしてい
    ました。藤代君出頭、のときもそういう『いつものだべ
    り調子』だったんだそうです。
     大らかな学校ですね。
   
     しかし、同時に僕は感心しました。なぜって、藤代
    はひとりで『農夫』の家に謝罪にいったんだそうです。
    我が校の放任ぶりはここでも発揮されていて、先生が
    一緒に謝罪に行ってくれる、なんてことはなかったそ
    うです。
     これは、なかなか勇気が要ります。あの頃、僕と、
    画伯とは、昼間は教室で、放課後や土日はラグビー部
    員として、ひょっとして親とよりも長い時間を一緒に
    過ごしたんじゃないかと思いますけど、農夫に(しつ
    こいですけど『農夫』は画伯の文からの引用です。)
    謝罪しなければいけないから、って彼がおののいてい
    たり、相談されたり、一緒についてきてくれ、と言わ
    れたりした記憶は僕には全然ないんです。僕だったら
    -そもそも画風完成のためにキャベツに色塗ったり、
    その後単なるついでに面白いからって切り刻んだりし
    ないですけど-もしそんなことになったら、小心なの
    で周りを巻き込んで大騒ぎすると思うんですよね。

     余談ながら、現場にはいなかったとはいえ、それだ
    け近くにいた人間でも記憶による伝承って案外いい加
    減なものだな、と痛みいりました。そして、僕が書い
    た僕と同じ空間、時間を共有していた藤代の『パレット
    ナイフ』本編、でさえこれだけ事実誤認があるのなら、
    ましてや時間や空間を共有したとは限らない人の、そ
    れもほぼ伝聞による書物を検証してきた歴史学なんて、
    存外信用ならぬではないか、『明智光秀=天海僧正説』
    みたいな奇説も軽々には扱えんぞ、と妙に飛躍して考
    えこんでしまいました。余談ですけど。

 以上が、僕自身もこんなことを書くことになったとは、と新鮮に驚いている『パレットナイフ 外伝』です。

 最後に、僕が「絶対嘘だ!そんなわけない!」と思ったので本文に書かなかった-しかし、早熟の超写実主義画家の奇行、と理解すれば一貫性を感じなくはない-、画伯の、『なぜやったのかという理由をきかれ』農夫に(重要な注:『先生に』ではなく、画伯言うところの『農夫に』です。)、釈明したと主張している言葉を引用して結びとします。
 即ち、

 『アクセントが欲しかった』  ・・・・・・。

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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