スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

無礼者 貫太郎。

 前回のブログで、愚息のことを嘆いたときに、僕の体を史上最初にソファーにした男、佐藤貫太郎君のことを引き合いに出しましたが、そのことがきっかけで、佐藤貫太郎のことがこの数日いろいろと思い出されて、あるまじきことか『佐藤貫太郎のことを考える』ことで貴重な時間を浪費してしまいました。それでその浪費を少しでも挽回するために貫太郎のことを書くことにします。前回も今回も貫太郎には了解をもらっていません。あんな無礼者に了解をもらう必要はないし、そもそも貫太郎は、このブログの『更新しました』メーリングリストに入れてますけど、たぶんあの野郎は全然読んでないのでかまわずに書いちゃうんであります。

 それはやはり、OBとして参加した母校のラグビー部の夏合宿のことでした。僕らは特に大学生のころは毎年のように夏合宿に参加していたので、貫太郎が僕のおなかをごく自然に枕にした年のことであったかどうかはさだかではありません。僕と貫太郎は以前にも話したようにひと学年違いで、両者ともに指導者のいない弱小高校の主将を任された、という共感もあってか、特にOBになってからは学生を経て、社会人になった今に至るまで懇意にしています。
 
 ちょっと話が脇にそれちゃいますけど、僕がいたラグビー部は大部分が現役のときはみんな大学合格どころか息もたえだえに卒業し、しかし浪人してから英語科教員室や数学科教員室がどよめくような大逆転をおこす、という先輩が大勢いました。しかも、実は僕はひとりひそかにプレッシャーを感じていたんですけど、僕の把握している範囲、僕の上四学年くらいは、歴代の主将は現役中の成績はともかく、みなさん一浪後に有名大学に合格していろんな教員室をどよめかしていました。
 ええと、そういうお前はどうだったんだよ、といわれるとそこはまあ書いてもあまり面白くない、いや腹が立ってくるので(英語科のおおつ先生という虎キチの先生が、僕が進学することを決めた大学を報告したら、なんてことはない、全く『信じてくれなかった』んです。驚くならまだしも、いや、あの、おおつ先生ですね、いくらなんでも嘘の報告してもしょうがないでしょ、僕はそこに合格したので進学するんですよ、って何回も言ったのに、信じてくれないんです。どよめくよりひどいです。)ここでは触れませんが、貫太郎は、あろうまいことか『英語に仮定法という文法があるのを浪人中に初めて知って驚きました』っていうくらいあやしげな学力の男でしたが、-英語の仮定法って中学校で習いますよね。しかも、苦手だった、などというならまだしも『仮定法の存在を始めて知った』ってすごいです。- 見事に継承されてきた『僕の母校のラグビー部主将の浪人中の乾坤一擲の法則』にのっとり、東京の某有名私大に通うことになりました。確かそのときは貫太郎はそこの大学のラグビー部に入っていたと思います。僕はというと体育会という概念に触れる根性すらなく、東京の某大学の同好会でプレーをしておりました。

 貫太郎は今でこそ、海外駐在も経験していちおう立派な社会人になって、と記しておきますが、僕のおなかを枕にしたことを引き合いに出すまでもなく、だいたいが失敬な男でした。
 確か、あれは、社会人になって、かなりたった頃、僕は晩生ということに加えて激務に巻き込まれてしまい、お嫁さん探しに割く時間もエネルギーも全くありゃしないよ、という日々を過ごしていました。そんなとき、なにかの拍子で貫太郎と電話で話す機会があり、俺と貫太郎の仲だからな、ってつい愚痴って同情を買おうとしました。

 「みどりさん、彼女いるんすか?」
 「え?いねえよ。体力的にも時間的にもそんな余裕なくてさ。」
 「そうすか。」
 「そうだよ。あんまりそっちの方面の噂すらないもんだから、
  『みどりは、ホOか、イOポちゃうか』なんて言うひとも
  いるくらいでさ。」

 と僕は自虐的にいい、貫太郎の励ましを期待しました。(断っておきますが、僕は、性的マイノリティ-の方を特に蔑視しているわけではないし、EDだって他人事とは思ってません。ええと、つまりそれだけ時間も体力もなかった、ということをカジュアルな会話の中で極端な例証として挙げただけであります。)
 すると、しばらく貫太郎が黙りました。あれ、なんか貫太郎もネガティブな気分にさせちゃったかな、悪かったかな、と僕が少し反省しはじめたとき、貫太郎は言いました。

 「どっちか、つうと『ホO』のほうがいいんじゃないすか。」

 貫太郎は、先輩である僕の『恋愛に割く時間も体力ない境遇』などどうでもよくて、『どっちと呼ばれる方がベターなのか』を沈思黙考していたわけです。失敬な。

 それで、その年もふたりとも東京から母校の合宿地にやってきて、何泊か、しました。夏合宿では、OB達は現役の指導をしつつOB同士の親睦を深めていきます。
 ある者は現役のときに散々絞られたOBにここぞとばかりに文句を言い、当のOBもにこにこしながらその文句を全身で受け止めて仲良くなっていき、また、あるものは(山案山子です)どういうことでそうなるのかわかりませんが、滞在中に宿泊費が底をついたからといって僕からお金を借り、友情を深め、あるものは(貫太郎です)先輩のおなかを枕にして昼寝をして上下関係を破壊し、するわけです。

 確か、初日の夕刻だったと思います。午後の練習を終えて夕飯までの間に貫太郎が、
 「みどりせんぱい、いまのうちに風呂、行かないっすかあ?」
 と誘ってくれました。先輩を風呂に誘うなんて上下関係の厳しかった現役のときにはとてもできないことです。誘われるほうも悪い気はしません。普段から目をかけてやってるだけあって、俺になついてるな、なかなか可愛いやつだ。それに確かに現役部員が大量に入浴する夕飯後より、今風呂に行っとくほうが賢明だよな。
 「ん?おう、行くか。」
 と連れだって行きました。結構にぎわってます。服を脱いで、洗い場で髪やら体やらを入念に、-なにしろラグビーは体中どろどろになりますから- 洗っていたら、貫太郎の声がそばでします。
 「みどりせんぱい、ちょっとこれ借りていいっすかあ?」
 僕は、髪を洗っていたので前は見えませんでしたけど、
 「ん?おお、いいぞ。」
 何を遠慮することがある、俺の者はお前のものじゃないか、と気前よく返事をしました。貫太郎は僕の前にあった、ボディシャンプーだか、シャンプーだかを拝借したようです。ラグビーの合宿に来るんですから、当然そういうものは持参してます。

 次の日です。前日と同じような時間に、また貫太郎が、
 「みどりせんぱい、いまのうちに風呂いきませんかあ?」
 と言ってきました。僕は深く考えもせず、
 「ん?お、そうか、行こう、行こう。」
 と誘われるままにまたしても行きました。すると、湯気でくもった風呂場の中でまた貫太郎の声が・・。
 「みどりせんぱい、これ貸してください。」
 「ん?おお、使え、使え。」
 と僕も前日同様『大物ぶって』返答しました。体と頭を洗い、湯船につかって、脱衣場にあがると、先にあがったと思われる貫太郎が『一糸まとわぬ姿』でなんだかぼんやりと突っ立っています。そして、僕が湯あがりの体をタオルで拭いて下着を着け始めると、まだフルOンのままの貫太郎が、
 「みどりせんぱい、ちょっと、タオル借りていいっすか?」
 と言いました。僕は、さすがに、
 「いや、いいけど、これ俺が体拭いたあとだぞ。」
 と一瞬たじろぎましたが、貫太郎は、
 「いいっす。」
 というや、僕の使用済タオルでものすごくいい加減に自分の体の水分を拭きとってました。

 翌日、
 「みどりせんぱい、いまのうちに・・・」
 と同じく貫太郎の誘いが。さすがに僕は、なんかおかしいなあ、と思いながらも別に断る理由もないので、みたび一緒に風呂に行きました。
 「せんぱい、ちょっとシャンプーいいすっかあ?」
 「・・お、んん・・・」
 貫太郎は今日も僕よりも先に風呂からあがりかけます。
 「みどりせんぱい、おさきっす。」
 「ん?おお・・。」
 そして僕が脱衣所に行くと、またしてもフルOンで仁王立ちする貫太郎が・・・。
 「みどりさん、タオルいいっすかあ?」
 ここまできて、さすがにどうも様子が変だな、と思いながら連れだって風呂を出て貫太郎を上から下まで観察して僕は、頓悟しました。まさか、こんな奴がいるとは!
 「サトカン!こら、おまえ、なんにも持ってないじゃねえか!」
 そうです。貫太郎は『ラグビーの合宿』に来たにも拘わらず、シャンプーはおろか、タオルも含めて『およそ風呂に関係するものは一切合財』持ってきていなかったのです。見事な手ぶらです。どこで履きかえたのか、はたまた履いてないのか、パンツも持ってません!そんなわけで『誰かと一緒に』、いや、『誰かの風呂セットと一緒に』入浴する必要があったわけです。そして貫太郎は、同期や後輩のOBがいるにもかかわらず、ひとつうえの緑慧太を組みし易し、と見て『いまのうちに風呂行きませんか?』と毎日『おためごかしに』僕をさそっていたわけです。
 僕に全てを見破られた貫太郎は、しかし、悪びれる様子もなく、
 「ぶははは、すみません、ぶふふ。」
 と言葉だけは謝罪してますけど、態度は脱衣所でフルOンで仁王立ちしているときと、ほも、いや、ほぼ、一緒、です。

 無礼極まりない男です。
 ・・・しかし、三日目で野郎の魂胆を見破ったからよかったものの、あのままあの無礼者のペースにはめられていたら、そのうち、

 「みどりせんぱい、パンツ借りていいすっか?」
 「ん、いや、でも今日俺が履いたやつだぞ・・」
 「いいっす。」
 
 などという身の毛もよだつ陥穽にはめられてしまっていたかもしれません。くわばら、くわばら。
 ああ、よかった。書くことができて。この事件自体、あやうくこのまま記憶から消えるところでした。

 ちなみに、貫太郎と山案山子は同じ中学出身です。
 全然本旨とは関係ないですけど。

=== 終わり ===

 
 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

Re: No title

> 貫太郎君なかなかの人物です。
> 私は現役時代の合宿といえば手ごろな大きさのプラスチックのかごを買って、その中にシャンプー・リンス・ボディーシャンプー&あかすりを常備するという律儀なヒトでした。
> 今年も夏合宿の季節ですね。。。

そうですね。夏合宿、の季節、なんともいえないです。毎年そうですけど、高原の香りと共に、胸の奥で好もしいとも苦いともいえない思いがこみあげてきます。貫太郎はよく考えたら他にも無礼な言動があったことを思い出しました!

No title

貫太郎君なかなかの人物です。
私は現役時代の合宿といえば手ごろな大きさのプラスチックのかごを買って、その中にシャンプー・リンス・ボディーシャンプー&あかすりを常備するという律儀なヒトでした。
今年も夏合宿の季節ですね。。。

衷心よりお礼を申し上げます。

『朝の8時からソファーで涙を流して笑い転げました。』くださった方、土下座してお礼を申し上げます。緑慧太
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
フリーエリア
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村
フリーエリア
フリーエリア

人気ブログランキングへ
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。