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浮気!

 さい君は、一瞬ぽかんとしたあと、やおらケタケタと声をあげて笑い始めました。

 いかん、いかんです、真剣に。小学校三年生の愚息のことであります。最近どうもこいつ、それでも比較的同年代より幼いといわれていた僕自身が小学校三年の頃に比べても、大丈夫かこの男は、と思わせることが多いのです。このままで推移せんか、緑慧太ジュニアーは本当に『すこし頭の出来が悪い人』にぞならん、のみならず、大事な大事なこのブログも読者への配慮など斟酌することもなく(へえ、なによ、じゃあ今までは読者に対する配慮が斟酌されているブログだったのね?というご指摘は甘受いたしますけど。)、愚息の間抜けな話題で終始せん、と危惧されるのであります。

 つい先日、僕は何するでもなく『ううむ。おもしろきことのなきよをおもしろく・・・、ううむ。』と自分探しなどしつつリビングのフローリングに寝そべっていました。いつのまにか体を息子のひとり遊びのソファーやベッド代わりにされながら。

 ところで、僕の体を断りもなくソファ-や椅子がわりにする人は、息子で三人目です。二人目はさい君です。サイズのみならず腹周りの脂肪のつき具合が『ぽゆぽゆ』していて、なんともいえず気持ちいいんだそうです。自分ではわかりようがないですけど。
 最初のひとりは、あろうまいことか、誰あろう高校のラグビー部のひと学年下の佐藤貫太郎という無礼な男です。どこのラグビー部にもよくある話しなんですけ、以前にも一度書いたように在籍中は上下関係が厳しくて先輩と雑談するのさえ憚られ、ましてや現役とOBなんて不倶戴天の敵かの如く距離の遠い存在で、OBは現役を冷徹にしごき、現役は現役で嫌いなOBの顔を見た瞬間、おまえなんか消えて無くなれ!なんて思うような関係です。ところがこれまたどこのラグビー部にもよくあることなんですけど、卒業してOB同士になると異常に仲良くなるんです。例えば高校での在籍学年が重なっていないOB同士で遊びにいく、なんて日常茶飯事になるわけです。しかし、しかしです。高校のラグビー部のOB同士、という以前に人間としての節度、というものは守るべきだと思うんですよ。
 それは、夏合宿にOBとして指導のために参加していたある日の昼食後のことでした。僕がOB部屋の畳の上で、手枕であおむけに寝そべって『ううむ。おもしろきことのなきよをおもしろく、ううむ』とつぶやきつつ午後の練習にそなえて腹ごなしをしていたときのことです。そこへ、これまたOBとして参加していた貫太郎が部屋にはいってきました。すると、貫太郎は無言でまっすぐに僕の方にむかってくると寸分のためらいもなく、
 「ふー、よいしょっと、あつ。」
 と小さくつぶやき、溜息などつきながら僕の腹を枕にしてあおむけに寝そべりました。僕は、
 「・・・・・・・」
 となんで俺が手枕なのに、貫太郎は先輩の腹を枕にしているのだ、と動きを止めて唖然としながらも、その節度のなさを貫太郎が自分で気付くのことに期待しました。無礼ですよ。無断でひとの腹を枕にするなんて。いや、『ちょっと、すいません。よいしょっと。』と『断りを入れれば先輩の腹を枕替わりにしていいのか?』というと、これも全然だめです。しかし、貫太郎は気付く気配がないばかりか、世界一リラックスしています。僕は諦めました。しかし、直接貫太郎に言うのも芸がないな、と思ったので、枕にされたまますぐ横にいた僕の三つ上、学年でいうと僕が入学したときに入れ替わりに卒業していった代、ですね、の拓也先輩に唐突に話しかけました。
 「いやあ、拓也さん。」
 「ん?」
 「ぼく、実はね、現役の時、卒業したらみんなすごく仲好くな
  るって聞いてて、ほんとかよ、俺はこんなに絞られた奴らと
  なんか仲良くなんかならねえぞ、って、思ってたんすよ。」
 「おう、そうか、ありがちだよなあ。」
 「でもOBになったら本当にお互いが大事な存在になって
  仲良くなれるもんなんですねえ。」
 「だろう?」
 とラグビー部愛が強いことで有名な拓也さんはにこにこして嬉しそうです。無礼者貫太郎はこの会話には一切参加せずに無心にリラックス世界一を継続中です。
 「でも、ですね。」
 「うん。」
 「でも、まさか断りもなしに後輩の枕にされる、
  とは想像もしませんでしたよ。」
 拓也さんは、一瞬きょとんとしたあと、僕ら二人を見て、大笑いし始めました。それだけではなく、けしからぬのは、引きづられて爆笑するOBの一人が肝心の無礼者貫太郎だったことなんであります。無礼者は、呵々大笑しつつ、
 「あはは!、いやあ、緑先輩のおなかが、あんまり
  気持ちよさそうに見えたもんで、吸いこまれるよ
  うに、つい。あはは!」
 と正当な理由とは程遠い警句をはいて ―何が『つい』だよ!―、しかも僕のおなかを枕にすることはやめませんでした・・・。

 閑話休題、その時、僕にくっつきながらひとり遊びをしていた息子がにわかに、本当に唐突にです、あたりを確認してから日本語でこう囁いたんです。
 「パパ、ママね、アメリカじんとうわきしてるよ。」
 「!」
 僕は、衝撃的な、しかも妙に具体的なその発言に驚愕し、はじかれたように起き上がりました。『浮気??』しかも『アメリカじん』とっ、てなんだよ!ううむ、俺としたことが・・・。まさかとは思うが、俗に『知らぬは亭主ばかりなり』などと言うしな・・、と僕は暗澹たる気持ちになりました。

 その日の夜、こういうのは直球勝負だ、と覚悟をきめて、さい君に、
 「おい、ユウ、フジがママがアメリカ人と浮気してる、って
  いってたぞ。」
 僕の結婚以来の最高に力んだ直球をうけた、さい君は、一瞬ぽかんとしたあと、やおらケタケタと声をあげて笑い始めました。なにがおかしい、と僕はまだ肩をいからせています。
 「ああ、それね。違うよ。」
 
 なんでもその前日、さい君と自転車で外出していた息子は、西洋系と思しき赤ちゃんと道ですれ違ったんだそうです。西洋系の赤ちゃんのもつ独特の愛くるしさに惹きつけられたさい君が、
 「ほら、フジみて。かわいいね。ママあんな可愛い
  赤ちゃんがほしいから、もう一回結婚しようかな?
  白人と。」
 って言ったんだそうです。
 「それで?」
 僕は続きを急かせます。
 「そしたら、その時はフジは何にもいわなかったんだけど。」
 「けど?」
 「しばらくして信号待ちしてたら、フジがね、隣に来て、『ママ
  が二回結婚したらパパがかわいそうじゃない?フジは別にいい
  けどさ。』だって。」
 「!」
 別にいいって、なんだっ!
 「それでね、そう、じゃあママが二回結婚したらフジはどっちに
  ついていく?って聞いたの。そしたらね、」
 「うん、そしたら?」
 親の威信がかかってきました。
 「『うーん、どうかなあ、ママはあ、
  フジのことを可愛がってくれて、
  料理してくれるでしょ、それから
  お金を一杯もってるでしょ、だって
  毎日買い物してるからね・・・
  パパはあ・・』。」
 うーん、すでに山の神の存在をおぼろげながら認識しておるな、まあ、これはよしとしよう、俺も『パパはママと違ってお金がないので買い物はできないのだ。』と普段から息子に刷りこんで、買い物を俺にねだらないよう仕向けてるしな。
 それで、パパはどういう評価なのだ?
 「『パパはあ、フジのことを可愛がってくれるし、
   フジが寝るときに背中を掻いてくれるしなあ、』」
 「それから?」
 「それだけ。」
 「!!!」
 なんたること、小学校三年生にもなって家長の存在価値が『寝るときに背中を掻いてくれる』だけって、あんた!

 それ以来、彼を寝つけるときに息子から『パパ背中掻いて!』って言われるとたいへん複雑な心境になり思わず『おもしろきことのなきよをおもしろく・・』と独りごちながら『家長の役割』を全うしつつ、こいつ大丈夫かなあ、と心中穏やかならざるものがあるんであります。
 大丈夫ですかね・・。しつこいですけど、もう三年生なんです。
 さい君もさい君で、ケタケタ笑ってる場合ではないですぞ、って思うんですけど。

===終わり===

 
 
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プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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