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「みぢかえない話」①

 僕は、生来、小心者のくせに「あやしげな話」の類は大好きです。思うに、この手の類の話の妙は「あり得ねえ~!」と全員が思うのではなくて、送り手(それに関わる目撃者や書き手)が「心底信じ切って」情報を伝えようとする、ということに対しての話の受け手(=僕)の反作用がなんともいえない「現実をわすれさせてくれる感」を生むことにあるんじゃないか、と思います。だから、その話の送り手の真剣度や、思い入れ度が深ければ深いほど、心地いいです。
 なかんずく、僕の反発心を最高に引き出してくれるのは「普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話」略して「みぢかえない話」です。
 普段から「かっぱを見た」とか法螺を連発してる人も「法螺吹き」ってわかってるだけに期待をたがえない、という点では楽しいけど、反発心はなかなかおきませんよね。それから嘉門龍夫さんの唄じゃないですけど「おれのつれがイチローのマブだ」とかいう「見栄法螺」にいたっては、「違う方面の反発心」なんかが出てきちゃって楽しめません。
 それにくらべて、「みぢかえない話」は、

 ①意表をつかれる。
 ②真剣な情報の送り手が目の前にいる。

という面で、僕のもっとも愛するジャンルであります。

 高校時代のクラブからの友人で、山案山子くんという男がおり、僕の親友のひとりです。親友といっても特段に称賛に値する男かというとそうでもなく、似たような性格かというとそういうわけでもなく、気がついたら、すごく仲がいい、というだけです。おうおうにして親友やさい君は、そういうもんだったりします。
 山案山子くんは、お酒が大好きで、僕も嫌いなほうじゃないので、学生時代や独身のころは、毎週のように飲みにいってました。山案山子くんは飲むとよくしゃべるし、僕も飲むと饒舌になって、「すんげえくだらない冗談」-取引先の社長が僕には、普段ふんぞりかえっているのに新規開拓営業に部下の担当と一緒に行ったものの、社長がガチガチに緊張して、ほとんど担当が販促しゃべりをして、最後に担当が、ひとりで対応してくれた新規先の客に「と、いうわけで今後弊社をよろしくお願い申しあげます。」と礼しながら締めたら、反射的に横の社長も客に頭をさげながら「いえ、こちらこそよろしくお願いもうしあげます。」と間髪いれずに発言した、-というような類の罪もない最近入手した小話を持ち寄って爆笑する、あるいは、相手の話は全然きかずにお互い自分の言いたいことだけを一方的にしゃべって散会、という具合でした。

 山案山子くんは、いろんな貸し借りにはルーズな男で、おまけに「在原業平」を「ざいはらごうすけ」と高校の授業中に読みあげたほど国語力が未熟ですが(注、「ざいはらごうへい」ではなく、「ざいはらごうすけ」と読んだんです。「平」の立場がありません。)、法螺吹きでもないし、見栄はりでもないです。

 そんな彼が、まだ僕らが大学生のある日、水泳の話を始めました。
「こないだ遠泳の授業があってさあ。」
 僕は水泳なんてまるで興味がないので、例によって、ほとんど山案山子くんの話はきかずに生返事をしつつ、次にしゃべることをかんがえてました。僕らは大学は同じではなく、山案山子は(面倒なので以下呼び捨て)、ああ見えて、某国立大学旧一期校、OBには総理大臣も少数ながらいる、という伝統ある大学に通ってました。そしてそこは、大学なのに、「遠泳」が「必須科目」で、海岸から沖合の島まで、数キロ泳ぐ、というものがあるそうです。山案山子は国語力だけでなく根性もないですが、幸い彼は、小中学校のとき、水泳を「習わされていた」ので、その「必須科目」に関して別に苦にはならなかったようです。僕はというと、もちろんそういう授業のある大学に通っていたわけではないですが、クロールで25M泳ぐだけで大失恋直後のような顔でプールサイドにあがり、呼吸すること以外世の中に興味がない、という状態になるくらい水泳が苦手なので、もし、そういう授業の存在を知らずして山案山子の大学に入学してしまった僕のような学生がいたら、えんえい、どころか、えいきゅう、に卒業できないんじゃないかしらん、とだんだん感情移入しはじめました。

僕「へえ、体育系の大学でもないのになあ。で全員泳ぎきれるの?」
山「うん、なんだかんだいってみんな完泳するみたい。」
僕「信じられん。俺だったら絶対無理だ。だって、女子学生も
  いるんでしょ。」
山「うん、いる、すごく少ないけど。」
僕「かわいそうだなああ。なんか前時代的だ。女子も同じ距離なの?」
山「うん、そう・・・あ、そういえば、泳いでるとき俺の真後ろにも
  一人いたなあ。」
僕「ほう・・・ん?うしろなのになんでわかったの。」
山「ほら、遠泳中って、泳ぎながらおしっことかするじゃん?」
   (じゃん、って知らないよ、そんなの。)
山「それでさあ、俺がおしっこしてたらさあ、うしろから
  女の子の声で、『前のひとおしっこするのやめて。』って
  いわれて、それで、ああ、うしろに・・・」
僕「!!!!????」
  (突如「みぢかえない話」に転回!『おしっこやめて』??)
僕「山案山子、うそつけ! そんなこというわけねえだろ!」
山「え?本当だよ、本当!俺、おしっこしてたのばれちゃっ
  たんだ、しかもおしっこを浴びせてたのは女の子だった
  のか、って思ったもん!!」
僕「お、おまえ、遠泳中、おしっこ飲まされて、そんなに冷静に
  お願いする余裕なんかあるのかよ。うそだろ?」
山「ほんとだって。」
僕「それで!山案山子はどうしたの?!」
山「うん、何にも言わないでおしっこだけやめた。」
   (反発心60%!)
僕「!! やめたああ??」
   (途中で簡単にやめられるか!?)
山「うん、そしたら、その子が、
  『やめてくれてありがとう。』って言った。」
   (反発心 最高値!!!!!!!!!)
※僕「うそつけ~~~~~~~~~~~~~!!
   ははっは、なんで黙ってるのに、ぶわはははあ、
   やめたことがわかるんだよ、だははは作ってるな!」
 山「いや、ほんとだよ、ほんと!!
   『やめてくれてありがとう。』って!!」

※以下、5回繰り返し。
 

 山案山子は、真剣に主張してました。
 僕はこの話への反発心はいまだにおさめられていないので突如、
電車乗車中に頭にうかんだりするとニタニタしてしまいます。
 山案山子は、いまだにこの話題を振ると「本当である。」といって
ひきません。

 本当ですかね。『やめてくれてありがとう。』ですって。それに、あ、前に泳いでる人がおしっこした、あ、いまやめた、なんてわかるんでしょうか。くわえて、泳ぎながら「途中で放尿をやめる」っていう山案山子の芸当もかなりのもんです。あやしさ満点の話でした。

============終わり============

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そうなんです。

> 笑い声おさえるの大変でした。
このFBが、いまだに大真面目でいうんですよね。しかも、「これが縁で知り合いになった」って最近聞いて、また爆笑!20年もたって、うそを追加するなああ!!って言ったら、「ほんとだよ、ほんと」って真面目にいってました。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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