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ウケッケ。②

 これは声を大にして前置きしておきます。僕は、よそ様の『立場が言わせる不可避の無知』をあげつらって喜ぼう、という男ではないんです。それが証拠に『ウケッケ。』(2010年12月11日)-ええと、まだ読まれていない方は、ご面倒ですが、今回は『ウケッケ。』をご一読ののち、本件をお読みいただいたほうがいいです。いえ、絶対に先に『ウケッケ。』を読んでください。『もう読んだぞ。』といわれる御仁も『ウケッケ。』を再読されてから本件に臨まれんことを切望いたします。-においても、そういう『立場が言わせる無知』ではなくて、さい君とその日本語学校の愉快な仲間たちを、『暖かく描いた』つもりで、しかも『シリ―ズ化』の予定はなかったので『ウケッケ。①』なんて題名にはしなかったんです。
 でも、でもです。どうしても積年にわたっての僕の思いだし笑いが『これを書かないではもったいないだろう』と僕を抗えない立場に追い込むんであります。

 というわけで、そろりそろりと、『ウケッケ。②』です。

 実は、今に至るまで僕はソンさんとは面識がありません。しかし、さい君を通じてもたらされた情報-ハリウッド俳優を悉く『イイエ、シ―リ―マ-セ―ン!』で粉砕し、先に帰る時は『シツレンシマス。』であることの妥当性をイト―サンのフ-ドコ-トで熱弁した-によって、たいへんな好感を持って(本当です。)僕の心の中でその人格が具現化されちゃっているんであります。
 さい君とソンさんは、ごくたまにですが、日本語学校をとうに修業した今でも会っているようです。前にも書きましたけど、さい君は、彼女の母国語と、僕のTOEIC495点というミゼラブルなスコアで(485点だったかな?)証明されているそれよりは遥かにうまい英語(などというけしからぬ言語)と、北京語と、あやしげな日本語、をしゃべります。ソンさんは瀋陽から日本にお嫁さんにこられたんですけど、ハリウッド俳優の切り抜き写真を『イイエ!シ―リ―マーセ―ン!』と粉砕するくらいの大物ですから、当然英語のごとき尊大な言語はできません(衷心から好感がもてます。)。しかし、僕のさい君の北京語はいわゆるネイティブではなく、語学留学で学んだものなので、本人曰く『結構怪しい』んだそうです。それゆえに、日本語学校に通っているときから今に至るまで、ソンさんとさい君の会話は日本語でなされています。これがゆえに、僕が思いだし笑いをしてしまうような愉快なことを招くんですね。

 ある日、まださい君が日本語学校に通っているときのことです。さい君は、帰宅した僕にいつものようにその日のことを話してくれました。同じクラスのイタリア人が・・・、とかアメリカ人が・・・なんて話しているうちに、ソンさんの話題になりました。ちなみにさい君と僕とは、さい君の母国である南半球に首都のある某国の言葉でなされています。下記はカタカナの部分だけ、日本語で発音したものとみなしてお読みください。ややこしいです。
 「・・そうそう、ソンさんがね。こないだ
  だんなさんの実家に初めて帰ったんだって。」
 「へえ、そう。だんなさん、東京の人じゃなかったのか。」
 その頃、僕らは東京に住んでいました。
 「うん、それでね。『ト―イデスヨ-!』って言ってた。」
 「・・へえ、どこなの?」
 ソンさんは瀋陽から来られた方ですから、そのソンさんが『ト―イデスヨ-!』といわれるからにはよっぽど遠いんだろうな、って僕は想像の中の距離感における物差しを少し広げて話に対応しはじめました。
 一方、さい君は-これは、なぜだかわかんないんですけど、ソンさんの話になって、ソンさんのマネをするとき明らかにさい君の声のオクターブがあがるんです。―だんだん力説調になってきます。
 「それがね、わかんないんだって。」
 「へ?なにそれ?」
 「とにかく、『ト―イデスヨ-!ニドイキマセンヨ-!』
  っていうの。」
 「どこだかわかんないのに何で遠いってわかるの?」
 「でしょ?それで私もどこだか聞いたんだけど、ソンさんはね、
  『ト―イデスヨ-!ノリマス、デンシャ!デンシャ!デンシャ!
  ・・・』」
 さい君は、いまやソンさんが憑依したかの如く右の掌を腰の前あたりに掲げ、指を折り曲げながら-おそらくソンさんがそうやって力説したんでしょう。―『デンシャ、デンシャ、デンシャ』とうわごとのように言います。
 「いや、あのさ、だんなさんって日本の人だよね?」
 「うん。」
 「で、さ、そのどこだかわかんないのはともかくとしてだな、
  何時間くらいかかるところなのかとか・・」
 ソンさんが乗り移ったさい君は、僕の発言を遮り-たぶん、ソンさんがそうしたんでしょう-、熱弁をやめません。
 「『ジカン、ワカリマセン、デモ、ト―イデスヨ-、ノリマスヨ-、
  デンシャ-!デンシャ-!デンシャ-!デンシャ-・・』」
 僕は再び遮ります。
 「いや、あのさ、電車、電車って、電車にも新幹線とか、あと・・」
 「『ワカリマセン、デモ、ト―イデスヨ-、ニドイカナイデスヨ-、
  タイヘン、ノリマス、デンシャ、デンシャ、デンシャ・・」
 さい君は表情まで鬼気迫ってます。僕は笑いだしてしまいました。
 「ぐふふ、いや、あのさ、ははは、電車、電車ってさ・・」
 「とにかく、最後まで聞いてよ。」
 とさい君は、ふたたび記憶をたどりながら、ソンさんの発言に忠実に指を折り曲げていきます。僕も今度は覚悟を決めて、最後まで聞くことにしました。
 「『デンシャ-、デンシャ-、デンシャ-、デンシャ-、
  デンシャ-、クルマ!タクサンデスヨ-!』」
 とようやく大団円を迎えました。僕はさい君とソンさんには申しわけないけど、想像の中の二人の会話に引き込まれて、ひとしきり大笑いしてしまいました。
 「・・はあ、おかしい。でも、どこなんだろう。
  そんなに距離が遠いところなら飛行機とかで
  いけばいいのに。」
 「うん、飛行機は乗ってないんだって。なにしろ
  『デンシャ-、デンシャ-・・』」
 と突然またしても、ソンさんが降臨したさい君に僕は意表をつかれて笑いをこらえらません。
 「いや、わかった、わかった、もういいから!」

 その後、ソンさんもさい君もめでたく日本語学校での学習を終えました。僕も、いったいソンさんのご主人の実家って、どれほどの日本の辺境にあるんだろう、とは思いつつ、暫時このことは忘れていました。
 そんなある日、さい君が、ソンさんのおうちにお呼ばれして息子と一緒に遊びにいきました。
 「きょうね、ソンさんの家にいったよ。」
晩御飯を食べながらさい君が話してくれます。
 「おお-、ひさしぶりに聞く名前ではないですか。
  つつがなきや?」
 「うん、子供も大きくなって、ソンさんも日本語が凄く
  うまくなってた。」
 「ふうむ。」
 「子供にもね、私と違って全部日本語でしゃべって
  いてね、子供がやんちゃなことすると、『ウルサイ-!』
  っていったりしてね。」
 「ほほう。」
 「あ、それとね、」
 「うん。」
 次にさい君がさらりと放った言葉に僕は絶句してしまいました。
 「ソンさんのだんなさんの実家はね、コウベだって。」

 ええーーー!!神戸って、あんた!

 「!!間違いじゃないの?」
 「間違いない。」
 「わかった。こないだの、デンシャ、デンシャ・・の
  ところから、ご実家が神戸に越したんじゃ・・」
 「同じだって。」
 「・・・・・。」

 僕は、しかし、時間をかけて冷静さを取り戻してから、いや、これはあり得る、と思い直しました。

 僕は、いろいろ事情があって(面白くもなんともない事情なのでこの事情はやりすごします)、合計で、10年弱を京阪神内で過ごしたこともあり、『神戸近辺』には少しは土地勘があります。そして、実は西宮や伊丹や宝塚に住んでいる人達が-別に他意はなく『京都でなく、大阪でもなく、方面としては』という意味合いで-京阪神地方に馴染みのない人にいちいち説明するのが面倒だというときに、『神戸です』っていう場面にも少なからず遭遇したことがあります。

 それらを根拠に、僕は自らの全知全能を総動員してソンさんの
『(デンシャ―!×5)+クルマ!=ご主人の実家.』
について推理したんであります。ソンさんは、東京のJR中央線沿線にお住まいです。
 僕の推理はずばり、こうです。

 デンシャ-!①JR中央線  -東京駅。

 デンシャ-!②新幹線   -新大阪駅。

 デンシャ-!③JR東海道本線-大阪駅、徒歩梅田駅。

 デンシャ-!④阪急神戸線 -梅田-塚口駅か、
               梅田-西宮北口駅か、
               あるいは、
               梅田-夙川駅で乗換。

 デンシャ-!⑤阪急伊丹線 -塚口  -ご実家最寄駅。
        阪急宝塚線 -西宮北口-ご実家最寄駅。
        あるいは、
        阪急甲陽線 -夙川  -ご実家最寄駅。

 クルマ!   最寄駅に実家の方がお迎えに-ご実家着。

 ∴問題の式でのご実家着は可能。証明終。

 どーですか!?これで、
 『ト―イデスヨ-、ニドイキマセンヨ-、ノリマスヨ-、
  デンシャ-!、デンシャ-!、デンシャ-!、
  デンシャ-!デンシャ-!、クルマ!』
 の謎が解けましたぞ。TOEICなんぞというステータスに胡坐を書いているような高慢ちきなものを解くより、よっぽど集中力と忍耐力が要求される、高邁とも言える知的作業であります。

 一概に『遠い』っていっても『実際の距離』と『個人の物差し』は一致するとは限らないんですね。僕は、東京から神戸って聞いても枝葉末節の交通手段は反射的に間引いて考えるので『ああ、それなら、のぞみですぐ・・』なんて思っちゃうけど、ソンさんは、距離や時間云々よりも『交通手段を頻繁に乗り換えること』にうんざりして『コレハ、ト―イデスヨ-、ニドイキマセンヨ-』と思われたわけです。同じ『遠い』でも実はその人なりにいろんな物差しがあるんです。

 道理で、僕は『一概に営利追求だ』という組織にいるのに周りと齟齬が多いわけです。TOEIC495点(485点だったかも)では営利追求において何か影響でもあるのか、って顔で会社に通ってますから・・・
影響、あります。大いに。

 ええと、それから『ウケッケ。③』は予定ありません。
 たぶん。はい。

===終わり===
        
 
  
 
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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