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デオキシリボ核酸に含有されたる逸脱性についての考察。

 愚息の授業参観に行ってきました。

 僕の記憶に間違いがなければ、以前は『授業参観』といえば平日に母親その他の保護者が、締め切られた教室の後ろにびっしりと並んでいたものでした。しかし、『授業参観』も時代の流れの掣肘を拒めないんだな、と感じさせられました。今は、学校も企業も週休二日が一般的になったことが主因と思われますが、土曜日に行われるんです。
 指定された始業の時間にかなり遅れて到着すると-この手の行事に定刻に到着すること、は南半球生まれ・育ちの外人を配偶者にいただくと『人生の中で諦めないといけないこと』の筆頭に入ります。-、教室のドアが、前後とも開けられたまま杉田先生が授業を行っています。なるほど、土曜日だと母親や父親や、稀に祖父母の方も来校されるので教室には入りきれないわけです。
(ほう、俺の時代と随分雰囲気が違うなあ。)
 僕らの頃は、授業参観といえば、いつもと比べて『身元不詳のよそいきな空気』が締め切られた教室に満ち満ちていて、存在する人間の数に反比例して、いつもより妙に厳粛に授業が進められていたような気がします。一方、杉田先生の授業は、前後のドアが開けはなたれているせいか、先生の声も通りにくくて、生徒の方も特別な緊張感なしで授業をうけているように見えます。
(うん、まあ、こういうリラックスしたのも悪くないな。
 そもそも普段の授業を参観する、というのが授業参観の
 趣旨だからな・・。さて、うちのフジはどこに・・・。)
 と前のドアから他人様の肩越しに-なにしろ遅刻してきているので教室の中に入るのはもちろん、ドアに近づくのもやっとです。-、探してみると、いました。前から二番目の席で、集中しているでもなく、かといって明らかに上の空、という体でもなく『いかにも一応開かれた教科書』を前に、やや悄然と座っています。
(ありゃま。まあ、こいつは、こんなもんかな。)
 そのとき、息子が僕とさい君の姿に気がつきました。
 すると、フジは何を思ったか、目の前の教科書を突如『猛然と』めくりはじめました。
(おお、やる気だしてるじゃないか!親の前でいいところ
 を見せようというわけだな。うん、なかなかけれんみが
 無くてよろしい。ん?まてよ。今教科書をめくり始めた
 ということはさっきまでこいつが開いていたページは授
 業と関係のないページだったということけ????)
 と嫌な推定が僕の頭を支配し始めたその時、ふと、フジの手がとまりました。
(お、なんだ、なんだ?あれだけ猛然と何ページもめくっ
 てやっと授業の該当ページに辿りついたってか??)
 と、彼の手元を訝しげに凝視している僕をよそに、フジは教科書を高々と両手でかかえて、あるページと自分の顔を先生にはすに構えるように、僕らほうに見せました。そのページには大きな挿絵があって、どうやら家族が描かれているようです。
(???こいつ、何を???)
 と不安がる僕に、フジは破顔一笑すると、さい君の母国語でいきなり大きな声で、
 「パパ、そっくり!!」
 と挿絵を指さしながら言いました。そんなことに『他人にはわかんない言語という利点』を咄嗟に生かしてる場合か、とほほ。
 僕は、彼の『行動の猛然ぶり』と、その『目的のとほほ感』のあまりと言えばあまりの落差に大いに脱力しながらも、
 「いや、あのね、授業を聞きなさい。」
 と思わず、これまた、さい君の母国語で言いました。
 ちなみに、そこには、メガネをかけて、小太りのいかにもさえない『お父さん』が描かれていましたけど、『似ている。参考までにだが、似ている。』と自分でも思ってしまいました。愚息はかねてより、この挿絵と父が似ていることを言おう言おうとして、機会を逸していたとみえて、千載一遇のチャンスと思い猛然とページをめくった模様です。我が子ながら、『なんだかなあ・・』という男です。

 そのうち、授業を見るのも飽きたので、僕は、ドアから離れて、教室の外に今日のために掲示されたであろう『書き方』を見始めました。この時期の子の字にはたいへんレベルの差があります。うまい子-とくに、女の子が多いですね。-の中には、大人と遜色のない字を書く子もいます。
 「へえ!これが小学校二年生の字か!うまいなあ!
  お手本の字みたいだね。」
 「ほんとだね。」
 と、さい君も感心しています。うちの子のはどこに・・・と探しながら、僕の頭には、唯一といってもいい僕の父、かずまさが授業参観に来た時のことがフラッシュバックされていました。

 それは、僕にとって三つめの、阪神間に在る小学校での『父親参観日』でのことでした。当時は、『父親参観日』というのがわざわざもうけられていて、確か日曜日に授業が行われていたと思います。でも僕には、かずまさが父親参観に来てくれた記憶はたったの一度しかありません。土日はおろか引っ越しの当日にさえ仕事と称して家にいたことのない男でしたから、おそらく父親参観にも一回しか来てくれなかったんだと思います。でも、その『父親参観日』が記憶にとどめられているのは、一度しか来なかった、からのみではなく別の理由があるんです。
 その日の授業は体育で、校庭での跳び箱でした。こういう授業にはよくあることですが、その時も担任の先生が配慮してくれて、四段階くらいに跳び箱を設定して『跳べるレベルの跳び箱を跳びなさい』ということでした。
 僕はその時設定された一番高い跳び箱を跳んでみたことが無く、挑戦してみれば跳べないことはないかもしれない、けど、なにもわざわざ父親参観で恥をかくことはないよな、と『無難に』二番目の高さを跳んでいました。これは以前にも跳んだことがあるので楽勝です。(今思うとこの『無難に』という日本会社員的性格を僕は良きにつけ悪しきにつけ小学生にしてすでに自家薬籠中の物にしていたようであります。複雑な気持ちであります。)こうして、クラス全員が『無難に』跳び箱を順番に飛び続け、それを10メートルくらい離れて保護者の群れが見守っています。僕が何回目かに飛び終えて、列の後ろに戻ろうとしたその時です。いつ現れたのか、保護者の中の一人が、群れを逸脱して生徒の列のすぐ横に来て、まことに不機嫌に大音声をあげています。
 かずまさです。
 かずまさは、我が子が一番高い跳び箱に挑まないのに我慢がならず、気付くと僕のすぐ横まで来て、
 「こら!おまえ、こっちへ並べ!なんで一番高いところ
  を跳ばんのだ!これを跳べええ!」
 と一番高い跳び箱を指さしながら眉間に皺を寄せて我が子をどやしつけています。僕は、情けないやら恥ずかしいやらで泣きそうになりました。しかも、その日は授業の終わったあと、クラスのみんなから、
 「みどり、おまえのおとうちゃん、ごっついこわいなあ。」
 「とばんかい!いうて俺らの列に割ってはいってきとった
  もんなあ。」
 と言われて、返す言葉がなかったの覚えています。
 非常識です。
 まったくもって、規格外の男です・・・。

 ・・・さて、うちの子の書き方はどこかな・・・・。
 「フジの探してるの?」
 「うん、なかなか見つかんなくてさ・・え??!!」
 僕は自分の腰の近辺から聞こえてきたさい君の母国語での『助け舟』に思わず反応してから声の主を確認すると、そこには、授業を受けているはずの愚息がにこにこして立っているではないですか!
 「ばか!おまえ何やってるんだ!」
 「パパ、フジのはね、あそこ。」
 「あ、いや、そうではなくて、フジは授業にもどれ。」
 ああ、びっくりした。僕は、まだにこにこして事態を把握していない我が子の背中を押すようにして、しかし動揺を隠せずに、授業中の教室に戻しました。
 彼は、ドアから姿を消した両親が何をしているのかと、いつのまにか授業を逸脱し廊下まで出てきて僕とさい君が『掲示されている我が子の書き方』を探しているのを、熱心にすぐそばで『観察していた』ようであります。
 心配です。他のお子さまと比較して、これといって光るものは何も見当たらないのに、『なにやら規格外』です。もちろん、探し当てた彼の『書き方』は、原稿用紙の立場が気の毒になるくらい乱暴なものでありました。

 ・・・しかし・・。
 僕は自分では、『決して逸脱しない規格内の男』であることの堅牢性に自信があるんですけど、フジはかずまさの孫にあたるわけです。その間で、デオキシリボ核酸を『無難に繋いだつもり』の僕って・・・・。大丈夫かな。自覚がないだけで僕もどっかで逸脱してるんでしょうか?

=====終わり=====
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え、いやそれはそれで・・・。

ルビャンカ2様 いつもいつもありがとうございます。僕を常識人と認めていただくのはたいへんうれしいんですけど、『隔世遺伝』はそれはそれであまりWELCOMEなことではないです。愚息がかずまさのような人間(いままでのブログでおおよそ掴んでいただいたかと)になるのは避けたいんですけど。ちなみに、僕の兄は、かずまさの相似形、あるいはそのうえを行く規格外の男です。ばれるとこわいのでブログには書けないですけど・・。ブログの題材としては、かずまさも母もフジもさいくんも凌ぐ特級品です。

No title

いやだいじょぶ。みどりさんは常識人です。かく言うわたくしもどこかで抜けているところがあるのであまり自信はありませんが。。。
あと世の中には「隔世遺伝」という言葉もあります。だいじょぶです。
多分ですけど。。。

それにしてもフジくん、、、将来が楽しみです。
自由に育ててあげてください。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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