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ドライヤー貸してください!!

 子供の面白さ、というのは、大人の常識の意表をつくところに真骨頂がある、というべきでしょう。大人の世間を知りつくしたつもりの言葉でいうと、本末転倒、であったり、木を見て森を見ず、であったりという言動にあると思います。いい大人の勤労者であったら、それこそ「おまえ、常識っていうものがあるだろう!!」と課長に書類なんか投げつけられて罵倒されるような言動が、その年齢ゆえに許される、ということですね。特に成長の遅い男の子の、本質を理解しない言動は、ときに僕らの想像の埒外にあります。

 僕の息子は、混血児ということと、前回の日記にあるようにドッグフードをむさぼり食べてカルシウムを補給した経験のあること、以外は、ありがたいことに「そのへんのありふれた小学一年生男子」です。
 え~と、「混血」に関して説明しますと、北半球の人と南半球の人の間の子で、でも南半球人のさい君の国籍とさい君の体に保たれている血はちがう国の民族で、と、この件について触れていると本題とずれてしまう上にあくびを誘うような話題なので、詳細は省きますが、とにかく、さい君の家族の伝承と、うちの家族の、我が家は日本人である、といういい加減な伝承を信じれば「モンゴロイドXモンゴロイド」のハーフのはずで、本当かいな、と思っていたら、息子は、見事な全身コレ蒙古班で生まれてきて、伝承による血が確かであったことにおどろくとともに、思えずメンデルの法則に思いを馳せてしまいました。

 その、「ありふれた子供」であるがゆえに、彼もしばしば「大人から見ると見当違いな言動」をしてます。たとえば先日、運動会の徒競争で、彼は早生まれということもあってか、背が低いので一番最初のスタートだったんですけど、父である僕は自分がかつて泣きながら走るようなやや繊細な子供であったので、奴は果たして如何、と思いながら多少の緊張と感慨を持って見ていたら、スタート時点でまるで緊張感のない満面の笑み、結果もこれをダントツと表現せずしてなんと言う、というくらい美しいまでの最下位でしたが、最後まで満面の笑みでゴールしました。かつ、順位別に座るときになると6位のくせに、いきなり4位のところに座り、かかりの上級生に襟のうしろをつかまれて6位の旗のところにずるずるとひきづられていきました。そのあとも、ほかの生徒が、あとから続く友達に声援をおくったり、注視しているのをよそに、祖母に手を振ったかと思うと、地面になにやら一心不乱に落書きをしたり、しまいには「6位」の旗をいじくって、鉄の台座から引っこ抜いてしまい、はめられなくなって、広いグラウンド、大きな歓声をよそに、ひとり旗と格闘してました。まさに「運動会における徒競争とは何たるか」を理解せず、「旗との格闘」という独自の空間・時間を創造した「本質がわかってない」典型例であると言えましょう。

 のち昼食時、
 「フジ、おまえ、これからはしるのに、にこにこしてちゃ、力はいらんと父は思うが如何?それに最下位についての釈明も報告したまい。」
と、といつめたところ、
 「よーし、これから走るぞ、と思うと思わず笑顔になった。」
 「なんだ、そら?」
 「それから、まあ・・・、靴だな。パパが『adidas』をはかせるか
らである。『瞬足』をはいていたら4位になったであろう。」
と、いいわけだけは、仕事のできないサラリーマンみたいなことをいいながら弁当をたべて、それで終わり。あとは友達と遊んでいました。我が子ながら、これといって光るものがなにもないんであります。

 そんなある日、外出から帰ってくると、台所のドアに、べたべたと張り紙がしてあって稚拙な文字でなにやら書いてあります。何事ならんと、苦労して解読してみると、
 「フジはきょうとてもかんどうしていますなぜでしょう」
ですと。台所にはいって「ただいま」と言うと、破顔一笑する息子と、たいへん複雑な表情のさい君が、待っていました。
 「パパ、メモ読んだ?? なぜかんどうでしょう!?」
もう、息子は、話したくてしょうがない、と興奮してます。一方、さい君は、ドッグフードを息子に食べさせたときを彷彿とさせる、まあ、きいてよ、という複雑な表情で黙ってます。この陰影を織りなす親子の表情に、僕は、困惑していたら、
 「なぜでしょう!!!?」
と息子が、体ごとたたみかけてきます。
 「えっと、新しいポケモンを買ってもらった。」
と最初は適当に対応していたら、
 「ちがう!!」
と鬼気迫る返答がくるので、こちらもだんだん考え出して、
 「え・・・・えっと、こいけりょうとに喧嘩でかった。」
 「全然ちがうよ、なんでわかんないの!」(そんなのわかるかよ。)
 「え、え、え・・・えっと なかもりあきな ちゃんと,らぶらぶだった!!」(しんじがたいことに字は違いながら、往年のアイドルと同姓同名の同級生がいて、クラスのませた親分格の女の子によれば、だれそれとだれそれはラブラブ、それで、フジとあきなちゃんはラブラブ、と宣言されているそうです。)
 「もう!!そんなことでかんげきするわけないでしょ!!もう!」
え、いや、あの、『そんなことで』って、父としてみれば、だれとでもなく『らぶらぶ』な状況というのは、人生においてさえそう何回もない貴重な朗報であることは知ってるんだが、と思いながら、息子の剣幕におされて、
 「降参である。教えてくれ。」
と言うと、息子が説明するまえに、それまで黙って暗い顔で聞いていたさい君が、なげやりな口調で、
 「今日ね、全然知らない人の車に乗って帰宅したの。その親切に『かんどう』してるんだって。」
とためいきまじりに結果を教えてくれました。

 いやあ、これは、親としては驚愕しますよね。ちなみに、息子の学校と家の距離は、大人で歩いて3分程度ーなぜか息子は、いつも20分以上かかってますけどーの近距離です。
 「なにゆえだ。いつも『知らないひとについていってはいかん』と父も母も言っているであろう!」
とかなりシリアスに詰問したところ、そこは、子供、人の話は全然きかずに、彼の「ハートウオーミングストーリー」を一気にかたりだしました。曰く、
 「今日ね、フジはね帰りね、秘密の通学路をとおってかえったの。パパ、秘密の通学路はしってるよね?」
 『秘密の通学路』つったって、家からでて、はじめにあるワンブロックを内側からはいって、大通りにでるか、そのままブロックの端まで言って、大通りにぶちあたるか、の差しかないです。ただ、内側からいくと交通量はすくないんですけど、人通りが少ないので学校指定の通学路は内側から入らないようになっています。だいたい、内側からブロックを抜けると距離的にも若干遠いんですよね。でも、そこは幼い男の子、その「禁止されているひとどおりの少ない道」になにやら物語性と、タブーをおかす刺激を感じているらしく「秘密の通学路」と「みんなで名付けて」たまにそこを通って帰ってきます。僕にも「ここが秘密の通学路である」と何回もささやいて教えてくれました。秘密でもなんでもないです。
 「うん、知っておる。それで?」
 「今日ね、フジはね、ひとりで秘密の通学路をかえってきたの。
  それで、途中でおしっこをもらして」
 「なんだって?」
 「おしっこをもらしたの!!もう最後までききなさい!」
いばっていうことではない。
 「それで、そこから家まで、あう人におしっこをもらして
  いることを知られたらはずかしいから、どうしようとおも
  ってたら、ひみつの通学路に公園、あるでしょ?そこの前
  にいたおじさんに『ぼく、しょうがっこういちねんせいで
  すけど、おしっこをもらしたのでドライヤ―かしてくださ
  い』っていったの。」
 「????? じゃあ、フジからしらないおじさんにはなし
  かけたのか!!」
 「だって、ズボンがぬれてるのを人にみられたら、フジいち
  ねんせいなのにはずかしいでしょ。」
答えになってません。
 「それで?」
もう、僕はすっかり、結果が心配になって先をせかしました。息子は父親の共感を得た、と勘違いしてますます熱く語ります。
 「それで、ドライヤーで乾かして、帰ろうとおもったの。
  そしたら、そのおじさんが、『う~~ん、ドライヤ―はない
  けど、車でおうちまでおくてってあげるよ。』ってうちまで
  送ってくれたんだ!!すごいでしょう!?かんどう!」

「すごいでしょう?」ではない。

 送ってもらったつたって、その距離はーつまり彼が、ひとに見られたらイカン!!とプライドをたもとうとした距離はー実は「70M」です。それで、さい君と息子の表情の陰影のわけがはっきりしたわけです。「知らないひとについてはいかなかったけれど、自分からはなしかけた」んであります。
 「あのなあ、フジ、おしっこをもらして恥ずかしいなら、
  すぐ帰ってくればいいじゃないか。」
 「だって、その間に人にあったら、はすかしいでしょ?」
 「はずかしいたって、しらないひとに『いちねんせいなん
  ですけど、おしっこ漏らしたので』って自分から言った
  んだろ?」
 「うん。」
 「それで、その人がロケット団みたいな悪いひとで、フジが
  どっかにつれていかれたら、どーする?たまたまとても
  いい人だったけど、悪いひとだったらうちに送ってくれないぞ。」
 「だいじょうぶ!車に乗る前に、神様にお祈りしたから!!!」
 「・・・・・・・。」
 この辺は、プロテスタントのさい君の洗脳が効いているようですが、まさか
 「知らないひとについていってはいけない」だけではなくて、
 「しらないひとにやたらと話しかけたり、ましてやドライヤーを貸してください、などと言ってはいけない」
と注意しなけれならない、とは大きな落とし穴でした。
 くだんの男性には、さい君が、後日温泉まんじゅうをもって、息子とお礼にいきました。とってもいい人だったそうです。ありがとうございました。
 70Mをおしっこもらした状態で歩きたくない、というのは小心なように思いますが、その一方で、いきなりしらないひとに名前も名乗らずに「しょうがっこういちねんせい」であることをカミングアウトして、ドライヤーを貸せ、というのも大胆すぎるようです。しかも、「かんどうした!」っていう「本質を理解してないこと」が、どうも今後も心配です。
============== 終わり =============
 
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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