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ときと、ばあいと、あいてと。

 僕の親友、高校時代のラグビー部の仲間、山案山子氏(以下例によって呼び捨て)とのことです。以前(2010年3月27日『みぢかえない話①、同3月31日『痛い!①』をご参照ください。)にも書きましたけど、山案山子は、あまり友人の多くない僕にとって、まがうことなき親友のひとりです。親友といっても特段に称賛に値する男かというとそうでもなく、似たような性格かというとそういうわけでもなく、気がついたら、すごく仲がいい、というだけです。だから、山案山子の結婚式のスピーチでも(もちろん、僕はああいうの苦手です!)彼について僕の知っている範囲でのエピソードを淡々と話しただけなのに、おかげで盛んな拍手を頂戴致しました。

 二人ともサラリーマンになってすでに日も浅からぬ頃も、―まだお互い独身でした。即ち可処分所得は100%です。―、毎週のように僕と山案山子は飲みにでかけました。よくまあ、同じ人間とそんなに話すことがあるなあ、と僕自身も思いますけど、僕と山案山子がそうやって頻繁に会っても、ちっとも飽きない大きな理由のひとつは、『お互いに相手の話をあまり聞いていない』という本来なら致命的ともいうべきコミュニケーション上の瑕疵による『功績』のお蔭です。登場人物はいつも同じくせに、アルコールをしこたま飲みながら、自分の言いたいことだけしゃべって解散、という『淡き友情の交わり』なのでストレスの発散になるし全然飽きないんだと思います。なんとなくこれでいいのかな、と思わないでもないですが、『齟齬ある会話を繰り返す親友』が頻繁に消費活動をすることがささやかながら日本経済の活性化に寄与していることこそあれ、ほかの誰にも迷惑をかけているわけでもない、ので良しとしています。

 どんな風に噛みあわないかというと、例えば、僕が会社の上司とどれだけうまくいっていないか、具体例をあげ、口角泡を飛ばして熱弁をふるったとします。

 僕「・・・というわけで、その立川さんに許可をとって
   やった為替予約なのに、立川さんの目の前で『気に
   いらん!勝手にこんなことしやがって』って副部長
   に書類を投げつけられて、残業中に2時間もその
   副部長に説教されてよ、それで終電にも乗られなか
   ったんだけど、その場に居合わせた立川さんは一言
   も言わないで、黙ってるわけよ。頭くるだろ?」
 これに対し、山案山子は焼酎をがぶがぶ飲みながら、一応僕の顔を見て、なにやら何度も頷いています。しかし、その次の彼の発言は、こんな感じです。
 山「う、うん。最近さ・・」
 ここで『最近さ、そういう人多いよな。うちの会社でもさ』などという返答を期待しているようでは、僕にいわせると友情は長続きしません。彼は型どおり頷いてからこう繋げます。
 「うちのクラスの同窓会があってさ、沢田さんて、いたじゃん?」
(あれ、、また一言で議題を変えやがった。さては、こいつ俺が
 話してるときからすでに、同窓会のこと考えてたな。だいたい
 沢田さんて誰だよ?)
 「あの子がすんげえ綺麗になっててさ、驚いちゃったよ。
  だいたいあの子、うちのクラスでは目立たなかったで
  しょ?」
(知らないよ、そんなの。俺クラス違うもの。それより立川さん
 は許せん。)
 「でも、同窓会であって変貌してるってあるもんなんだ
  なあ。ちょっと話しこめたからさ、今度一緒に飲みに
  行こうよ。うん。」
(だから、知らないっての。)

 自分たちでも信じがたいことに、だいたいがこういう情景です。しかも、もちろん、『沢田さんとの飲み会』なんて実行されず、気付いたら次の週末にまた、『齟齬ある』いや『齟齬しかない会話』を二人で繰返していました。

 しかし、そんな中でも、さすがの僕も、これはないだろう、というTPOを欠いた会話で未だに忘れられない事例があります。

 本案件のその特筆すべき点は、珍しく、お互いがうまく自分の意思が相手に伝わらないことに隔靴掻痒感を感じ、この両人にあろうまいことか、『なんとかふたりとも、自分の意思をわかってもらおうと通常のコミュニケーションを模索した』ということにあります。
 『噛みあわないにも程があるだろう』というその会話は、山案山子の唐突な(ま、だいたい全部唐突です)発言から端を発しました。

山「財形貯蓄してる?」
僕「え!??」
山「いや、だからさ、俺達もさ、そろそろいい年じゃん?
  だからその辺、考えなきゃと思って周りの人に聞いたら
  さ、みんなちゃっかりやってるんだよね。」
僕「・・・。」
山「でさ、だいず(僕の仇名です。由来は、2010年10月
  25日の『大豆に隠された真実。』をご参照ください)
  はしてるの?してるっしょ?月いくらくらい?」
こっちは、やや、いえ、かなり憮然として、
僕「してるよ。」
 と『なぜ僕が憮然としているか』を伝えるために簡潔に返答します。しかし、山案山子はそんな行間を読めるようなせこい男ではありません。同じ調子で予定どおり会話をすすめます。
山「ほら、俺ってさ、だいずも知ってると思うけどさ、
  お金の管理とか杜撰じゃん?」
僕「・・・・うん、まあ。」
(一応自覚はあるわけだ。でも強調することかよ。)
 かまわず続ける山案山子。
山「だからさ、給料から天引きされて、そのうえ利子も
  つくっていうのは俺には向いてると思うわけよ。
  でも、だいたいどれくらいやったらいいか、相談
  しようと思ってさ。」
僕「・・相談って、俺にか?」
ここでめずらしく山案山子が、ややいらついて、
山「さっきからそういってるでしょ?こういう話はさ、
  ほら、お金の話しだから、誰にでもできる、って
  ことじゃないじゃん?」
僕「そら、ま、そうだけど・・。」
と『けど・・』と全面賛成ではないことを匂わせていることにも気付いてくれず、僕は僕で、ややじりじりしてきています。こいつ、まともじゃねえなあ。
山「でさ、だいずはいくらなの?」
僕「なんで?」
山「だ・か・ら!財形だよ。ザイケイ!貯金がないと
  これから結婚だとか、いろいろ物入りになってくる
  年齢じゃん、俺たち。してるの?」
(『俺たち』っておまえなあ。)
僕「してる。」
山案山子の熱弁に反比例して僕の返事はどんどん無愛想になっていきます。
山「いくら?そこって結構迷うよね。本当はさ、同年代に
  何人か聞いてさ、だいたいのところをつかみたいところ
  なんだけど、なにしろお金の話だから、腹を割って話せる
  他人っていないじゃん?」
僕「それで、その相手が俺なわけ?」
山「だからさっきから、そう言ってるっしょ?」
と当然だろ、いらつく山案山子に、全く釈然としないだいず。
こいつおかしな男だなあ、会話にはTPOってもんがあんだろ、と僕の不満を山案山子がまるで悟ってくれない不快感をたかめつつ、またしても簡単に答えます。
僕「ごまんえん。」
山「ええ!そんなに?」
僕「うん、俺も始めるの遅かったし。」
山「そうかあ、だいずが、月に5万か。う~~む。
  あれ?じゃあさ、今いくらたまってるの?」
と他人の家にいきなり土足ではいってくるような山案山子の発言(いつもお互い土足で入りあってますけど。ちょっと今回にかぎっては・・・・。)に、さすがの僕も、この会話の異常さを改めて山案山子に啓蒙しようと思い、今度は会話のイニシアチブを握ろうと試みます。
僕「あのさ、」
山「うん」
とすっかり彼の『相談』に対して具体的な返答が僕から返ってくるものと、身構える親友。
僕「こないださ。面白い光景があってさ。」
山「・・・うん。」
かなり納得のいかない表情ながら、いつもの僕らの会話ではあることなので、財形問題はあとからまた切り返そうと一旦鞘におさめる山案山子です。この辺は彼の育ちのいいところであります。
僕「俺の会社である日残業中にさ、かなりの人数の先輩、後輩、
  同期が、突然隣の部に集まってきてさ、」
山「うん。」
僕「それで、どうも隣の部の俺の同期1名を囲んで
  なにやら険悪な話し合いをしてるわけ。」
山「へえ。」
とりあえず、面白そうな話だな、と食いついてきます。
僕「俺も、何かと思ったんだけど、後で聞いたら、
  その取り囲まれた俺の同期が、-そいつはさ、
  先輩、同期、後輩、一般職の女性、と誰彼かまわず金借りて、
  ひどいときは、数か月も返さない、っていうことが
  よくあって、俺も返してもらったんだけど貸した
  ことがあって-、そいつがある月の自分の給料明細をごみ箱
  に捨てたのね。あんまりよくないよね。そういうの。」
山「うん、うん。」
と話の先を予想できず、暫時、財形問題を忘れておる様子です。
僕「それをさ、そいつに金を貸してるある先輩がさ、ゴミ箱から
  拾って見ちゃったんだよ。俺は、そういう行動もどうかと思
  うけどね。」
山「おお、それはちょっとひどいなあ。それで?」
僕「財形だよ。」
山「へ????」
と山案山子は突然の話題の先祖返りに全くついてこられません。
僕「その同期はさ、大勢の職場の仲間に金を借りて、なかなか
  返さずにおきながら、実はかなりの額の給料天引きの財形
  貯蓄をしていることがその時に判明して、まわりの債権者
  達がさ、『会社の同僚に金をかりて金利をかせぐたあ、
  盗っ人猛々しい野郎だ!』ってことで臨時債権者集会開催!
  になって、その同期は、金返せだの、今すぐ財形を解約しろ
  だの、罵詈雑言を浴びたんだよ。他人の給料明細を見る、
  という行為は褒められもんじゃないにしても、その同期も
  ひどいでしょ?」
山「うん、そうだな。それでその同期は、財形いくらしてたの?」
(・・この話で関心を持ってもらいたいのはそこではないんだけど。)
僕「・・あのさ、お前、今の話きいてた?」
山「え?うん、聞いてたよ。でもおれの相談の方が先でしょ?」
僕「いや、だからさ、『給料天引き』で、『毎月貯蓄して』
  『金利もかせぐ』っていう相談を『みどりけいたにしてる』の?」
山「そうだよっ!だから、財形ってそういうもんでしょ!?」
めずらしく、自分の質問を『はぐらかされた』という思いの強い山案山子のいらいらはかなりのものになってます。僕は、僕で、事ここに至って、まだこの相談の異様さに気付かない山案山子に対し、憮然とした態度をとり続けています。しょうがないです。

僕「あのさ、じゃあ俺の意見言うけどさ。ようく、
  聞けよ。お前は『他ならぬ俺に』相談したんだから。」
山「うんうんうん。」
(全然わかってねえなあ・・。)
僕「だいたい額面の10%くらいはしたほうが
  いいんじゃない?それとボーナスは、できれば
  『無かったこと』にして思い切って多額をしたら
  いいと思うよ。でも・・・」
と、ここで山案山子が僕の話を遮り、
山「うん、なるほど10%か。かなりだな。ボーナスって
  なんか、ぱっと潤って、ぱっと無くなるからそれも説得力
  あるよな。でも10%はどうかなあ・・・」
とぶつぶついう山案山子に、僕は遮られた先ほどの会話の
後半部分をまじめな顔をして話しました。

 「でも、その前に、数年間にわたって借りてるお金を
  返すべき人がいるんじゃねえか?」

 山案山子は、彼が話しを切り出したときから僕が『こいつ、選りに選って誰にむかって、なんていう相談をするんだ』と感じ、途中での会社の同期の債権者会議の事例まで持ち出して気付かせようとした『長期固定債権を抱える債務者が、とうの債権者をわざわざ呼び出して、貯金をして金利を稼ぐ方法を相談している』という自分の言動の異常性と非常識さ、にようやく気がつき、反省と、驚きと、恥ずかしさと、を伴った妙な声の出ない苦笑いをしながら、酸素のたりない魚みたく口をぱくぱくさせていました。
 
 僕も、TPOには気をつけたいと思います。
 尚、山案山子は、『予定どおり』僕への借金返済より、財形貯蓄を先に始めて、後日その『成果』を僕に報告してくれました。
=========おわり============
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だはは!

いつもありがとうございます。「わざと返さなかった」という発想には驚きましたが、それはありえません。なぜなら、未だに私は彼の債権者なのであります。もちろん古い債権は回収済ということになっておりますが、新規発生(といってもすでに1年超)の債権がありまして、少額ながら『残高確認』もままならぬ、というお互いお粗末な管理がいまだにあるんであります。はい。

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お友達、なかなか大物じゃのう。
それかみどりさんとの距離を変えたくなかったからワザと返さなかったという可能性はないかの。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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