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セコムしてますか?

 ニドミしてますか?(長嶋さんの『セコムしてますか?』の口調でお読みください。)

 僕はコートを着るのが嫌いです。そもそも本人の意図に反して、皮下脂肪が分厚い防寒型仕様のボディになってしまっているためにコートを必要とする季節が他人よりも若干遅い、ということもありますが、それとは別に、『重ね着』があんまり好きではないからです。だいたいが、僕は、何事においてもシンプルを美徳としています。好きになる人もいつも同じクラスか、同じ職場の、しかも同じフロアです。シンプルです。それから出退社のときも、手ぶらです。かばんはもちません。シンプルです。下手に荷物を持っちゃうと遺失しかねない(実際何回も遺失してます。今から渡そう、っていう付き合ってる女の子、-同じフロアでした。シンプルです。-へのプレゼントも電車の網棚に置き忘れて出てこなかったことがあります。)し、そもそも女性と違って、男性の場合は、持ち物に関しては、入れ物が先か、中身が先か、といった命題の中にいると思います。

 例えば会社の同じ部にいる、独身、どっかの会社の偉いさんの息子さんという噂の原君(彼は、営業じゃないので、基本は終日デスクワークです。)が、いつも高級感あふれる皮のアタッシェケース(実際に聞いてみたら、なんちゃら・なんとか-という、お洒落な人間を『お―』と唸らせる高級ブランド品だそうです。)を持って出社し、毎朝、席の後ろのキャビネの上に、スパイみたいに、『カチャ、パシ。』と置いている光景を僕は毎日不思議に思ってみていました。
 ある朝エレベーターで一緒になったときに、
 「いいかばん持ってるなあ。」
 「ええ、まあ。」
 「どこの?」
(返答されたってわからないのに聞いてしまう。)
 「え?あそこです、なんちゃら・なんとかあ、ですよ。」
 「おおー。」
(ブランド名なんか、もともとどうでもいいので、一応唸る。)
ここで、彼のプライドを傷つけないように小声で聞きます。
 「あのさ、中味何がはいってんの?」
 すると、原君も小声で、
 「特に何も入ってないです。」
と正直に答えてくれました。あとで、仲のよいお洒落な後輩に、原君に教えてもらったアタッシェ・ケースのブランド名を言及したら、
 「まあたあ!みどりさん知らないんですか?それすんごい
  高いし、有名なブランドなんですよ。そもそもうちの
  会社が以前出資してたじゃないですか!」
 とのことでした。

 閑話休題、とにかくも、僕は、出退勤時は手ぶらです。重ね着も極力さけてます。重ね着すると、かさばるし、着膨れラッシュの原因の一人にもなっちゃうし、第一重たいので鬱陶しいです。休日はダウンジャケットを着てますけど、さすがにスーツにダウンジャケットを着て会社に行くわけにもいかないので、コートは極力着ません。寒くてもジャケットだけです。おかげで、三着(だったと思います。)ある仕事用のコートは、買い替えずに何年間も使ってます。
 
 そんな、『自他ともに認めるなかなかコートを着ない男』が、『ひゃああ、これは寒い!堪らん!』と寒さに負けて初めてコートを着たその日に、僕はその人に遭遇しました。
 僕は、東京本社に勤務していて、1月の霜柱の立つような、とてもとても寒い日でした。さすがの僕も、皮下脂肪の上に、下着、ワイシャツ、ジャケット、ネクタイを装着し、その上にウールのコートをいやいやながら着て出勤しました。そして、退社時です。1月の東京、夜、といえば、間違いなく寒いです。電車の中も、スタイルでいうと、ダウンジャケットだの、裾の長いコートだの、皮の手袋だの、本物かどうかはともかくファー付きの服だの、といった暖かそうな防寒スタイルで、そして色でいうと黒だの、紺だの、茶だの、えん脂だの、などの暖色で満ちていました。比較的混んでいることもあって僕は、座られずに窓際で立っていました。停車すると、どのプラットホームも、冷たい空気と、寒そうに身を固めた人たちを送り込んできます。それらは、降車する色たちと入れ替わりに、車内の景色をさっきとは違った彩に、しかし、やはり暖濃色に、染め直します。僕は、コートのファスナーをしっかり締めて、襟を立て、停車するたびの寒風に備えながら、目的駅に着くのを待ちます。

 『いやあ、今日は朝も寒かったけど、夜も冷えるなあ。コート着てきてよかった。お、あと三つで着くな。今日の晩飯はどこの国籍系統かな。』と、ある駅に停車し、見るともなしに、降車と乗車の流れを目で追いながら、コートを着てきた自分の判断に酔っていたそのときです。
 降車が一段落して、足早に電車に吸い込まれていく乗車客の最後尾に、僕の目は一瞬、釘づけになってしまいました。彼は、40代半ばの男性で、中肉中背、特に髪型などに特徴があるわけではありません。しかし、他の客が足早に乗車してくるのをよそに列の最後尾から、飄飄と、涼しげに、そう!それ以外に言葉が見つかりませんが『それがどうした』という表情で、もう一度言います『涼しげに』乗車してきました。

 半袖の開襟のワイシャツなんです。

 薄い横編みの青いべストこそ着てますが、それだけです。しかも、そのワイシャツの見事な白度といったら!よくある、木綿色、などでもなく、新幹線ひかり号のようなアイボリー色でもなく、いかにも『化繊でしか表現できない真っ白』っていうやつです。洗剤のテレビ広告に出てくるような見事な白です。僕の頭には一瞬、夏の高校野球の実況放送が再生されました。『ご覧のように、本日は好カ-ド、休日ということもありましてスタンドは超満員、白一色です!』っていうあれですね。
 僕は、この寒さ、身を固める乗客、溢れる暖色、の中で、
 「真っ白な半袖の開襟のワイシャツで、悠然と『涼しげに』
  最後尾から手に文庫本を持って乗車してくるヒト。」
 に仰天して、文字通り『目を奪われて』しまい、しばし、呆然とその真っ白な半袖の動きに視線を持っていかいました。化繊半袖氏は電車の中にはいると、近くの吊皮に漂着しました。僕は、動きの止まった視線を反射的にワイシャツから、化繊半袖氏その人の顔に移しました。だって、いったいどんな人なんだろうって思うじゃありませんか?彼の顔はこれといった特徴もありませんでした。その時、僕の視線と半袖氏の視線があってしまいました。が、化繊半袖氏は、『だからなんだよ』というような表情を見せ、一方、僕はなんだかいけないことをしたような気になり視線をそらしました。車内を見まわすと、乗客の中にも少なからず、河童かツチノコにでも遭遇したように唐突に現れた『真夏』を唖然と見ている人がいます。僕は、そらしたものの、今目撃したことが信じられずに、もう一度、開襟半袖氏を確認しようと思いました。けれども、ある体験が頭を掠めてすんでのところで『二度見』をやめました。
 実は『二度目』は見られるほうは大抵『はっきりとわかってしまう』んであります。

 あれは、17歳の秋でした。僕は、ある事情で(ねえ、なんでみどりくんってそんなにエピソードが多いの?っていう人がいますけど、まあ聞いてください。それに、たとえばいつも愛読いただいている、Sおりさんはこの話しはご記憶にあると思います。この件は機会があったら書きます。)、大怪我をして顔面包帯だらけ、で一週間高校に電車通学したことがあります。正確にいうと、包帯とテーピングと巨大マスクなんですけど、見た目には、目の部分以外はほとんど皮膚が露出していません。おまけに、怪我とその治療のせいで顔面が腫れあがっているので、唯一露出している目も五月人形みたく線のように細くて、どこを見ているのか、もわかりません。この格好での登校初日、教室にはいったら、クラスの女の子のひとりが、おおいに驚いたのを覚えています。彼女は、『息をのむ』っていうのはああいうのをいうんだろうな、って感じで、声もだせずに、口をあぐあぐさせていました。その時、僕は、『異形の人』を一週間体験したわけです。
 いやあ、見られましたねえ。僕は、若かったから開きなおりも早かったし、なにしろちゃんと怪我が完治するだろうか、という問題のほうが、一時的な見た目なんかより何万倍も重要だったので、すぐに慣れて堂々と電車通学してました。見られました。
 まず、僕が電車にのると、車両中の乗客の視線が100%、ほぼ同時に僕の顔につきささります。視線第一波の+です。最近、『めぢから』という言葉を耳にしますが、その視線第一波にはまさにある種の圧力を感じました。そして、その後、まるで申し合わせたように一斉にみんな視線をそらします。『は!見てはいけないものを見てしまった!』という意思が電車内に満ちます。視線第一波の-ですね。この+-で視線第一波は完了です。しかし、『その異様な形相』、―なにしろ顔面包帯で糸のような目がほんの少し見えてるだけですから-、を『どうしてももう一度見たいという好奇心を我慢できない人達』が、かならず、かならず、いるんです。
 視線第二波です。しかし、この第二波は、第一波のように、単純に、『あっ!と+(プラス)』、『さあっと-(マイナス)』、という単純な形状では来ません。悪意はないんでしょうね。その証拠に、その第二波は、『まず乗客の近くの中吊広告を見るように現れ、次第に僕の顔に近づき、ほんの少し僕の顔で止まり、次にまたいかにも惰性で窓の外の景色を見ているだよん、という具合に半楕円の軌道を描いて終息する』んです。しかし、しかしです。乗客のみなさんは、僕に悪いと思って、かような楕円視線を駆使しているわけですが、実は、見え見えなんですね。これが本当に温度差があるんですけど、断言してもいいです。『見られる方は、好奇心による第二波は全部わかっている』んです。でも、考えてみてください。いちいち『みないでください』って言ってたら、電車に乗る度に何十人もの人に話しかけなければいけません。僕は、最初は睨み返したりしてましたけど、僕の場合、『糸みたいな目』なのでどうも皆さん睨み返されている自覚がないどころか『視線が合っている』ということすらわかんないみたいで、僕が一所懸命睨み返しているのに、楕円の軌道の頂点のままじっと僕を見続けている人もいました。だから、馬鹿馬鹿しくなって、睨みかえすのもやめちゃいました。そうです。好奇の眼差したちにさらされているのは百も承知なのに、慣れてしまって『見られている方が気付かない振りをしている』のが現実なのです。包帯だらけの末期には、乗車して、第一波をまず真正面から受け、こちらから車内をじろじろと(自分の気分だけです。実際には『じろじろ』してるのもわかんないですから)車内を見渡し、次に、こいつどうも我慢できずに、第二波を発しそうだな、とあたりをつけた人間にこちらから顔をむけたりしてました。そして、その通り、その乗客の『顔面真っ白な高校生を見たことを再確認したい好奇心を抑えられずに送った第二波の半楕円の頂点』と僕の顔の方向が直線で結ばれたときの、その乗客の狼狽ぶりを楽しんだりしてました・・・・。

 僕は、化繊半袖氏をもう一度確認したい、と思いつつ、『二度見は見られる方は絶対にわかる』という経験を思い出し、我慢しました。残念です。

 だから、電車の中で、思わず視線を吸いつけられるような人に遭遇しても、-真冬に半袖の真っ白なワイシャツの人、とか、ええと、豊満な胸を露出して谷間を7センチくらい見せている女性とか、がいても(でも、ああいう女性の胸はやっぱり見ちゃいけないんですかね。僕の数少ない女友達に意見を伺ったら、二分してて、『見ちゃだめにきまってるじゃない!誰にでも見てほしいわけじゃないんだから!そんなの痴漢よ!』っていう派と、『そんなの見ていいに決まっているじゃない!そういう人は自慢したいんだから!だって電車にのった瞬間視線が胸に集まるのは本人はわかってるのよ!』とご本人も谷間を盛大に見せながら解説してくれる派、とがいるんですけど。『電車にのった瞬間に胸に視線が・・』は僕の経験からしてもよくわかります。どっちなんでしょう?)、ゆめゆめ『二度見』はやめましょうね。
 するなら『相手にばれていること』は覚悟してください・・・。

 二度見、してますか?(長嶋さんの口調でお読みください。)

====== 終わり ======
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非公開コメント

そんな装飾な話を、いや

そんな「草食な」ふりをして流行に迎合しなくてもいいですぞ。

No title

いや、うそじゃないっすよ。すべてホント。
わたしコーヒー、彼女コーラのんで和やかなうちにお開きです。

えええ!

いつもご愛読ありがとうって、そのお話本当ですか?まるで『みぢかえない話』ではないですか!惜しい、実に惜しい!なんでそこでファミレスかなあ。惜しい・・・・、ね、でも見られてる方はちゃんと分かってるでしょ?

No title

わたし嘗て東武東上線を使っていました。もう20年ほど前のことなのですが、ほろ酔いで電車に乗っているとすごく可愛くて、しかも露出が多い女の子が乗っているじゃないですか。思わずニドミなんてもんじゃなくニジュウドミ状態です。そしてそのコがなんと同じ駅で降りていくので、追加でジュウドミし、合計サンジュウドミとなったところ、、、、結果として、、、なんと「私もあなたが気になってたの。お茶でもしていきませんか」として近くのファミレスにいって仲良くお茶したという経験があります。でもそれっきりでした。ストレートに感情だしてみるのも悪くないかもしれません。まあ彼女からしてみたら単にのど乾いていたけど、お金もってないや状態だっただけかもしれませんが。。。
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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