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日本国憲法。

 僕は、残念なことに最近になってようやく知ってしまいました。『世の中には矛盾しているけど、皆まで言うな、ということがある』ということを、です。

 例えば、『軍艦マーチが盛んに響く成人むけ遊技場で獲得した玉を換金している光景』と『刑法185条』の存在、『特殊浴場というまさに特殊な欲情、もとい浴場』と『売春防止法』の存在、『日本国国家の根本基本法』と現実の違い、-ええと、これについては第9条が盛んに議論されてますけど、僕は、最近知ってしまった『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』という某条文の方が現実より矛盾の乖離が激しいし、どちらかというとこのほうが国家にとっては焦眉の急だと思うんですけど-、などです。いえ、断っておきますが、僕は法律に詳しいわけでもないし、上記のことについて法解釈理論をしよう、などという気は全くありませんので、その方面の専門の方は冷静に対処願います。

 同様に(同様かな?)、入社以来気になっていたのが、『東京本社内で営業している散髪屋さんの存在』と『僕の会社の就業規則』との矛盾です。もちろん、ほぼ100%に近い方がたぶんそうであるように、僕も自分の会社の就業規則など読んだことはないですけど、『第25条 定められた就業時間内に、東京本社地下にある散髪屋に行くことは、これを例外として認める。』なんて書いてある確率は非常に低いと思うんです。もちろん、一般的常識が、昼休みに散髪屋さんに行くことを許容するのは容易でしょう。でも、僕の会社内にある散髪屋さんは、-以前はフィットネスルームもあって、これはどういうわけか予約制で就業時間外の予約しか受け付けていなかったので、『腑に落ちる存在』でした。でもこういうご時世で、経費削減の煽りをくらってフィットネスルームはとうの昔になくなりましたが、まだ散髪屋さんは営業を続けています-、昼休みだけ営業しているわけではないんです。当然です。そんなことしたら採算が合わないです。一応、従業員の始業時間より30分くらい早く営業を開始して、夕方は、たしか、従業員の就業時間から少しだけ遅れて閉まるということになっていたと思います。僕は、入社以来、かねがねこの存在が気になっていて、
 「これは、就業時間中に散髪にいってもよい、ということだよな。
  ということは、別に社内でなくて、営業中に外で散髪しても
  よろしい、ということになる。散髪がいいんなら、30分くらい
  の昼寝も堂々としていいのかな。そうなると1時間くらいの
  ゴルフの打ちっぱなしはどうなる。映画館で映画を1本、見る
  のは?おお、身の周りを清潔にするために、という理由で
  『短時間だけ特殊浴場に行く』のはどーなる?いや、これは
  明らかによろしくなさそうだな。でも『散髪』『昼寝』
  『打ちっぱなし』『映画』『特殊浴場』が同じ時間で、という
  前提であったら、明らかによろしくない『特殊浴場でさっぱり』
  と『社内の散髪屋でさっぱり』の境目ってどこなんだろう?」
 とその散髪屋を見るたびに思っていました。ちなみに、どれとは言いませんが、上記の五つのうち、ひとつは僕は実行しちゃったことがあります。いや、二つかな?でも散髪は痕跡が残っちゃうのでしたことはなかったんです。だって、
 「ビ-ハイブさんに行って、そのあと竹山資材さんに行って、
  5時に帰社します。」
 なんて、いかにも慌ただしく出て行って、事務所に戻ったら、青々とした刈り上げの頭になってたりしたら、なんか面倒なことになりそうじゃないですか。
 でも、東京本社の地下には散髪屋さんがあるんです。そして、就業時間中の予約も受け付けているんです。
 
 と、若かった僕は、大人なら軽くやり過ごすどうでもいいことに、矛盾を感じていました。そうこうするうちに、海外転勤の辞令をもらいました。もちろん突然じゃなくて、事前に部長や副部長から打診がありました。当時、僕は、やっとの思いで奇跡的に三宅奈美さんとお付き合いを始められたばかりだったので、打診を断りましたけど、巧妙で執拗な説得にとうとう籠絡されてしまいました。一応その僕の人生を左右した部長、副部長との政治的で、複雑な交渉の要約を記述しておきます。

 「嫌です。」
 「ほうか。ほんなら、会社やめるか、海外いくかどっちかやで。」
 「行きます。」

 辞令が出てから、海外に駐在するまでの僕が、公私にわたってたいへん忙しくなったのは、ご想像に難くないと思います。僕の手帳は、毎日、通常の業務、仕事の引き継ぎ、人事との面談、取引先への挨拶回り、三宅奈美さんとのデート、公私にわたる数次の送別会、だのでこれまでの人生にないくらい、毎日細かな予定でびっしりと埋め尽くされていきました。あまりにも予定が多くて、明日どころか、今日このあとは、どこへ行って、誰と会うのか、毎回いちいち手帳を見ないと記憶できないくらい忙しい日々でした。
 やがて、駐在の日々まで芝目を読む時期になりましたが、僕の忙しさは一向に変わらず、依然として、後任に仕事の引き継ぎをしてから、手帳を見返して、竹山資材に挨拶に行き、また手帳を見返して人事部に行き、という日々でした。当時は、まだ携帯電話も普及していなかったので、どっかで時間が狂ったりすると、机に戻っていろんなところに電話して、その電話してる時間でまた時間がずれたり、と毎日文字通り『余白をゆるさない』スケジュールに疲労困憊していました。

 それは、駐在まですでに一週間をきったある日の午後のことだったと思います。僕は、息も絶え絶えという状態でその日も朝から予定をこなし、さて、と手帳に目をやりました。
 「!!!!」
 信じ難いことに、その時、過去も未来も真黒になった僕の手帳の中で、数行の余白に遭遇したんです。
 「お、あれ??本当かな?」
 当時僕は時間管理が得意じゃなかったので(今でも、ものすごく苦手です。)、自分で自分の予定にあえて空白を設ける、などという高度なことは思いつきもしませんでした。だから、本当に、夕方(確か社内での打ち合わせが入っていたと思います。)まで、3時間もの大量な時間がエアポケットのように真っ白になっていることが俄かには信じられず、なんども反芻しました。
 「いや、確かに、空いている。なるほど。
  これはどちらかというと、自分からではなく、
  社内外の他人に受動的に手帳の余白を
  埋められていたので、こういうことが偶然
  起こったわけだ!」
 と余計な根拠づけをしたうえに、予期せぬ空白の時間を確信し、
 「ふふふ、これぞ『忙中閑有り』って奴だな。」
 などと一人嘯き、おもむろに自分の机に戻って、たまっているさまつな事務処理をやっつけようとしました。しかし、その時、不意に-本当に不意に-『東京本社地下の散髪屋』の存在が、僕の脳裏にフラッシュバックされたのです。今思うと、なんだってそんなことになったのか、悪魔の仕業としか思えません。
 「おお、散髪屋に行こう!忙しくて散髪する
  暇もなかったから、さっぱりして駐在する
  のも悪くない。土日は奈美ちゃんとのデートで
  時間もないしな。だいたいこれだけ俺が忙しいの
  は周りも見て知っているから、たまたま空いた
  時間に散髪をしたって文句を言う人はいまい。」
と、僕は、自分の『素敵な閃き』に満悦し、いそいそと地下に降りていき、客もまばらな、その『就業時間と矛盾した存在のレ-ゾンデ-トルの確認作業』を実行しました。それも下記のような言葉ありきで。
 「ばっさりと、短く。横も後もバリカン入れてください。」

 約1時間後、僕は、『空き時間を有効利用した』という不可視な自己満足と、『たった今髪切ってっきました!』という雄弁に語る可視化された容貌、とを従えて自分の階に戻りました。
 と、海外から帰任したばかりで、僕の業務を管理職として引き継ぐ予定で窓側に座っている大川副部長が、事務所に入ってきた、僕の顔をみた瞬間、遠くから見てもこれ以上に無い、というくらい、たいへん力強く眉間に皺を寄せ微塵も視線をそらさず僕を睨みつけています。怒ると人間はこうなりまする、という典型みたいな表情で、『湯気も出んばかり』に不機嫌な顔をしています。今でも忘れません。
 僕は、困惑しつつも自分の席に戻ろうとして、-戻るにはエレベーターホールから少しづづ大川副部長に直進する形で近づき、副部長の数メートル手前で右折する、ことになります-、歩を進めました。ちょうど、僕を睨みつける副部長に正対しつつ、しかも、距離を縮めていくことになります。
 「ほろ?なに怒ってんだろ?俺け?」
 と思いながら、だんだんと副部長に近づき、さあ、ここで右折、というとき、
 「ああっ!!」
 と僕は、我知らず大声をあげてしまいました。
 そうなんです。その時間帯は、『忙中閑あり』でもなんでもなく、僕が新任副部長を、-初対面ではないにしろ-、取引先に、それも合弁会社パートナーで、しかもその会社の役員に会わせて具体的な業務引き継ぎ打ち合わせをすることになっていたんです。
 単なる『僕の手帳への記入忘れ』だったんです。それを、エレベーターホールから、寸分の罪の意識もなく、しかし、『午前中とはまったく違うさっぱりした刈り上げ頭』で、『怒髪天を衝く勢いで湯気を立てている』副部長に直進して近づいていったわけです。そして、僕は自分がやらかした事を悟った刹那、信じられないくらいの速さで頭を回転させ、さしずめ、パノラマ視現象の如く、適確な言い訳を探しました。
 『ダブルブッキングしちゃいました。』
 『先の打ち合わせが長引きました。』
 『気分が悪くて診療室に行ってました。』
 『父親が倒れました。』
 『人事部に急に呼ばれました。』
 『飼いネコが車にはねられました。』
・・・だめです。何より、僕の髪の毛の状態の雄弁さには勝てません。

 気の毒に、大川副部長は一人で律義に取引先に行かれたそうです。後で取引先の担当者から、さんざんからかわれました。
 「みどりちゃん、おたくの副部長さ、電話してきて、
  『緑が、つかまらないんですけど、わたくし一人で
   伺ってもいいものでしょうか?』って言ってたよ。
  俺に聞かれても知らねえよなあ。何してたの?
  え?副部長との約束ブッチしてさんぱつう!?
  ばかだねええ、がはははは!そら怒るっしょ?
  うへへへへ!」

 その後、大川副部長は凄いスピードで出世され本部長になりました。
 
 結論。
『矛盾しているけど、なんとなく在るものは黙認しましょう。』
『時間が、ふと空いたときは、自分を百回疑っても足りない、
 と思うべし。』
『大川さんに胡麻を摺っておけばよかった、と思っても遅い。』
『髪を思いっきり短くするときは、事前に是非を自分に問うべし。』
『駐在する前にせめて婚約はしとくべし。』
======== 終わり ==========
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はい。

はい。大川さんすでにご引退されてます。でもそのときは本当に肝を冷やしました。あまり洒落のわかる方ではなかったので・・。

No title

他社のケースはわかりませんが、会社の中の散髪屋さんって役員やら部長やらの偉いヒトがよくつかってるんですよね。
みどりさん、やってますね。
でもダイジョブ、もう大川本部長ってヒト会社にいないでしょ。
引退して笑い話ですよ。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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