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ドッグフードもういっちょう!!

「これ、何!!?」

 前回、「大陸的」と表現した性格のさい君が、4,5年前になんなんとするころ、帰宅してまだくつぬぎに佇む僕に突進してきて、眼前にいろどり鮮やかな20CM大・細長の箱を突きつけました。そもそも論として―この言葉、サラリーマンのひとがよく使いますよね。僕、なんとなく好きなんです―、

①帰宅してすぐ、さい君が突進してくる、
②ブツ、をみせて「これ、なに!!?」と声高に言う、

という状況は、反射的に家庭外でなしてはいかん、とされている『コトにおよんだ』証拠をみせつけられる、というふうに考えてしまうのが、我々『オット属』の人情ですよね。僕も例外にもれず、それはそれは、どきんとしました。
 いや、『コトにおよんだ』、自覚・事実があるか、どうか、ということとは別なんです。ほんとに。これは、世の「オット属」には、あまねく理解を得られると思いますし、世の『オクサマ属』には是非理解していただいて、仮にそういう嫌疑にかかわる証拠をつきつけたときに『オット属』が周章狼狽しても、それをもって決定打とはしないでくださいね。お願いします。
 僕は、あまりのできごとに、どきんとした次に、その『もの』を凝視しました。なにしろ眼前にありますから。見ると、淡い地色に前方後円墳みたいなかわいい形のクッキーから、白いクリームがとろりとおいしそうに流れ出ている断面図写真が中央にあって、その周りにはかわいい小さな犬の絵が縦になったり、横になったり配置されてます。ちょっと見ると、多角形でもあるし、『コアラのマーチ』っていうお菓子の外装に似てます。僕は、『コアラのマーチ』はほとんど食しませんが、以前、『おつきあいしましょう!』『ええ、ぜひ!』といって、手をつないだだけで、まだコトにもおよんでいないのに2、3週間後に突然態度が豹変し、電話での会話で、
 「最近なんかあったの?」
 「別に。何にも。」
 「・・・。なんかあったでしょ。」
 「・・・。んー、わたしにとってはいい知らせだけど、
  慧ちゃんにとっては悪いしらせかなあ。」
 「・・・・・・へ?」 
 「私ねえ、結婚するのお。」
って言われた、野村ゆうこさんが『コアラのマーチ』が大好物であられたので、その外装には他人よりも造詣が深いんです。それで、一瞬で『これは「コアラの・」ではないな」と看破しました。そして、やおら眺めると、大きな字で『カルシウムたっぷり!!』とあります。ふうん、これは子ども用のお菓子かな・・・と思いながら、外装を反転させていくと、裏側に小さな小さな文字で、しかし、はっきりと、『ドッグフード』とありました。
 ほほう、最近は犬のえさ業界も(そういう呼び方で正しいのかどうかわかりませんけど)、外装だの栄養だの、それなりに競争がはげしい証だなあ・・・・・、ん?? まてよ、うちは犬なんか飼ってないのに、なんでこんなものがうちに・・・、おや、しかも開封されて中身の小袋が、すくなくとも1,2袋は消費されている状態ではないですか?
 「これは、ドッグフード、犬のえさである。
  しかしなにゆえに?」
 僕が、ようやく靴を脱ぎながら言うと、さい君は西原恵理子さんの漫画みたいに、がっくーん!!と、それこそ心身ともに、きれ~~いにへこみました。
 ええと、重要なことを述べるのを忘れておりましたが、「そもそも論として」、さい君は、外国籍で、あまり日本語ができません。自分の母国語と英語と中国語ができますが、中国語は耳からおぼえているので、そのころは漢字はほとんどだめで、ひらがなが八割くらい読めて、ようやくカタカナをおぼえはじめたところでした。
 そうなんです。さい君は、そのドッグフードをベビーフードだと思って、おいしそうな『トロリの断面図写真』に惹かれ、当時2,3歳だった息子のためにと―しかも、覚えたてのひらがなカタカナで解読できた『カルシウムたっぷり!!』は乳離れした子どもにはたいへん魅力的なアイキャッチではないですか!!―購入したわけです。
 そして、中の小袋が減っている、ということは・・・・・・・・。そう、さい君は、覚えたての日本語が役にたった、という達成感と、息子のために『カルシウム」を『たっぷり!!』確保したという母性の発露、の両方の満足と共に、予定どおり、息子に与えたんだそうです。
 それで、息子の反応は、というと・・・、ばりばりたべて、『もういっちょう!』と(もちろん、まだしゃべられないのでそういう勢いで)食べおわるはじからせがみ、瞬く間に一つ目の小袋をたいらげた、とのことです。食欲旺盛な我が子と、それをいろいろな満足感とともに見つめる母親・・・、これをほほえましい光景と叙述せずしてなんと例えればいいでしょう。
 そして、場面は二袋目開封にうつり、息子は再びばりばりと食べ始めましたが、次の瞬間、このほほえましい光景は突如幕をとじてしまうことになります。
 すなわち、さい君は、あまりにもうまそうに『もういっちょう!』という勢いでむさぼる我が子を見て、そんなにうまいものなのかと、自分もひとつお相伴にあずかった・・・・。
 「で、どうだった?」
 「もんのすご~~~~~く、
  まずかった!!!」

 さい君は、その『異常なまずさ』に衝撃をうけ、直観的に『ベビーフード』を息子からとりあげ、もしや、と思いつつ日本人の帰宅を待つ、という場面でそのほほましい光景は突如幕を閉じたわけです。そして、自分の語学力が役に立ったという達成感、息子に栄養をあたえたという充足感、が大きかっただけに、事実が『我が子に犬のえさをわざわざ購入して食べさしてしまった』ということと判明しただけに、落胆も大きかった、ということであります。
 僕は、悪いとは思いつつ、息子の嗜好への驚きも手伝って、母親としての失格感に打ちのめされているさい君を横にして、大笑いしてしまいました。さい君によれば近くのいつも行くスーパーマーケットで買ったそうですが、置いてある場所からして、類推できるであろう、と聞いたら、曰く、そもそも論として(さい君がそういう日本語をつかったわけではないです)、
 「それからがして、けしからん。」
そうで、なんでも『ヒトの食べ物に連なって、陳列されていた』んだそうです。

 僕は、この話しが、あんまりおもしろいのでいろんな人に話してます。たいていみんな笑いながら、でも『おい緑、おまえが喜んでどうする!』と言いますね。
 けれでも、世の中には、うえにはうえがいて、ある日本語が流暢で日本の会社で働いている若い中国人女性にこの話をしたら、真剣な顔をして、
 「私も、猫の餌を食べましたね。日本にきたばっかし
  のとき、街頭でサンプルを配っていて、お菓子だと
  思って寮に持って帰って、中国人の友人みんなでわ
  けて食べましたね。変な味でした。」
って言われました。

 ちなみに、漏れうかがった話によると、犬や猫は、人間よりずっと化学調味料や保存料に弱いので、生き物の体内に入れるぶんには、巷間にあふれているヒト用の食べものよりは、実はずっと安全で、かつ生産するときも、工場の方々が味見されるそうです。
 僕は、食べてみませんでしたけど、今思うと、味見くらいしてみればよかったかな、と思ったりしてます。
 それと、犬のえさ業界の方は、そもそも論として犬のえさ、ということがよくわかるように印字してください。
 ========おわり=========
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Re: No title

> あのね。おもしろいよ。くるしいよ。
最大の賛辞です。人生の夢を達成したような、阪神が優勝したような気分でございます。ありがとうございます。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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