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絶滅危惧種。

認知』と『事実』は違います。
 何をいまさらわかりきったことを、お思いでしょうが、これが僕の場合意外に思い当たることがあるんです。例えば、ブルマー(そう最近絶滅危惧種とされているあのブルマーです)は、僕にとっての『認知』は長らく、『日本において思春期の女性が特に体育のときに着用を義務付けられていた僕をしてむずむずとさせる衣料』でしたが、たまたま知ってびっくりしたことに、もともとは『さる女性の名前』(Amelia Jenks Bloomerさん)なんだそうです。『事実』はブルーマーさんというアメリカ人の女性がありき、でそれから僕の認知するところの『衣料の名前』になったんです。ですからブルーマーさんにとっては、僕が見聞きするたびにいちいち『むずむず』しているという『認知』はたいへんな人権蹂躙です。ブルーマーさんにしてみれば、毎回、単なる自分の名前、でむずむずされては、『ちがう~~!!』って言いたいでしょう。でも、ブルマ―ときいて、『あるアニメにでてくる登場人物の名前(すなわち、ブルマ)』という認知しかない人にとっては、この事実はあまり違和感はないかもしれません。あのアニメは世界中で売れていますから、僕の認知する『むずむずする衣料』の存在を知らずして、そもそもブルマーというのが実在する人の名前である、という『事実』に『あ、そう』と思う方も世界には少なからずいると類推されます。(ただし、嗜好の問題で、このケースでもむずむずする人はいるかもしれません。蛇足ながら。)

 数年まえ(何年まえかよく覚えてません)、僕は京都に日帰りで遊びに行きました。女性とです。相手は、今のさい君です。よかったです。さい君じゃなかったら何かと面倒なので書きにくいです。

 京都に行った方はご存じだと思いますが、京都市内は交通の便としてバスがよく整備されています。そして、親切なことに駅でバスの路線図、それも日本語以外に英文のものなどもくれます。残念ながらさい君の母国語の路線図はなかったので、僕らは英文の路線図を手に観光を始めました。二人で情報を共有しあったほうが探し当てるのも早いだろう、ということで日本人の僕も英文の路線図使用です。ところで、これまた首肯される方もあると思いますが、京都市内のバスは整備はされているものの、色んな会社、路線があって初心者にはやや複雑です。
 それでも、僕とさい君は、二人で路線図を睨んで、清水寺に行くにはこの路線でここで乗り換えだ、いや、この路線のほうが近いんじゃないか、と議論しては乗り、観光しては、路線図を睨み、しつつ時間を重ねていきました。
 そしてもう夕方近くになって、最後に金閣寺を観て帰ろう、ということになったと思います。僕たちは、あせってました。なぜって、確か金閣寺には観光時間に限りがあって、その時間に間に合うか、ぎりぎりだったんです。あるバス停で、バス待ちの列に並びながら僕らは、さい君の母国語(某南半球に首都のある国)でまだ盛んに議論をしていました。
 「今ここで、ここに行くんである。」
 「じゃあ、ここであってるじゃない。」
 「しかし、来たバスに闇雲に乗ってはいかんのである。」
 「じゃあ、何番ならいいのよ。」
 「だから、今それを調べているのだ。あんたも確認したまい。」
 「・・・まあ来たのに乗ればだいたい、いいんじゃないの?」
 「この国はそういう、だいたい、という基準でものごとは決められて
  おらんですぞ。」
 「あれ?わたしの国が、だいたい、な国だっていうわけ?」
 「だいたい、じゃないですか。」
 僕らの後ろには、若い男性の二人組が、並んでいます。彼らの世間話からはバスへの迷いなど微塵も感じられないので、きっと地元の人たちでしょう。僕らはというと、バスへの迷いにくわえて、些細なことから外交問題までに発展し、悟りの地にありながら、煩悩にあふれた会話の応酬に夢中です。
 「ええ、ひどい。」
 「え、いや、そんなことより何番のバスに・・。」
 「わたしのくにのどこがだいたいなのよ!!」
 「ええと、今度くるのに乗ったら・・・。」
 「ちょっと、わたしのしつもんにこたえなさいよ!」
 その時、うしろの二人組の会話がしばらく途切れていたとに、僕は、二人組の次のような会話が耳に入ってきたことで、初めて気が付きました。
 「英語ちゃうしな・・。中国でもないな。どこやろ?」
 「ほんまやな。けったいな言葉やなあ。どこの言葉や。」
 二人は、50センチまえで、英文の路線図を手にバスを待っているだけにしては、いやに熱く議論する僕らをーそら、まあ微妙とはいえ、お互いの国の文化摩擦まで起こしてるわけですからー完全に『観光にきたマイナーな国の二人の外国人』と『認知』して、しばらく世間話をやめて、僕らの会話に聞き耳をたてていたのです。
 「全然わからんなあ。」
 「こんな言葉あんねんなあ。」
 地元二人組は、目の前のあやしい外国人が日本語を理解しない、という『認知』を幸いに、大きな声で、しゃべりつづけます。さい君は、もちろん地元二人組の会話の意味は全然わかりません。でも『事実は日本人』である僕は、50センチうしろで、しかも自分たちのことを話題にされたら否応なくその内容が耳にはいってきちゃいます。一方で、さい君との議論はむなしく、しかし、熱く堂々巡りを繰り返します。
 「いや、だから、それはもういいであろう。今は金閣寺に行くため
  にですな・・。」
 「だから、来たのに乗ればいいじゃない。」
 「そんな、だいたい、なことしてあさってのところに連れていかれた
  ら金閣寺の観光時間に間に合わなくなってしまいますぞ。」
 「それなら、それでいいじゃない。」
 「いや、金閣はいい、ぜひ近くで見せてあげたいんである。」
背後からは、合いの手のように大きな声、
 「はは、さっきから、なんやキンカク、キンカク言うてへんか?」
 「せやなあ。ははは、キンカクしかわからんな。とにかく、キンカク
  行かはりたいんやろ。キンカク、キンカク、ひゃはははあ。」
僕は、鷹揚なさい君、せまる観光時間、はっきりわからないバス、に加えて真後ろの二人組の会話にも気が散らされて、いらいらしてきました。そこへさらに二人の地元民、
 「おい!ひょっとして!」
 「なに、なんや?」
 「これ、『ドッキリ』ちゃうか?」
 ちがう~~~!!
何言ってんだあんたたち!
 「それって、俺らがはめられてるっ、ゆうことかいな?」
 「せやねん。そのうちそのへんから『ドッキリでしたぁ』ゆうて
  プラカードもった野呂圭介が出てきはんねん。」
 「ははは!あほな!」
 「ははは!そんなわけないわな。」
 そんわけない~~~~!!
 僕は、そのとき、にわかに後ろを振りむいて、
 「ご多忙中大変申し訳ございません。次に来るバスに乗車すれば金閣寺前に行けますか?実は、先刻より精神一到何事か成さざらん、と路線図を解読しておりましたが、どうも疑念が氷解した境地に至らず、しかるに一方で、艱難汝を玉にす、という言の葉もあるとおり、自分たちで解決してこその成果・成長と思っておりましたが、はたして我々の選択は正しいでしょうか?ご教示を願えれば誠に幸甚に思います。」
 と故事成語などをふんだんに盛り込んで、『流暢な日本語』でそれこそ、ふたりを『どっきり』させてやろうかと、よっぽど思いましたが、目の前のバスルート問題と外交問題に忙しく、結局、そのままになってしまいました。

 あの若い二人は覚えてないでしょうが、彼らにとってのその際の『認知』は『なんやしらん、けったいな言葉を大声でしゃべる、外国からきはった男女』をバス停で目撃した、っていうことで終結してしまってるわけです。
 もちろん、『認知』と『事実』の齟齬からは、僕も逃れられるものではないはずですから、彼らのようなことが日常で僕にも起きている、と思うとなんだか、少し楽しいです。

 ところで、なにゆえに、ブルマー(人の名前じゃないほうです)は絶滅しちゃったんでしょう。絶滅後に、ものごころついた年代の方からしたら、逆になんて破廉恥な服装だ、と思われるんでしょうか?

======= 終わり =======
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ブルマー

ありがとうございます。ちなみにジャージーはご存じのようにイングランドの地名から、カ―デイガンは人の名前といわれています。ジャージーは日本語では狭義に『天竺』といいます。不思議ですね。けいた

No title

ブルマー。わたしの田舎では「ブルーマ」と言われていました。ちなみに体育のとき着る運動着は「ジャッシー」(ジャージのことなんでしょうね)と。
私は高校は地元を離れて下宿していたのですが、ある日私が「ああ、今日体育あるのにジャッシーわすれちゃった」とつぶやくと、親しい友人が「なに?それ新手の珍獣?」と。
そこから話を進めていくと「ブルーマ」「ジャッシー」が超方言英語と知り愕然としたものです。

なお様

なお様 コメントありがとう。記憶によると、キンカク寺には行きついたものの時間がすぎていた、見られなかった、と思います。それで後日もう一度京都に行って観たような記憶があります。つまりは、観光の中身より、『ドッキリちゃうか!』と超至近距離で言われた、ことのほうが記憶に鮮明に残ってますです。
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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