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オプショナルなプレイ。

「ご不幸のあった方になんてことを言うのだ。」

 電話を終えた僕に向かって、さい君が彼女の母国語で言いました。僕は、彼女の言わんとしていることが一瞬理解できず、なんか責めに負うような失礼なことを言ったかな?と自分の電話での発言を反芻しみて、(ほう、なるほど。)と思い、電話の相手ー親友山案山子くん(たまたまなんですけど、これも相手は山案山子くんだったんですね。)ーには悪いけど、笑ってしまいました。
 その電話は、山案山子家にご不幸があって、僕と山案山子との間で交わされた電話でした。親しき仲にも礼儀あり、当時すでに社会人になっていた僕は、いかな20数年来の友人といえども、礼を失しないように厳かに会話をし、
 「ご愁傷さまでした。」
 という言葉を最後に電話を切りました。そこへ電話を横で聞いていたさい君の冒頭の発言です。
 「・・・?・・・!!!だはは!!」
 さい君は、ご不幸のあった山案山子に僕が、
 「この度は、ゴチソウサマでした。」
 と言って電話を切ったと思い、ついでになにかのお礼をいうのもいいが、機会がそぐわんであろう、と僕を責めたわけです。
 「いや、これは、ゴチソウサマではなくゴシュウショウサマ
という悼む気持ちを表す、発音は似ているが、別の日本語
である。」
 と僕が説明すると、
 「おーー。そか。わたしはてっきりけいたが、なんか奢っ
  てもらったことを、ついでにお礼したのかと思って、失
  礼なおとこだなあ、と。そか。」
 と納得していました。さい君は『そうか』の発音が日本人よりすこし短いうえに、使用頻度が多いです。
 何度か触れているように、僕のさい君は、モンゴロイド系某南半球の国パスポート保持者です。その国の母国語、と英語、それと留学して覚えた北京語、それから僕と結婚してから学習しはじめた日本語が少し、できます。だから、上記のような誤解はままあることです。ゴチソウサマの件は、僕の説明で落着しました。ただし、さい君は、『ご愁傷様』は学習できてないと思います。それはそうですよね。自分の立場にあてはめてみても『外国語で電話でお悔やみを申し上げる』って、かなり親しんだ外国語でも簡単に出てこないです。
 
 お悔やみ事件のように、『一件落着』する誤解がある一方で、『誤解のまま定着しちゃう』こともあります。つまり、間違いっていう理解はありつつも、そのほうが便利だから、という空気でずるずると間違いが『家庭内用語として定着』してしまう、という事例です。

 ある日、さい君は、外出する僕についでに買い物をしてきたまえ、と言いだしました。よくあることです。
 「ええと、フジ用の牛乳と、けいた用の無脂肪乳と、
  バナナと、バナナは余計に買わないでね、けいたは
  頼んだ以上の数をよく買ってくるから・・」
 「うん、うん、わかってるよ、それから?」
 「それと、りんごと、ねぎと、レタスと、あ、ねぎは
  あれね、長いほうでチンネギのほうね、それと・・
  ・・」
 「うん、うん、うん、、え?え?ちょっと。」
 「なによ。メモしてあるから大丈夫。余計なもの買わな
  いでよ。はい、メモ。」
 「いや、そうじゃなくて、チンネギ、って・・何?」
 なんか、『チンネギ』っていきなりそれだけ聞くと、『バター犬』のようで、あやしげなオプショナルなプレイ、のような音感ではありませんか!?
 「チンネギよ。たまねぎじゃなくて長いねぎだけど、
チンネギのほう、みればわかるでしょ?」
 いや、そのようなオプショナルな、見ればわかるネギって???
 「それに包装にも書いてあるし。」
 ええ、書いてある!いったいどんなオプショナルな絵のパッケージがスーパーに並べてあるのだ、と僕の『チンネギ』に対する疑問と期待はますます膨らみます。専業主婦の行動範囲には、われわれ凡百のサラリーマンには知り得ない未知の分野がまだまだあるのか、チンネギ。
 「もう、日本人のくせになんでわかんないの?」
 おお、チンネギは日本人主婦にはノーマルな存在なのか!わくわくさせるではないか、チンネギ。
 「漢字で書くと、こうっ!」
 なんで私が、と苛立ちながらさい君が書いた字を見て、僕は大きく納得するとともに、怪しげな妄想も瞬時にして雲散霧消してしまいました。すなわち、さい君の書いた字は、
 「青」
 以上。
 『青』は、北京語では『QIN』と発音します。身近なところでは、青島とかいて『QINDAO』チンタオ、ですね。あのチンタオビールで有名なチンタオです。さい君は、
 ・仮名は読める。
 ・漢字はほとんど読めない。
 (北京語は主に耳とアルファベットで習得したらしいので。)
 ・でも簡単な漢字は覚えている。例えば、『小』『大』『北』『青』・・・。
 それで、さい君の心の中では、すでに、『青ねぎ』と書いて『QIN-NEGI』と読むことが学習・反復かつ熟成されていたんです。
 「これは、日本語では『あおネギ』である。」
 「おーー。そか。」
 と一応誤解を解いた上で、なあんだ、と思いつつ、無事にチンネギを購入して帰宅しました。

 しかし、それ以来、我が家では違和感もなく、この言葉が定着して今にいたっています。
 だから、もし、『路上で帰宅途中に買い物を依頼されたふうのサラリーマン』が、携帯電話に向かって、いきなり、
 「はい、チンネギのほうね!」
と言っているのを目撃しても、どうか不審者扱いはしないでください。

終わり


 
 
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買い物スタイル

とよす様 いつもお読みいただきありがとうございます。 さい君と買い物にも行きます。さい君はちょっとでも興味があると目におさめずにおれないうえに、自称「ケチ」、その実体は「まがうことなきケチ」なので散々時間かけて、全然買いません。いわば「目肥し目的百均結果型」であります。僕は、買う物が決まって始めて買い物にでかけて、目的に直行して直帰する「目的先行直行直帰型」なので、つきあうのは疲れます。村上春樹さんの文に確か「男はただのCASH & CARRYではないのだ。」という文章があって、膝を打ったことがございます。慧太

No title

けいたさんは奥さんの依頼により買い物にいっているのですね。私は荷物もちとしてですが一緒に行っています。パートの先輩の家庭の話を聞いてきて私行かせようとしているみたいですが・・・

お恥ずかしい

いえいえ、おはずかしい。英語はたしかに僕よりはるかにうまいですが、北京語は使わないから忘れてきた、ってむくんでます。それに、家でも日本語を使わないので全然うまくならない、ってむくれてます。いまだに僕が帰宅すると、「タダイマー」って言ってます。クレヨンしんちゃんみたいだなあ、と思いつつ、僕もそういうの嫌いじゃないので、そのままにしてます。

No title

さいくん4ヶ国語のマルチリンガルなんですね。
なかなかやりますね。

チンネギはなるほど、と。
よくよく考えてみれば他にもいろいろありそうな。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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