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極まりない、でしょ?

  僕のさい君は、南半球生まれ育ちの、モンゴロイドです。つまり、デオキシリボ核酸方面からの説明でいうと、彼女の生まれ育った国の大多数を占める人種とさい君の人種は全く違う―要は移民の子、ですね。さい君の生まれ育った国は良く言えば『おおらか極まりない国』で悪くいうと『いい加減極まりない国』、どちらにしても極まりない国です。そしてさい君の性格や属性にもその『極まりなさ』が見え隠れして僕を驚かせることがしばしばあります。
 僕が、さい君に初めて会ったのは、たぶん、僕が日本からその国へ出張に行ったときだと思います。思います、というくらいだから正確にはよく覚えてません。それから、僕は、なんだか流れとしてはいやだなあ、と思っていたら、その流れのとおりに、20代でその国に転勤になりました。そして、三宅奈美さんと赤道を隔てて壮大な遠距離恋愛を余儀なくされましたが、そんなものはうまくいくはずもなく、振られてしまいました。その件は今回は関係ないです。また、話としても、『要はそんな遠いのにうまくいくわけがない』というだけで説明が足る面白くもなんともない話なのでこれからも触れません。・・三宅さん、どうしてるかな?
 さい君は僕の所属する会社の『極まりない国の首都の支店』の社員でしたが、僕は、現地にある合弁工場への直接出向だったので、僕の職場は首都から30キロくらい離れてました。僕は、週に1回早朝、現地語の学習のために支店に通うか、今考えても意味のない支店の会議に呼び出されるくらいで、とくに接点はありませんでした。でも、そのうち、なんだか、支店の同じ所属営業部門の現地人スタッフ達(15人くらいいましたかね)と仲好くなって、日本人は僕だけ、あとは支店の現地人スタッフ、なんていうメンバーで食事にいったりするようになりました。今思うとお財布かわりだったような気もします、いや、そうに違いないですけど。それで、みんなでわいわい話していたら、そのうちのひとりであった、さい君が、ある時、
 「今度の水曜は私の誕生日である。」
 と言いだしました。もちろんその時点では、さい君と僕は、特別な関係にあったわけではなく、ましてや恋愛関係などとはほど遠い関係でした。でも、話しの流れで『普通なんか祝うだろう?』という空気になって、たしか彼女の誕生日と称する日に、食事をおごったか、なんかあげたかした、と思います。
 それはいいんです。経済的なインパクトとしても、僕とさい君とのなれそめの一部としても大したことじゃないですから。
 ところで、彼の国では、日本と違って―そういう習慣の国は多いらしいですが―誕生日の場合、周りがプレゼントをあげたりするんじゃなくて、誕生日の当人がみんなにお菓子を配るとか、食事を奢るとか、というのが通常です。余談ながら(そんなこと言いだしたらこのブログ自体が徹頭徹尾、余談じゃないのか、っていうことになっちゃいますが)、僕はこの習慣は合理的でいいなあ、と思いました。なぜって、誕生日の当人がみずから行動を起こさなきゃいけないので、周りは誰の誕生日がいついつで、なんて覚えておく必要はないし、当人がふるまうのがいやなら自分の誕生日をあまり開示しなきゃいいわけですからね。

 以前、僕は妙ちくりんだなあ、という性格の課長補佐の部下になって、それがどうも僕にとってだけではなくて、客観的にも変な人らしく、僕以外の課員もみんな閉口してました。何しろ自分の価値観を押し付ける人で、僕は昼ごはんを課員と一緒に食べないのはけしからん、と説教もされましたし、その頃僕は営業でしたが、20時に事務所を出てお客さんのところに行くのに、
 「今から外出しますが、もう事務所には戻り
  ませんので直帰します。」
 て言わないといけないような人でした。20時に1時間以上かかるところに外出するのに会社に戻るわけないですよね。だって、行って取引先の事務所にタッチして戻ってくるだけでも、22時すぎちゃうじゃないですか?でも言わないと怒るんです。それで、その人が、課長になった年に、唐突に課員全員の誕生日に家にお花を送りつけ始め、誕生日がまだの人間をして恐慌をきたす、ようになりました。しかもその課長の誕生日は、年度末に近く、
 「こりゃあ、出口課長の誕生日にはなんかやらん
  わけにはいかんなあ・・・。」
 と、花が家に予想どおり届く度に課員はおのがじし深く溜息をついていました。

 そういう経験があったせいもあって、その国の『誕生日に当人がふるまう』という習慣には痛く感心していました。もちろん、さい君の誕生日には、上記のような経緯もあって、僕が個人的にお祝いをしたわけですが。
 ところが、です。お祝いをした2日後の金曜日、たまたま用あり、夕方支店に寄りました。すると妙に賑やかで、現地社員のひとりが僕をみつけると、
 「ミドリサン、今日は、ユウ(僕のさい君)とヘルマンの
  誕生日だから、ケーキもらって行きなさいよ。」
 って嬉しそうにいいます。へえ、誕生日が近いから一緒にケーキを購入したんだ、なるほどこれも合理的だな。 と感心して、
 「でも、ユウの誕生日は一昨日っしょ?」
 とその現地社員にいうと、
 「違うよ、あのふたりはね、誕生日が一緒なんだよ!
だからみんな覚えてるから損だよね、へへ。」
 へへ、って?だっておとといユウさんには俺は個人的にはお祝いしたよ。なんか変だなあ。と、そこへちょうど 帰宅しようとするユウさん、現さい君とばったり。
 「あ、ミドリサン、お菓子もらった?じゃあねえ。」
 「おいおい、誕生日今日じゃないでしょ?」
 「ああ、う~~んと、今日!今説明するとややこしいから、
  じゃあねえ。」
 じゃあねえ、ってすでにややこしいではないですか!その時は釈然としないままなんとなく、過ぎました。
 それから、しばらくたって、さい君と頻繁に会ったり電話するようになって、ある時、電話で、
 「そういえば、去年のユウの自称誕生日のとき、ユウの
  誕生日の2日後にユウの誕生日と称して事務所でお菓子
  を配っておったが、あれはどういうことであるか?どっ
  ちが正しいんであろう。説明したまい。」
 と質問したら、
 「ああ、あれね。そか。あれはね、両方。」
 長い釈明を待っていた僕は、『両方正しい、以上。』で返答されて、ますます納得がいきません。
 「いや、あのね、両方って、誕生日っていうのは生まれた
  日なんだから・・」
 とやや気色ばんで妥当としか言いようのない説明を試みる僕を、あくび半分で制して、
 「両方正しいよ。原因は男の子を重んじるうちの
  親にあるけどね。」
 と面倒くさそうに説明を始めました。曰く、ミドリサンにはひとつしか教えるつもりはなかったけど、知っちゃったからには、説明するか、みたいに密約がばれた官僚みたいに悪ぶれるふうもなく、しかし、官僚のように面倒くさそうに、さらっと説明してくれた経緯は以下のとおりです。
 実は、『生まれた日』は、ミドリさんにお祝いしもらった日で正しい。でも、親が、その『私の生まれた日』を20年以上間違えて記憶していて(!!)、あるとき家の中で、昔の記録がでてきて、『あら、あんたが生まれたのは【あんたの誕生日】の二日前だ。ママ記憶違いしてたみたいね。』ってことが判明したそうです。機密文書並みの事実隠蔽、ではなく、年金管理並みのいい加減極まりない話しですよね。それで、それまでの友達には、生まれた日でもなんでもない『記憶違い』の誕生日がIN PUTされていて(もちろん自分自身や家族にも)、変更して歩くのも面倒だから、間違いで通す、でも正しい日が判明して以降に出会った人には『本当にうまれた日を誕生日ということにする』ことに決めたんだそうです。そのいい加減極まりない記憶の仕方の理由がさい君にいわせると、女の子が生まれた、という事実が、男子を熱望する家族の文化をして落胆せしめ、 
 「女の子か。誕生日なんかどうでもいいや、と、
  『誕生自体が歓迎されなかった』結果ね。」
 だそうです。だから、未だに学生時代の友人は『生まれた日じゃない誕生日』にお祝いを言ってくれて、会社の同僚にも『生まれた日じゃない誕生日』にお菓子をくばっている、そうです。でも、ミドリさんは、『本当に生まれた日』が判明したあとに出会ったから、『本当に生まれた日を誕生日として』教えたのに、あなたは『生まれた日じゃない誕生日』も知ってしまったわね、面倒くさいなあ、ってことらしいです。
 なんだか、この国らしい、おおらかな話しだなあ、と思って、そういや日本でも昔はそういう話しがあったって聞いたな、って思いました。でも、それだけではすまなかったのです。

 それから、あれよあれよという間に、僕はさい君と結婚するようになり―いまだに『あれよあれよ感』は払拭できませんが。結婚に関してはそういう人って結構いますよね。何を隠そう僕の父も『結婚なんていい加減よ。おらあ、今だにたまになんでこの女が俺の横に寝てるんだろう?って思うことがあるもんなあ。』と例によって選りに選って息子の僕に太平楽をつぶやいたりしてます―、いろいろとややこしい書類を提出するようになりました。国際結婚をしたことがある方はお分かりになると思いますが、国際結婚の手続きは複雑です。『外国人登録証』と『婚姻届け』の管轄は市役所ですが、この二つは別の窓口で、市役所での婚姻届けの受理までにまず証明しなけれないけないことがあって、やっと市役所が婚姻届を受理してくれても、そのことと『配偶者ビザ』とは殆んど関係がなく、こちらは法務局の入国管理局の管轄で、ここにまた膨大な書類や写真を提出して数か月の審査を待たなければいけません。詳細は別の機会にまた書くとして(でもあんまりおもしろくないです。)、もちろん、婚姻ビザ取得と永住権と、日本国籍取得、とはまた別の手続きが必要になります。
 ともあれ、僕はさい君と何度も、市役所や、さい君の国の在日本大使館や、入国管理局にそれぞれある時は一緒に、ある時は手分けして、仕事の合間をみながら(これは簡単でした。仕事はできない奴と思われているので、なんとなく行方不明になっても差し支えなかったです)、複数回通い、何種類もの書類を作成しました。
 日本で結婚するので、英文と併記されている書類が殆んどとはいえ、勢い僕が書くことが多くなります。結婚式をおえて、さあ、その手続きをはじめよう、とパスポートやら、源泉徴収書のコピーやら、親類の住所に電話番号やら、大使館からのコピーやら、2人で映っているスナップ写真やら、会社の人事部に依頼してもらった在職証明やら(本当にこれら、いえこれ以上のものがいるんです)で机の上がいっぱいになったとき、さい君から、妥当極まりない、しかし、やや不可解な発言がありました。
 「あ、そうそう、私の誕生日はパスポートどおりに
  してね。気をつけてね。」
 「???うん、だから、『本当にうまれた日』でしょ?」
 『我が目を疑う』という手垢のついた表現がありますが、この言葉は、彼女のパスポートをめくった時の僕のためになくして一体、だれのためにあるんでしょう。
 そこには、『本当に生まれた誕生日』でもなく、その2日後の『記憶違いによって20年間信じられていた誕生日』でもなく、その2日から3カ月以上遅い日付がパスポートに誕生日として印字されてるじゃないですか!これは確かに、注意を必要とすることだけど、『気をつけてね』っていうのはやや気軽すぎやしませんか?
 「!??? これってどういう・・・」
 と質問も途切れがちな夫に対して、さい君は、
 「とにかく書類上はその日ね。」
 て『ハンカチ忘れてるよ』くらいの軽いテンションで念押しします。でもこれじゃあ、納得いきません。いきませんよね。いかないのが普通のニンジョーってもんですよね。
 「・・あのね、ユウ。ユウはじゃあさ、誕生日はさ・・」
 「うん、みっつ。」
 気軽極まりない、です!うん、みっつって、普通ホモ・サピエンスのみならず、たいていの動物はひとつじゃないですか!!
 それでまた、かつてのように真相究明に燃える男と、溜息まじりに面倒くさそうに、かつ官僚答弁調に説明する女の問答がはじまります。結果は・・・、
 なんでも、簡潔に言うと、

 ①生まれた日は、確かに記録がある。
 ②しかし、母親のせいで2日違いに記録していた。
 ③一方、日本でいう出生届は、3か月ほったらかしにされてた。

 と、いうことなんだそうです。だから、『学生時代の友達が知っている誕生日』と『家族が祝ってくれる本当にうまれた日』と『公式の記録上の誕生日』で、
 「うん、みっつ。」
 になるそうです。いい加減極まりないですよね。書類を埋めるこっちはたまったもんじゃないです。それで、なんで出生届けを3カ月もおくらせていたかというと、これもまた、
 「女の子か。誕生日なんかどうでもいいや、と
  『誕生自体が歓迎されなかった』結果ね。」
 だそうで、赤ちゃんが女の子であったことが『出生届を提出にいく両親のモチベーションでさえ下げた』んだそうです。いや、それとこれとは違うんじゃ、と訝る僕に、
 「そうよ。だから、わたしはみっつだけど、お姉
  さんはふたりとも誕生日はふたつ。でもお兄ち
  ゃんと弟はいっこだけなんだなあ。」
 と平然と言ってます。いや、いまどきほとんどの人が『いっこだけなんだなあ』ではないですか?

 晴れて夫婦となった僕らの間では、『本当にうまれた日』をお祝いすることにしてます。でも『記憶違いの日』には、友人からいっぱいお祝いのメールがくるし、『うまれて3カ月後のパスポート上の誕生日』にはいろんなダイレクトメールがきます。

 男子尊重、はいいけど、『あら、記憶違い』、いわんや『女か。あああ。出生届はまだいいや。』って、いろんな意味で『極まりない』ですよね。
 ええと、それと、課長から誕生日に家に黙って花束を送られても『困惑極まりない』です。
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いつもありがとうございます。

中央線会長様 毎回ありがとうございます。さいくんは、最近心身ともに太っ腹になってきて、すこし困ってます。だいじょうぶです。さいくんは日本語が読めませんから。

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うーむ、おおらか。ところ変われば、ですね。
誕生日がみっつあるのはやりすぎですが、それを許容する奥さんの太っ腹度も大したものです。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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