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ご無体な。

 「ちょっと!これは大事なことなの。絶対に怒らないから、本当のことを言って!」

 その日は休日で、さい君は朝から電車で数駅の繁華街に出かけておりました。
 僕と、息子は家でくつろいでいました。
 と、そこへさい君から、僕の携帯電話に突然電話があり、いきなり冒頭のようなことを言われたわけです。
 「へ?なにそれ?」
 「いい?これはとっても大切なことだから、それに、怒らないから、本当のことを答えて!」
 だから、どうしたんだよ。
 「はあ。」
 「ケイタ、あんたね、最近、携帯でアダルトサイト見た?」
 「え?」
 「見たの、見てないの!?」
 さい君はいやに真剣で、かつ高圧的な態度です。困ったなあ、まだ日の高いさなかになんでそんなことに対応しなきゃいけないんだろう。
 「なんで?」
 「YESかNOか聞いてるのよ!見たの!?」
 「だから、なんで?」
 実は、見たんであります。
 「あのね、そういう閲覧履歴があるの、それもここ最近!」
 え、でも・・
 「で、でもさ、それってユウの携帯電話の履歴でしょ?」
 夫は、まだ最悪の事態を回避しようと試みます。うちには、僕、さい君、息子用、と三台の携帯電話があります。このことのあった当時、まだ12歳だった息子には携帯電話をもたせよう、という意図はそもそも僕ら夫婦にはなかったんですけど、たまたま、携帯電話端末の三台目を無料で入手する機会があって、息子がひとりで遠出するときに、迷子にならないように、とその携帯電話をもたせてから、『なし崩し的に』息子が三台目を使用しています。 
 でも、そういうものにからっきし弱いながら、僕の理解では、それぞれの端末からアクセスした履歴は、ほかの端末からは見られないんじゃ?
 「そう、私の!でもね、履歴はわたしが見られることになってるの!」
 「え、なんで?だって違う端末だから、・・」
 「それは今、どうでもいいの!とにかく見られるのよ!」
 ますますシリアス、かつ威圧的にさい君は続けます。
 「それでね、ここ最近にうちの誰かが、そういうサイトを見た形跡があるの、ケイタじゃなかったら、フジしかいない、だから大事なことだって言ってるのよ!」
 それ、本当かな、違う端末なのに。でも、なるほど、12歳の少年がアダルトサイトにアクセスしたかどうか、という問題は家庭的には確かに看過できない問題ではあります。
 けれども・・・・
 「見たの、見ないの?」
 「・・・・・・」
 「怒らないから!」
 これはやはり、本当のことを言ったほうがいいなあ、
 「みた・・・」
 タッチーなことなので、ちょっと離れたところでひとり遊びをしている息子に聞こえないように、声を潜めて、真剣に、かつ端的に白状します。
 「いつ?」 
 僕は観念して、そして、さい君の怒らないから、という趣旨に頼んで、洗い浚い正直に答えることにしました。
 「二週間・・くらい・・前。」
 「ふうん。」
 なにやらさい君は考え込んでいます。
 ここは真相解明のために『どういうサイトを閲覧したか』も白状したほうがいいのかな。はて、『人妻・巨乳』というワードで検索したことも言うべきかしらん。
 僕が生来の小心者ぶりを如何なく発揮し逡巡していると、さい君は、
 「そう、わかった。」
 と言うなり、電話を切ってしまいました。

 数時間後、僕は、緊張した面持ちで、-いろんな意味においてです。-帰宅したさい君を出迎えました。
 さい君は僕を、息子から離れた部屋に連れ出します。
 「いい?」
 「うん。」
 「これ、ケイタが見たサイト?」
 なるほど、どういう仕組みなんでしょうか、さい君の携帯の画面には、それらしいタイトルが履歴として並んでいます。
 僕とさい君は、ふたり黙って真剣に、その履歴を追っていきました。
 
 『おっぱい・・』
 『おっぱい・・』
 ん?おっぱい??なんだか、いやにけれん味のないストレートな検索の仕方だな・・・・。
 続きます。
 『おっぱい・・』
 『おっぱい・・』
 『おっぱいポロリ』
 ポ・・・?
 『おっぱい・・』
 『おっぱい・・』
 『ラッスンゴレライ』
 ?? ラッス・・・・
 『おっぱい・・』
 『おっぱい・・』
 『進撃の巨人』
 !!!
 『おっぱい・・・』
 『おっぱい・・・』
 ははあん、これは俺の履歴じゃないなあ、あいつだ。
 なにしろこっちは『進撃の巨人』じゃなくて『人妻で巨乳』だからな。
 配偶者としての虚脱感にも似た安心感と、父親としての一丁前な責任感、が僕の心に同時に押し寄せてきて、奇妙な心持になりました。
 なんだ、ゲロする必要なんてなかったじゃないか・・・。
 さて、どうやってさい君に、これは旦那の仕業ではなく、息子の所業である、と説明しよう。
 と僕が、八割型自己保身のために考え迷っていると、どうも、自分のことを言っているらしい、とうすうす感づいていた息子がふたりのもとにやってきて、簡単に自白しました。
 曰く、
 「ママが男の子は女性の裸や、おっぱいに興味を持ち始める時期がある、と言ってたから、そういうものかと思って、検索してみたけど、別にどうも思わなかった。反省してるし、恥ずかしいからこの話題はもうやめて!」
 ということでした。
 僕は一応、だめじゃないか、とは言いましたが、その実内心は、ま、いまどき、男の子ならいつかは通る道だな、とも思ったわけであります。
 
 ・・・・ところで、僕にとっては、肝心の『絶対に怒らないから!』というさい君の口約束ですが、これがまるで履行されずに、
 「あなたは、妻帯者でありながら、私に隠れてなんでアダルトサイトなんか見るんだ!」
 と激しく叱責され、挙句、暫く口を聞いてくれませんでした。
 『見た』と言うだけでこういう仕打ちだから、『人妻・巨乳』で検索した、なんて委細が露見したらたいへんなことになっていたところです。
 ご無体な。
 世のご主人様方も気をつけましょう。

===終わり===

 

 
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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