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3億円当たりました。

 最近、世間にはいろいろな『怪しい話』が溢れていますけど、僕に言わせると、その殆どが『いかにも』という代物で、そんな話に引っかかる脇の甘い人がいるのは不思議だな、というのが正直な感想です。

 ところで、僕のさい君は、わりと疑り深い性格です。よく言うと、慎重な、ということです。
 例えば、外食しても会計の際に、レシートを熟読して、注文内容と一致しているかどうか、を『本当かな』とチェックするのが常です。
 時として、スーパーマーケットの伝票なども熱心にチェックしています。
 しかし、さい君がこういうことをするのには、一応彼女なりの根拠があって、さい君の国では、レジの打ち間違いや、もっとひどいのになると、レストランなどで『意図的に』頼んでもいないものをレジで打ち込んで『ボッタクル』というケースがあるから、です。
 「おい、だいじょうぶだよ、ここは日本だから、そういうことはないんである。」
 と、僕は半ばさい君の大仰な猜疑心を鼻で笑いつつ、諌めておりました。
 ところが、どうして、どうして、僕も彼女のそういう習慣に付き合うようになって、へえ、と感心したんですけど、結構レジの打ち間違いってあるんですよね。
 スーパーマーケットでは、セール品を通常の価格で打ち込んだミスが何度かありました。『ガリガリ君 セール品47円』のはずなのに『ガリガリ君 64円』と通常価格で打ち込まれてたりするんです。その都度さい君は、誤りを指摘して、-そこはさすがに世界に冠たる日本のサービス業なので-、それで、お詫びとともに、(金額の多寡に関係なく)丁寧な対応で返金してくれます。
 それと、これも実際にあったことなんですけど、さい君と二人で家の近所の居酒屋で簡単な晩御飯代わりの食事をしたときのことです。
 帰宅後いつものようにさい君はレジ伝票をチェックしていて、何としたことか『タバコ二点』と明細の冒頭に印字されているのを発見しました。
 「ほら、日本でも、ボッタクリあるじゃない!?」
 さい君は大戦果発表の如く、叫びました。
 確かに、僕もさい君もタバコは吸いません。嫌いです。なのに、そんなことを間違って『お通し二点』みたいに、きっちりと人数分打ち間違えますかね??
 しかも、-僕は数百円くらい、放っておいてもいいや、と思ったんですけど、さい君はそういうのは金額の問題ではなくて、抗議しないと気持ちがすまないみたいなんです。-、僕がさい君の指示で、恐る恐る(忙しいのにそんな数百円ごときで何だ!どこに証拠があるんだ!って店側に機嫌を悪くされたら嫌だな、と思ったりしたので。)その居酒屋に電話をかけて、じつは、先ほど食事をした者です、そういう習慣がないので、タバコをお願いするなんてあり得ないんですけど、本当です、かくかくしかじか・・・・と低姿勢で説明したら、なんと電話に出た店員はまるで予期していかのように、
 「あ、入り口近くにおられたお二人ですね!確かに、おタバコを吸われていませんでしたね、申し訳ございません、当方のミスでございます!!」
 と、一気に澱みなく謝罪しました。
 このときは、さすがの僕も『なんだこの慣れ切った爽やかな対応は、なんだかかえって怪しいぞ。日本はたいてい公正かつ明朗会計だと思っていたけど、これは俺の思い込みで、さい君の言うとおり、日本でも疑ってかかったほうがいいのかも。これは日本も商習慣上のモラルが崩れてきているのかな?』と、思わざるを得ませんでした・・・・・。

 ところで、もう数年前のこと、『そういうもの』がまだ一般には知られていなかった頃のことです。
 休日だったと思います。
 僕は確かテレビを見ていました。さい君は僕の傍らで黙ってパソコンに向かっていました。
 と突如、さい君が大声をあげたんです。

 「あた、あた、あたった!」
 「は?」
 「当たった、当たった!」
 「何が?」
 「300万ドル!!」
 「?」
 「300万ドル、当たったのよ!」
 「・・・・」
 
 尋常でない興奮ぶりです。300万ドルといえば『だいたいさんおくえん』です。僕は、いったいさい君の言わんとしていることが何なのか、一瞬理解できませんでした。
 『当たった』って、そもそも彼女が応募していた何かが当たったっていうこと?
 それで、その賞金が3億円ということ?

 「何言ってるの?」
 「300万ドル!!!」
 「だから、なんだよ、それ?」
 「これこれ!」

 さい君は、たいそうエキサイトしながら、パソコンの画面を指差しています。
 「どれどれ・・・・」
 そもそも『当たったという事実』よりも、『賞金3億円という現実離れした金額』が、逆に僕を冷静にさせていました。
 そんなこと、起こりうるはずがないじゃんか。
  見ると、そこに、彼女宛の英文の長いメールが表示されています。これがもし、僕宛のメールだったら、苦手な英文だから、たぶん、読むことすらしなかったでしょう。しかし、さい君は英語が達者なので(このときの、さい君の心情を代弁するとしたら『幸運なことに』ですが)精読できてしまった、と見えます。
 僕が時間をかけてやっとのこと解読したそのメールの内容をかいつまんで言うと下記のようなことが書いてありました。

 *我々は、ITベンチャー企業、XX社であります。
 *このたび、サイバースペース内に溢れている超巨大情報から、無作為に抽出した対象にあなた(さい君ですね。)が抽出されました。
 *おめでとうございます。当選です。
 *300万ドルあげちゃいます。
 *我々は、信頼できる企業です。A社、B社、C社、D社・・・との合弁会社も持っております。
 *ついては、300万ドルをあなたに送金するために・・・・
 *本当です。

 とあり、『A社、B社、C社、D社・・・』のところには、日本のものも含め世界に名だたる有名企業名が羅列されていました。
 本当かな?
 「なんだこれ?ユウはなんか、ここの懸賞にでも応募したの?」
 「そんなことしてない、けど、300万ドルよ!」
 「じゃあ、おかしいんじゃないの?」
 「いや、サイバースペース内の巨大データから無作為に抽出した、ってあるでしょ、それなら私のアドレスがピックアップされる可能性あるでしょ?ああ、300万ドル!!
 「いや、あのさ、そんな金額が簡単に当たるわけないじゃない?」
 「当たったのよ!300万ドル!!」

 僕には、全然実感がありません。しかし、さい君は手放しで喜んでいて、いまにも自家用ジェット機でも購入しそうな勢いです。僕は、普段はあんなに疑り深くて、慎重なさい君が、なんで、300万ドルになると無防備に信じてしまうのか、全然理解できませんでした。

 「あのさ、こんな話、眉唾じゃない?」
 「なんで?」
 「だって、金額がでかすぎるじゃない?」
 「金額がでかいと、なんでおかしいのよ。」
 「え??いや、だって、300万ドルだよ?」
 「そう!300万ドルよ!ケイタ!!」
 「・・・・・・。」

 どうも会話に齟齬があります。
 このままでは、こんなのあり得ないよと、さい君を説得することができそうもありません。
 そこで、僕は、メール文にある、ある日本の超有名企業の一社に実際に電話をして、メールを送ってきた会社と本当に合弁事業をしているのか尋ねてみることにしました。
 すると、代表電話から回してもらった男性の社員の方が、
 「私が担当というわけではないんですが・・・・」
 と言いつつ、しかし、非常に丁寧に、しかも明確に教えてくれました。
 曰く、

  *そういう会社と、わが社は合弁などしていない。
  *それは最近新たに現れた『フィッシング詐欺』というものと思われる。
  *手口は当選を餌に銀行口座など個人情報を取得するもの。
  *詐欺なので、相手にしてはいけない。
  *本当です。

 ということでした。確かに、合弁もしていなければ、メール送付者が詐欺犯罪者であれば『担当というわけではない』ですよね。でも、とても親切に教えてくれました。
 ううむ、日本人のモラルはまだ崩れていないじゃないか、僕は、感心しつつ、お礼を言って、電話を切ると、さい君に、メールの文言は嘘っぱちで、しかも、これは新手の詐欺で『フィッシング詐欺』というもの(この当時はまだそういう言葉が世間に広まっておらず、僕もさい君もそのとき初めて耳にしました。)であり、相手にするととんでもないことになるそうだ、と説明し、ようやくさい君も納得してくれました。

 しかし『ガリガリ君17円のレジ打ち間違い』には冷静沈着なさい君が、なんでまた『見知らぬ人からの3億円あげちゃうという一通のメール』は盲信しちゃうんですかね。
 僕は期せずして、こうやって人は『一体誰が引っ掛かるんだろう、といういかにも怪しい話』に簡単にのってしまうのだ、という例を、思いもよらぬ身内に見てしまうことになったのであります。
 くわばら、くわばら。

 尚、『フィッシング詐欺』の『フィッシング』のスペルは『phising』であり、『fishingではない』そうです。これもその某大企業の方が教えてくれました。
 本当です。

===終わり===


 
 
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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