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目標。

 寝そべっていたら、息子(11歳)が風呂上りに全裸で飛び込んで来て言いました。

 「ねえ、パパ!」
 「うん?」
 「お風呂のあと、すぐちんこを触っても、手を洗わなくていいのは手がきれいだから?
 それとも、ちんこがきれいだからなの?
 どっち?!!」

 はあん?
 この男は、他に思いつくことがないのか。

 それは、小学生だから、『核兵器の抑止力か、核廃絶か、のジレンマ』という命題について悩め、とは言いません。でも、新聞を読んで時事問題について、ええと、そうだな、例えば『少子高齢化って何が問題なの?』なんていう質問をし始めても、決しておかしくはない年齢だと思うんです。それなのに・・・。
 『ちんこか、手か、のジレンマ』なんてどうでもよろしい。
 どうも、まだ思考回路のピントが合ってないですね。
 そもそも、一体どういうはずみに、そんな何の役にも立たない面妖な疑問を思いつくんでしょう。しかも、その問題は、服も着ないで父親の元に馳せ散じて解決しなければならない、即ち、あたかも、焦眉の急でもあるかのような疑問でしょうか?

 父親としては、かなり心許ないです。

 先日も、こんなことがありました。
 いつものように、仕事から帰宅したら、さい君から息子を塾に迎えにいくように命令されました。僕は、おとなしくその指示に従い、塾へと赴きました。
 到着すると、-そこは慣れたもんで、すでに勝手知ったる間柄です。-、
 「こんばんは。」
 と、中にずかずかと入り、自習室にいる、しかし、勉強をしているのか、遊んでいるのか判然としない息子に、
 「おい、フジ、帰るぞ。」
 と声をかけました。
 愚息は、僕に言われるまでもなく、父親の姿を見ると帰り支度を始めました。
 息子が用意している間、しばしの無聊にまかせて、僕は何の気なしに塾の中を見渡しています。と、ある掲示物に眼が留まりました。
 そこには、小さな短冊状の紙がたくさん貼られています。どうやら、生徒さんたち各自の『目標』が記されているようです。
 どれどれ・・・。

 『ケアレスミスをなくす!』 
 ほう、大人びたことを言う子もいるんだな。
 『XX中学に絶対合格!』
 おお、頼もしい。
 『偏差値70!』
 お、具体的ですなあ。

 それぞれが、決意を語っていて、なかなか興味深いです。
 いろいろあります。
 『これが本当に小学生の字なのか』と瞠目させらるような綺麗な字で書かれたものもあります(そういうのは、この年齢では大抵、女の子によるものですね。)。
 かと思えば、塾の掲示板なのに、
 『サッカーを頑張る!』
 なんていうのもあって、これはこれで子供らしくて微笑ましいです。斯様なものも混ざっているというのは、それはそれで児童の集団としては健全だし、一方でこの塾の先生方に包容力がある証し、ともいえます。

 ・・・ところで、俺の息子のはどこに???
 見当たらんぞ。
 「パパ、フジのをさがしてるの?」
 いつの間にか、帰り支度を終え自転車用のヘルメットを被った息子が隣に立ち、僕の顔を見上げながら聞きました。
 「うん、フジは書いてないのか?」
 「ちがうよ、ちゃんとかいたよ!ほらひだりの、いちばんうえ。」
 おう、そうか、そうか、と、彼の指差すほうに視線をむけると、果たして、いつもの乱暴な字を見つけました。
 ええと・・・?

 『世界で、100番に入る。』

 うん????

 この時の、僕の父親としての、もやもや感を表現するのはなかなか難しいです。
 すなわち、読んだ瞬間、感心するでもなく、微笑ましく思うでもなく、頼もしくもなく、かといって、落胆するでもなく・・・、とにかく、『なんだかしっくりこない』というのが偽らざる心境でした。
 なんで、こんなもやもやした気持ちになるんだろう・・・・。
 僕は、自分の中に反射的に湧き上がった心持ちを自分でうまく受け止められずに、再度、息子の決意表明を反芻してみました。

 『世界で、』
 ふん、世界で?・・・。
 『100番に入る。』
 んんん?ひゃくばん??

 どうも、しっくりきません。
 「おい。」
 「なに?」
 「これ、なんだよ?」
 我ながら愚問だな、と思いつつ、しかし、僕の曖昧模糊とした胸中は、そういう言葉を僕の舌をして選択させざるを得ませんでした。
 「なにって、フジのもくひょうじゃん。」
 と、果たして息子は明快に答えました。
 「いや、それはわかるんだけどさ・・・」
 「うん。」
 「世界で100番、てなんだ?」
 「だってさ、」
 「うん、」
 「せかい、でさ、」
 「うん。」
 「いちばん、とかは、むりでしょ?」
 「え・・・?」
 「でもさ、せかいでひゃくばんて、すごくない?」
 「・・・・。」

 そうなんです。ようやく分かりました。
 息子のこの目標が僕にフラストレーションを感じさせたのは、『前半の言葉と後半の言葉が呼応していない』こと、によるものだったんですね。

 前半の『世界で』は、広大で、ロマンがあり、抽象的、幼く、そして、傲岸不遜、です。
 一方、後半の『100番以内に入る。』は、卑近で、下手に現実との摺り合わせまでされていて、いやに具体的で、そして、変なところで少しだけ謙虚、です。
 
 他の生徒さんの目標を見ても、『世界で』なんて広大な分母を相手にしている子はいません。その代わり『100番以内に入る』なんて、妙に現実感を強調しているものもないです。
 なんだなんだ、そもそも、『世界で100番』などということは、現実には判明しようがないじゃないか・・・。それに、よく考えたら、『到底無理』だし・・・。
 どうせなら『一番なんてなれないから』とか言わないで、
 『世界で一番になる!』
 と徹底して大きく表明してくれれば、それはそれで『うむ、男の子はこうでなくては!』と思わせてくれたでしょう。
 或いは、
 『全国模試で、名前が載るようになる!』
 と、精神的に成熟した目標を立ててくれれば『おう、我が子ながら逞しい』と感じたと思うんです。
 親としては困惑しなかったはずです。
 
 『世界で、100番に入る。』

 ・・・・こいつ、大丈夫かなあ。相変わらず、ピントが合ってないみたいだ。
 本当に、先行きが心配です。

 尚、冒頭の、
 「お風呂のあと、すぐちんこを触っても、手を洗わなくてていいのは手がきれいだから?それとも、ちんこがきれいだからなの?どっち?」
 という彼の疑問に対しては、そんなの知らないよ、どっちでもいいだろ、と思いながらも、親としての威厳も保たねばなるまいと、
 「は?・・・まあ、それは、なんだ、そうだな・・・ちんこがきれいだからじゃないか。」
 と、ーいい加減にですがー、返事してやったら、息子は
 「ふうん!そうか、ちんこのほうかきれいだからなのか!」
 と、答えたこっちが一瞬怯むくらいに、痛く得心し、全裸のまま僕のもとから去って行きました。不安です。

 ところで、手を洗わなくてもいいのは、
 「ちんこがきれいだから。」
 で良かったのでしょうか・?そうじゃなくて、手がきれいだから、が正解かな・・・。いや、
 「ちんこと手と、両方がきれいだから。」
 と言うべきでしたかね。
 んん・・・?、ちょっと待てよ・・、うむ、これは、したり!つい息子のペースにはまって『二者択一のジレンマ』だとばかり思い込んで回答してしまいましたが、
 「風呂上りだろうが物が物だから、どのみち、触ったら手を洗え。」
 と、言うべきだったのではないですか!・・・・・これはもしかしたら、ピントが合っていなかったのは『親子ともども』だったのかもしれません。
『いずれにせよ、ばっちい。』ですものね。
 う~~ん、しくじったかしらん・・・。

=== 終わり ===

 
 
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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