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仕事ごっこ。

 他人様からの伝聞なので出典を明示できませんが、ある説によると日本のサラリーマンの『仕事』の何割かは『仕事』ではなくて『仕事ごっこ』なのだそうです。
 全くもって言い得て妙です。僕はこの主張には無条件で賛同しちゃいますね。
 なんでまたそんな言い訳じみたことを言い出したのかと言うと、これからする話も他ならぬ仕事中に遭遇したことだから、です。

 僕が、若い頃全然縁がなくて、しかも間違っても俺に限って将来もそうはならないだろうと思っていたことなのに、実際なっちゃったこと、といえば、花粉症と、国際結婚と、肩懲りと、窓際で給料泥棒と、-ええと、他にもあると思うんですけど、とりあえず、今日のところはその辺にしときます-、ですね。
 そのうちの、肩凝りに関してですが、いやあ、つらいですねえ、肩凝り!びっくりしました。
働き出してからもしばらくはそんなものには無縁だったので、実際になってみてそのつらさに激しくうちのめされました。僕の『肩凝り』は厳密に言うと、肩の上の方からうなじにかけての筋肉が、体の内側から鉄の棒でも貫通されたみたいにガチンガチンになっちゃうんです。
 そういうわけで、ちょっと前のある日、仕事中に、自宅の近くにマッサージ屋さんでもないかしらん、と思いながら、インターネットで『東大立目 マッサージ』とインプットし、検索してみたときのことです。
 ええと、断っておきますが、僕はその時、本当に家の近くの『マッサージ屋と称するマッサージ屋さん』を僕の肩凝りの為に探していたんであって、最寄駅の東大立目駅近辺に『マッサージ屋と称する別の方面のサービスをオプショナルなプレイとして提供するマッサージ屋さん』がないかしらん、と物色していたわけではありません。
 なぜって、僕の会社のパソコンは、ちゃんと『マッサージ屋と称する別の方面のサービスをオプショナルなプレイとして提供するマッサージ屋さん』(以下、『別の方面屋さん』と略します。)のサイトには、-『別の方面屋さん』だけではなく、ギャンブルとか、SNSとか、ツイッターとか、チャットとか、動画、それに、アダルトな画像などにも繋がりません。ことごとくブロックされます。でも、あれというのは、どういう仕組みなんですかね。ごまんとある全世界のネット上の情報の海に対して、パソコンに一体どういった海図を持たせてアクセスできないようにするのか、僕にはちょっと理解不能です。-、アクセスできないようになっているから、鼻からそんなことは意図していなかったわけです。
 僕の知っている範囲では、近所にある『マッサージ屋と称するマッサージ屋さん』は確か駅前に一軒あるだけで、そこには行ってみたことがありますが、どうもしっくりこなかったので、一度で行くのをやめてしまいました。
 そういう経緯があったので、さして期待もせず、なんとなく(もちろん、業務時間中にです。)探していたら、

『アロママッサージ サジタリウス』(仮名)

というのに出くわしました。

 「ほう、こんなのあったっけ?」
 そう思いつつクリックすると、画面はその店のかなり明るい基調の色使いのホームページに変わりました。
 「ふむ、会社のパソコンから入れたということは俺の探しておる『マッサージ屋と称するマッサージ屋さん』ということだな・・。どれどれ・・・」
 と進んでいくと、『ホーム』とあるところに『アロママッサージ 60分 10,900円、90分・・・・』と書かれています。
 「アロママッサージ・・・・」
 僕は、体にいろいろと塗りたくられるマッサージはあまり好きではないので、『アロママッサージってどうなんだろう・・・よく知らんがなんか塗られそうだな・・・』と今ひとつそのメッセージに啓発されずに、ぼうっと画面に視線を泳がせて、読むでもなく、その『ホーム画面』にある字面を下の方へ、脱力しながらスクロールしていきました。
 と、次の瞬間、僕の脳は鋭く覚醒し、その虹彩は大きく見開きました。

 ええ、筆者の人格に関わることなので、ここで、繰り返しておきますが、僕は『仕事をするふりをして、業務時間中に会社のパソコンで別の方面屋さんを検索していた』のではありません。『自宅近辺の普通のマッサージ屋を探してみていた』んです(どのみち業務時間中なので、普通のマッサージならよろしいのか?という疑問は大いに説得力がありますが、ここでは、そのことは横に置いておきます。)。

 そのページの下の方に小さく、『新着情報』とあったんです。それはいいんです、それは。サジタリウスからのお客様向けメッセージの更新ということで、よくあるホームページの使い方ですから。
 しかし、その下にさらに小さく、簡潔に、平然と、こうあったんです。

『巨乳みほちゃん(24歳)入店しました。』

 え!
 きょにゅうみほちゃんにゅうてんしました???
 あれ、俺って、今、図らずも会社の高度なシステムをかいくぐり、別の方面屋さんのホームページへのアクセスに成功してしまった、ということ??
 いやあ、照れるなあ、俺にそんな高等なIT技術があったとは。
 それに好みの女性の、こと容姿に関しては常日頃から『男子としての保守本流であること』を標榜している僕ですから、巨乳について敢えて言及するならばこれを拒んじゃうことはポリシーに反するしなあ、うむむ。
 僕は、混乱してしまいました。
 しかし、戸惑いよりも好奇心、いや『サジタリウスの正体は何のか?』という真実を知りたい、という保守本流としての知的探究心(なんだ、それ。)が勝り、さらにそのページの奥へ入ってみることにしました。
 すると、『スタッフ』というアイコンがあるじゃないですか。業務中にも関わらず、真実追求の探究心に燃える筆者は、当然、そこをクリックしてみました。
 画面がアップされ、愕然としました。
 そこには、『12:00~翌3:00』と書かれた営業時間の下に『スタッフ紹介』として、セーラー服だの、下着だの、胸の谷間を大きく見せた服だの、を着た女性9人が、その名前と年齢、-『さき(21歳)』とか、『ゆみ(24歳)』とか、『ルル(22歳)新人』(『新人』の部分は赤字です。)という具合に。-と共に艶かしいポーズをとって写っているではありませんか。
 しかも、顔には全員モザイクがかかっています!
 保守本流の男は、ここに至って頓悟しました。
 これは、あれだな、サジタリウスは明らかに『別の方面屋さん』だな、と。
 だって、そうじゃないですか、きょにゅうの入店を新着情報としてアップし、スタッフの紹介と言って顔にモザイクをかけたセーラー服だの下着姿だのの女性の写真を載せるってことを『マッサージ屋と称するマッサージ屋さん』は決してしないですよね。
 しかも営業時間は朝3時まで、です。

 僕は、でもなんでこのサイトには会社のパソコンから入ることができたのかしらん?と思いつつ、更なる好奇心、いや、飽くなき探究心から今度は『システム』とあるアイコンをクリックして見ました。するとそこには、
 『基本コース。指圧コース、かくかくしかじか円、アロマオイルコース、かくかくしかじか円』
 『アロマリンパコース・・・・・人気NO.1!120分指圧+オイルマッサージ+蒸しタオルマッサージ+リンパマッサージ+顔+足マッサージ 14,900円 ご予約時に「インターネットを見た」を合言葉でサービス・特典がつきます!電話予約大歓迎! 』
 と、赤色だの朱色だのの字で大々的に各種コースの『料金システム』の詳細が書かれていました。
 ふうむ、どうもいろいろオプションがある『別の方面屋さん』なのだな、と僕はひとしきり感心致しました。

 しかし、しかしです。次の瞬間、その『システム』画面を惰性で下まで追っていった僕が我が目を疑った、非常に小さいコメントを発見したのです。
 このコメントを信じ難いのは僕だけはないでしょう。
 即ち、『電話予約大歓迎!』から数行の空行をおいて、小さく小さく、そうですね、値段の表示の字の四分の一くらいの小さな字で、しかも地味に黒字で、そこにはこうあったのです。

『* 当店は風俗店ではありません』

 ええ!そんなっ!
 なんて明快な宣言、でも、それは無いです!!
 じゃあ『巨乳みほちゃん(24歳)』の訴求点は?モザイクをいれて下着だのセーラー服だのを着た『スタッフ』の皆さんの立場は?

 ・・・・解せません。

 僕は、この画面を見ながら(お気づきかと思いますが、僕は、その熱心さのあまり、サジタリウスの画面でかなりの間『仕事ごっこ』をしていたので、たぶん、僕の後ろを通過した何人かの同僚には画面を見られてしまったと思います。南無三。)この『* 当店は風俗店ではありません』の意味を理解できずに悶々としてしまいました。
 だって、そうじゃないですか?
 他の画面やコメントはどう見ても『別の方面屋さん』を思わせるような作りになっているのに、なんでここで、小さく小さく『ではありません』と主張する必要があるんでしょう。しかも、ホームページの表ではなく、『システム』の画面にまで入っていって、コースの種類を熟読した人にしか目に付かない場所で、です。
 そう、まるで『いやいや、ほんの参考までの情報なもんで、気付かないで読み飛ばしてくれたら幸いです。』っていう感じに、です。

 以下、僕が試みた推測です。

 *『別の方面マッサージ屋さん』としての許可を取得していないが実態は『別の方面マッサージ屋さん』であるため建前上『ではありません』と記した。
  -しかし、これはあまりにお粗末ですよね、僕が摘発する側だったら、すぐに、怪しい、とみなすと思います。

 *実際に『別の方面屋さん』ではない。
  -でも、そうだとしたら『巨乳みほちゃん(24歳)入店しました。』とかモザイクでのスタッフ紹介とかはいらないです。むしろ、『別方面のサービス』を求める来店客との間にトラブルが頻発する、と思うんです。

 *『別の方面屋さん』として許可も取っているし、『別方面のサービス』も実際に提供するが、なんらかの理由で、表向きは『ではありません』ということにしている。
 -これはあり得るような気がしないでもないです。実際、お互いどういう仕組みかわからないですが(この一行のコメントのおかげでのみ、とは思えませんが。)、『別の方面屋さん』にはアクセスできないはずの、僕の会社のパソコンからもアクセスに成功しているわけですから。それで『魚心あらば、水心ありよのう、皆まで言わせなさんな・・』といった感じで別の方面屋さんの常連だの、その道の玄人には、たとえ一見さんでもちゃあんと呼吸が通じあってたりするわけです。しかし、そうは言ってもやはり、『ホームページの建て付けは全身是別の方面屋さん』なのに、小さいとはいえ、しっかりと『ではありません』と断ったりすると、矢鱈と冗長な会社定款みたいに『本業は何なのか?』がぼやけてしまって、客を獲得するメリットよりも徒らに別の方面を期待した素人さんをして困惑せしめ、『なあんだ、じゃ、行くのやめた。』となって、売り上げを失うデメリットのほうが大きい、ように思うので、これもあまり感心できる策とは思えません。

 どうもわかりません。未だに謎です。
 この謎を解明するには行ってみるしかありませんが、僕としては保守本流ながら、既婚者ということもあるし、財政的にも逼迫しているので、ちと、二の足を踏んでしまいます。
 『しからば俺がサジタリウスに行って結果をリポートしてやろう』という暇とお金のある奇特な方がおられましたら、僕宛にご一報ください。お店の正式名称とWEBをお教えします。
 ええと、費用は自己負担でお願いします。
 先述の如く『120分指圧+オイルマッサージ+蒸しタオルマッサージ+リンパマッサージ+顔+足マッサージ 14,900円』が『人気NO.1』だそうです。
 WEBにはこのブログを書くにあたり、改めてアクセスして中身を確認したら、新着情報『巨乳みほちゃん(24歳)入店しました。』はさすがに無くなっていました。が、依然として『* 当店は風俗店ではありません』は健在でした。
 加えて、『特別キャンペーン 10,000円以上のコースご利用で泡洗体付き』だそうです。
 僕のミスタイプではありません。『泡洗体』って書いてあるんです、なんて読むんですかね。

 これもわかんないです。
 行かれた方は、是非『泡洗体』も体験してきて、正しい読み方と共にそのプレイ(プレイなのか?)の内容のご報告もお願い致します。

 うむむむ『ではありません。』なのに、
『巨乳みほちゃん入店しました。』
・・・。

 どうも、やっぱり謎です。

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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