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ライナスの毛布。

 心理学の分野で『安心毛布』あるいは、『ブランケット症候群』と呼ばれる現象があります。
 これは、人が物に執着していて、ときには、その物がないとパニックになるような状態を指し、別名『ライナスの毛布』とも言うそうです。
 ライナスとは、漫画『ピーナッツ』(スヌーピーが出てくる漫画ですね。)の中の登場人物の中のひとり、ライナス・ヴァン・ヘルトのことです。『いつも毛布を引きずっている男の子』といわれればおわかりになる方もいるのではないでしょうか。(参照WIKIPEIDA)

 最近、あることで『ああ、俺も年をとった!』と激しく痛感させられました。しかもそれが、予想していなかったことが原因だったので、衝撃はより大きかったです。
 例えば、白髪が増えただの、体力が落ちただの、いろんな欲求の勢いがそがれている、だのは、それはそれで残念なことであるけれど『ある程度予期していた、年をとったことによる兆候や現象』です。
 しかし、今回のは全く意外なことで、ああいうことになろうとは予期していませんでした。もっと正確にいうと、ぼんやりと、もっと先の話しだろう、あるいは俺はそうはならないだろうな、と思っていたので、今の僕がそういうことになっている、とは驚きでした。

 ある日、僕が寝そべっていると、息子が僕の左側の傍らにやってきて、同じように寝そべりました。
 父親にくっつくとは、まだ、子供です。
 お互い寝そべりながら他愛のない会話をしていました。僕は、確か仰向けになって天井に視線を泳がせながら息子のおしゃべりに付き合っていたと記憶しています。
 その時、話しながら、息子が僕の顔のすぐそばでなにやらもぞもぞしてました。僕は、彼の行動を全く不審にも思わず、特に疑問ももたず、依然仰向けのまま寝そべって息子の話し相手をしていました。
 
 ふと、会話が一段落したとき、まだ僕の左顔近辺でもぞもぞしながら息子が言いました。

 「ねえ、パパ。」
 「うん?」
 「あのさあ、」
 「うん、どうした?」
 「パパのさ、」
 「うん。」
 「ここにい、」
 「うん?」
 「毛がはえてるって、しってた?」
 「え?」

 僕は瞬間、息子が何を言ってるのかわかりませんでした。

 「どこに?」
 「ここだよ、ここ。しらなかったでしょ?」

 と、息子は、僕のその『毛』をやや強く引っ張りました。最前から息子がおしゃべりをしながら僕の顔付近でもぞももぞしていたのは、その毛を触っていた、ということだったんです。
 全然気が付きませんでした。
 息子は、僕に気がつかせようと、その毛を強弱をつけて引っ張る、という動作を2,3度繰り返しました。
 すると、どうでしょう、全く予期しなかった僕の体の一部分から、何やら刺激を受けておるぞ、という感覚が脳に送られてきました。
 僕は、驚いて、
 「え?本当か?」
 と息子に尋ねると、息子は、
 「うん、けっこう、まえからあるよ、ほら。」
 と応えながら、また強弱をつけて引っ張りました。
 「ちょっ、ちょっと!」、
 言いながら僕は、刺激を受けた部分を自分で触って確かめてみました。
 すると、どうでしょう、確かに、息子の言うように、なにやら一本だけではあるけれど、ひょろひょろとした、しかし、確かな太さの1センチ以上の長さのある毛が、僕の指先でもはっきりと確認されました。
 
 「うわ、まじかよ!」

 僕は、驚愕しました。
 それは僕の左耳の『耳毛』だったのです。
 正確にいうと生えていたのは耳たぶ側とか穴近辺ではなく、耳の穴のすぐ外の、顔側に小さく山型に突起した部分(『耳珠』、じじゅ、というそうです。以下そう呼びます。)のてっぺんから、縮れた、しかし、それなりの剛毛が、一本生えていたんです。
 よく、電車の中なんかで耳から毛を生やしている年配の方をお見かけしますが、一本とはいえ、自分がそういう状態になっていたとは!

 ああ、俺も年をとった!
 いつのまにこんなことに!
 しかし、息子は本人でも知らなかったことをいつから知っていたんだろう?
 僕は、しばし愕然とした後、知らなかったこととはいえ『いままでこんなところに毛を、それも一本とはいえ、それなりの剛毛をしたためているのを世間様に晒して生きていた』という事実に、強烈な恥ずかしさを覚え、大逆上しました。
 息子は、自分の指摘に対する父親の過剰な反応が予想外だったのか、一瞬ぽかんとしていましたが、すぐに、父親の言動を先周りすると、こう叫びました。
 「あ、だめっ!パパぬかないで!」
 え??
 「なんでえっ!?」
 「いいから、ぬかないでっ!」
 「だって、恥ずかしいじゃないか!」
 「でもぬかないで!」
 「だから、なんでだ?」
 続いて息子が言ったことは、これまた僕を驚かせるのには、十分に奇天烈でした。
 「フジはね、パパのこの毛をさわっていると、なんていうかね、とってもあんしんするんだよ。おちつくんだよ。だからおねがい、ぬかないで!」
 「え・・・安心するって・・・・」
 ・・・・。どうやら息子は、かなり前から彼の父親の耳珠にある『耳毛』を発見し、いつも、しかし密かに、その『耳毛』を触っていたようなんです。しかもそのことが習慣化して、僕の『耳毛』に触れること、は彼にとっては、精神状態を良好に維持することに大いに功績があったもの、と見受けられます。

 これは、つまり『ライナスの毛布』と同じです。
 『ライナスの毛布』、ならぬ『父の耳毛』です。
 
 というわけで、思わぬことから、ああ俺も年をとったのだ、と感じさせられた、と共に、これまた偶然にも『ライナスの毛布』という心理学上の理論を実践で追実験する運び、となったのであります。

 尚、僕の耳毛は、息子があまりに全身全霊を込めてお願いするので、その時は抜くのを暫時断念されました。
 しかし、このブログを書くにあたって鏡をみながら耳珠を再確認したら、いつの間にやら抜けておりました。ただし、こういう部分の毛は、いったん抜けてもまた同様の毛が生えてくる、と推測されるので、-それが証拠に、もともと毛が生えていた部分には肉眼ではわからないものの、手で確かめると、髭剃りあとの毛根のように明らかに痕跡が感じられます。-、そのとき、息子の精神衛生面を優先して放置しておくか、己が世間体を優先して抜いてしまうべきか、ちょっと結論を出しあぐねています。

 実に悩ましいです。

 それにしても、変な子だなあ・・・。

===終わり===

 
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非公開コメント

そうですか?

中央線特快様 いつもありがとうございます。そうですか、全然気にする必要はないですかね・・・。でもこれが心身ともに『蟻の一穴』になって、そのうち、耳全体が剛毛で覆われてしまうのでは(実際、稀にそういう方おられますよね。)、と逡巡するものであります。息子とようく、コミュニケーションを図って答えをだそうと思います。筆者

No title

全く気にする必要ないと思いますが。。。フジの為にも耳毛を伸ばそう!おー!
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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