スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

340ミリ。

(こういうのが、世間でよく言う『結婚してからわかる価値観の違い』っていうのかしらん?)と、僕は、ぼんやりと思いました。

 僕のさい君は、ある南半球の土地でうまれ育ったモンゴロイドです。有体に言ってしまえば国際結婚というたぐいです。これもよくあることですが、僕の数少ない恋愛経験話の中でも、『結局、結婚まで至った恋愛』というのが、一番話としてはつまんない、のでなれそめについては特に今回は触れません。国際結婚なんて花粉症と同じくらい何回生まれてきても自分には関係ないものと思っていたのに、はからずも、あれよあれよというまに気づいたらそういう身分になっておりました。同じく、はからずも、おやおやと思っているまに気づいたら重症の花粉症になっておりました。いや、驚きました、きついです、花粉症。僕は、3月から5月にかけては日本の経済活動が花粉症のおかげで落ちているのではないか、という持論をひそかに持っていまして、・・いや、え~と今回は花粉症は関係ないし、持論を誰かに盗まれるおそれもあるのでやめときます。ごめんなさい。

 さい君は、よく、僕に仕事をさせます。これからして、自分の両親の関係をみて育った―父親かずまさは、いわゆる縦のものを横にもしない、という男でして―僕からすれば、尋常でないことですが、それくらいのことはまああるさ、『なにしろコクサイケッコン』だからな、と僕は都度言い聞かせています。さい君が、僕の財布の中身を勝手に見ても、朝出かけるとき100%起きてこないのも、僕のものは一切アイロンをかけてくれないのも、たまに皿を洗ってあげても無反応なのも、仕事中に『お菓子をつくりたいんだけど薄力粉と強力粉のちがいって何?』と今じゃなきゃだめなのかよ、という質問を電話してくるのも、ふむ『なにしろコクサイケッコン』だからさ、と受け入れていました。お互い同国人と結婚したことがないので、普通の日本人の皆さんが『結婚してみてわかる価値感の違い』をあまねく『国際結婚だから』のひと言に逃げ込むというのもなかなか便利なものです。

 ある日のこと、いつものように仕事帰りにさい君から携帯に電話がありました。
 「ケイタ、いまどこ?」
 「いまちょうど駅を降りたとこ、交番のまえ。」
 「おお、良かった。ちょっと薬局に寄って買い物してほしい。」
 「うん。何?」
 ちなみに、緑家は駅から歩いて5分、もし僕が不動産業なら3分(不動産業の方、ごめんなさい)と言いたいくらいの距離で、その途中に大きなドラッグストアがあります。さい君と僕の会話はさい君の母国語です。さい君は彼女の母国語以外に英語がかなり、北京語が少し、日本語が少し、できますが、僕は、英語が苦手で、中国語はできないので会った時から今に至るまでさい君の母国語で会話してます。
 「あのね、いい?ロリエ買ってきて、色はね・・」
 「え?何?ロリエ?」
 それって、まさか生理用品というモノでは?
 「そ、ロ・リ・エ、外装の色はダークネ―ビ―、夜用340ミリ。」
 とその属性を縦板に水のごとく描写するさい君。「ロリエ」は固有名詞なのでそのまま発音してます。一方、生理用品を買ってこい、と言われた衝撃を受け止め、かつ許容する段階まで到底辿りつけず、しばし呆然とし、さい君の力説する属性など頭に全く入らない彼女の配偶者。
 「あのさ、それって今じゃないとだめなのかなあ。」
 とさすがに緊急避難措置を試みました。
 「あたりまえよ。だから頼んでるの。そうじゃなかっ
たら明日自分で買いに行くでしょ?」
 へ?そう、理屈ですなあ。まあ、『なにしろコクサイケッコン』だしな。でもなあ・・・。
 「あのさ、ほかに薬局で買うものないの?」
 これは、リスク回避策その②、エロDVDを借りる高校生のように『木の葉を隠すには森の中』というやつですね。他の買い物に混在させて、男性が生理用品を買う、という事実の怪しさを、避けられないまでも、せめて薄めようという魂胆です。
 「無い。それだけ。」
 回避策その②、即粉砕。
 「・・・そう。それで何を買うんだっけ?」
 あきらめました。開きなおって、確認作業に。
 「だ・か・ら、いい?ロリエ夜用340ミリ、パッケージ
の色はダークネ―ビ―、わかった?」
 「ほーい。」
 と歩きながら非常に複雑な男心の葛藤を経て、ちょうどくだんの店に到着しました。しかし、そう簡単にミッションは成功しません。全国推定300万人の生理用品を買ったことのある男性ならご理解いただけると思いますが、生理用品って種類がすごく多いんです。平日の19時前後ということもあって、店内はお客さんもまばら、レジも閑散としています。入ってすぐに、いきなり生理用品の積まれているワゴンに遭遇しました。ははん、これが生理用品のコーナーだな、こんなにわかりやすい場所にあったのか、どれどれ・・・・。携帯片手に、客もまばらな店内で生理用品のワゴンを物色する小太りの男性。無い。電話しよ。
 「あのさ、見当たらないんだけど。」
 「え、なんでよ。ロリエ夜・・。」
 「わかってるよ、ロリエ夜用340ミリ、色はダークネービーしょ?」
 僕は、もう開き直っているので、特に小声でもなく、かと言って大声を出すわけでもなく、生理用品ワゴンの前で棒立ち。しかもさい君の母国語でしゃべっているので、少数とはいえ、周りの人には
 「*#”%!&&%$#”!” ロリエ &
  %$%%$%!」
って聞こえてますね。
 「ちょっとケイタ、どこにいるの?」
 「どこって、はいってすぐのワゴンのところ。」
 「ああ、それはセール用よ。右奥のコーナーに
  あるのよ!」
 多少怒り気味。なんだよ、そんなに急を要するなら自分で買いにくりゃいいじゃねえか、へいへい、右の奥ですね。と移動しました。あります、確かに。でもこれがすごい種類!えと、ロリエ夜用・・・とつぶやきながら探しますが、どうも確信がもてません。それらしいのが、一番下のほうにあったので、気付いたら生理用品コーナーで、いわゆるうんこ座りをする小太り。電話、電話だ。
 「あのさ、らしきものあったんだけど。」
 「どんな見た目?」
 「えと、ロリエ、え、うん夜用、値段は、かくかくし
  かじかだな。」
 「340ミリ?」
 「ん、そんなの書いて・・・、あった!うん340ミリ。」
 「じゃ、それ買ってきて。ありがと。」
 その間、店員や他のお客さんは、
 「#$$"!&%$ ロリエ &%$#&&%$# 円 
  $#"%'&'&$# ミリ $$!?」
 と、不可解な言語を耳にし、『店の隅でうんこ座りをし、携帯片手に生理用品をにらむ小太りな男』を目にしていた、ことになります。

 ようやく、目指すものにたどりつき、誰も並んでいないレジに行きました。推定全国500万人の生理用品のみを単独で購入したことのある男性の皆さんならご理解いただけると思いますが、そのままレジ袋にいれてくれても僕としては、最早、一向にかまわないのに、ああいう商品って、すんごくしっかり、中が透けて見えないように茶色い紙でつつんでくれるです。それをまた、閑散としたレジでぼーっと待ち、ようやく帰宅しました。今度ばかりは、違和感を感じたので、帰宅してすぐ、
 「ほら、買ってきたぞ。でも、あなたはだんなにかような
  買い物をさせて、だんなに対して、かつ、世間様に対し
  て恥ずかしくないか?ちなみに、わたくしの知る範囲では、
  日本人の女性にはこういう習慣はないと思われる。」
 と言いました。それに対して、さい君は、
 「全然。なんで?」
 「・・・・・・。」

 今度ばかりは、(こういうのが、世間でよく言う『結婚してからわかる価値観の違い』っていうのかしらん?)と、僕は、ぼんやりと思いました。
 いや、これこそ、『なにしろコクサイケッコン』っていうことかなあ。どうもいまだに釈然としません。 
 薄力粉と強力粉の使い分け方もいまだに、もちろん、わかりません。

 終わり
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

一気にありがとうざいます。

> さいくん、慣れない国で見えないところも含めて悪戦苦闘してるんですよ。これもケイタさんと暴君のため。良いじゃないですか、ロリエでもソフィーでもエリスでもパンパースでも何でも買ってあげましょう!
一気読んでいただいて嬉しい限りですが、面倒ではなかったですか?うん、百歩譲って僕はいいとして、さい君の「はしたなさ」はどうも気になるんですよね。雑巾も足でつかってますし。

No title

さいくん、慣れない国で見えないところも含めて悪戦苦闘してるんですよ。これもケイタさんと暴君のため。良いじゃないですか、ロリエでもソフィーでもエリスでもパンパースでも何でも買ってあげましょう!

いつもありがとうございます。

とよす様 いつもお読みいただきまことにありがとうございます。洗濯物の件、心中お察しいたします。夫婦といえども男女の緊張感をたもっていたいとしたならば、奥方様がたにも女性としての矜持を持っていただきたいですよね。翻ってわが身を鑑みれば、口をつむがざるをえませんけど。今後も無聊しのぎにでもお読みいただければ幸甚です。ありがとうございます。

No title

私はさいくんにそのようなものの買い物を頼まれたことはありませんね。洗濯ものを干すのを手伝う際にさいくんの下着を干すのは「恥ずかしい」というと家族なのだからそんなことはないわよ、とたしなめられました。

とんでもございません!!

はな様 お読みいただいたうえにコメントまでいただき、望外の喜びです。はな様、たいへんありがとうござます。作家など、とんでもございません。日本の未来がよくなりますように、とただ祈るだけで、本人はただただ窓際で終身雇用を願う、資本主義に洗脳されることを選んだ一介のサラリーマンでございます。今後もよろしくお願いいたします。

No title

こんばんは
とっても楽しく読まさせていただきました
また 遊びに来ますね
ケイタさんは 作家さんですか
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
フリーエリア
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村
フリーエリア
フリーエリア

人気ブログランキングへ
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。