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みぢかえない話③

「ま、そういう時代だった、てことだな。」

 今日は、『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』略して『みぢかえない話』、その③です。
 
 以前本シリーズ(シリーズになっていたのか!)の①で書いたように、この手の話は、送り手(それに関わる目撃者や書き手)が『心底信じ切って』情報を伝えようとする、ということに対しての話の受け手(=僕)の反作用がなんともいえない『現実をわすれさせてくれる感』を生むことにある。だから、その話の送り手の真剣度や、思い入れ度の深さが心地よくて、かつ、その反発心を最高に引き出してくれるのは、
 ①意表をつかれる。
 ②真剣な情報の送り手が目の前にいる。
というのが条件になるのでは、と分析してみました。その見地からすると、今回は上質の素材です。なぜなら、その送り手が、実の親、しかも二人揃って、なのです。
 
 僕の両親、つまり、みどりかずまさとみどりひろこ、は僕の両親歴は数十年におよびます。にもかかわらず、たまに実家に帰ってゆっくり話をしていると、いまだに唐突に、しかし、そこは年の功か、あるいは、そもそもそういう二人なのか、淡々と、みぢかえない話、が飛び出してきます。自分自身を、みぢかえない話の権威と以って任ずる僕としては、『うわ、この人たちまだこんな話があったのか!』と、灯台もと暗し、と驚愕すると共に、勢い、先駆者として沽券に関わらん、という意気ごみで聞き入るとになります。
 
 つい先日のことです。たまたま実家で、僕と両親、三人、という状況になりました。のどかな、緊張感のない時間に満ちています。かずまさはテレビの前で寝ころんで、テレビには彼曰くの『レッドセックス戦』が映ってますが、たまに彼を見るとほとんどうたた寝をしていて、『テレビを見ながらうたた寝をしているのか、うたた寝の間にレッドセックス戦をみているのか』判然としない様子です。僕は、その横のテーブルに座っていて、母親が、僕の無聊の相手をしてくれていました。
 「ほんとにお父さんはよくこの年までいきてるわよねえ。」
 「いやあ、それは俺も子供こころにこの人は長生きできん、
  と思ってたけど。」
 かずまさ、視線はテレビのまま、
 「なにや?言いたいこというなあ。」
 「悪いこと、いっぱいやってねえ。」
 「・・・・・。」
 「ほんとに、たくさん。あ、そういえば覚えてる?あのとき、ほら豊中でおまわりさんが家に来て・・」
(!!お、おまわりさんが家にい~~!なんだなんだ、いきなり、しかも淡々と?そんなの知らんぞ。豊中といえば俺は小学生・・・お父さん逮捕でもされのか?何をやったんだ?)
まずまさ、視線そのまま、一向に動じず、
 「ん?ポリ公がうちに?なんだそら?」
 僕は、すでにいろんな意味でどきどきものです。
 「ほら、酔っ払い運転で捕まって、ご主人をひきとりにこいって
  警察署から電話があって、それから・・」
 「おお、おお、あれか!うん来た来た、うちにな、おまわりがな。
  ・・・あれ?それでうちで飯食ってたんじゃないか?」
(ええ~!!! 話が全然見えんが、とりあえずおまわりさんが、うちで飯を食うって、あり得ないんじゃ・・????)
 「そうそう。ご飯でもっ、ていうことになって三人で警察から
  帰ってきたのよねえ。ほんとにめちゃくちゃなお父さんだっ
  ただったから、いつ死んでおかしくないって、お母さんは
  はらはらしてたわよ。」
 かずまさ、軽く、
 「ばかやろ。」
 と、僕を置いてけぼりにして、二人の会話は暫時完結してしまいました。僕としては、この時点ですでに反発心に満ち溢れ、あきらかに、このみぢかえない話、を掘り下げないわけにはいきません。
 「あの、それってどういうこと?」
 「だからねえ、お父さんは無茶ばっかりでね。いい年して
  『そのへんのあんちゃん』よ。お辞儀の仕方ひとつから、
  お母さんが教えたんだから。家で何回も練習させてね。
  それからあんたも知ってるでしょ、家のトイレで急性
  アルコール中毒で倒れたの、あの時はね、」
 「いや、それは覚えてるけど、さっきの話ってどういうこと?
  まず、お父さんが酔っ払い運転でつかまったんでしょ?」
 「そうそう、よく捕まってたけど、その時は、警察から電話
  で、とにかく引き取りに来なさいっていうからお母さんが
  行ったのよ。」
 「うん、それで?」
 「そしたら、酔っ払ったお父さんが、若いおまわりさんの前に
  座らされていて、お母さんを見るなり『ひろこ、俺は飲んで
  ないよな?酔っ払ってないよな?』ていきなり与太をまいてね。」
 (うん、うん、でも一向に、『警官が家で飯』に結びつかんなあ。)
 「そしたら、その若いおまわりさんが『なら、あんた、ちょっと立っ
  てまっすぐ歩いてみなさい。』って言いだして、おとうさん、まっ
  すぐどころか、ふらふら。」
 かずまさ、
 「は、はははは。」
 「それでね、お母さんがとにかく謝って、それからここの警察
  にはうちの子どもたちもよく届け出ものをして、それをいた
  だいたりしてお世話になってるんです、て、」
 確かにその頃、僕や兄が、腕時計などを拾って届けて、拾得物として半年すぎても持ち主が判明しない、ということで警察からそれらのものをもらったりしたことが2,3回ありました。いま思えば高価なものでもなく、おもちゃに近いような腕時計を原っぱで拾ったりしただけで、警察にとってはむしろ仕事がふえてありがた迷惑なだけだっただろうけど、僕らにとっては、腕時計なんて踏み入れたことのない分野のモノだったし、なにより『いいことをした結果得たものという達成感』にあふれていて、兄や僕にとっては大きな出来事です。母親は子供たちのその喜びようを覚えていて、おまわりさんの機嫌を損ねないように、謝罪する過程で言及したようです。
 「そしたら、話が盛りあがちゃって、」
(んん?盛り上がる?ってのは解せんなあ。)
 「うむ、そうそう。」
 「それで、許してくれたのよね。」
(!!!!!へ???)
 かずまさ、淡々と、
 「そうそう、『よし、そんな素晴らしい息子さんのお父さんなら、
  今回は無罪放免だ!』つってな。」
(あり得えええん!!!!!)
 「え?無罪放免て、言葉で言っただけじゃなくて、本当に許して
  くれたってこと?違うでしょ?」
 かずまさ、あくびをしながら、
 「まあ、そういう時代だったんだな、うむ。」
 答えになってません。
 「お母さん、どういうこと、本当に許してくれたの?」
 「うん。立派な息子さんだっていうことで。」
(えええ~~~?)
 「それでね、ますます盛り上がってね、世間話しなんかしてたら
  今日は、これで勤務は終了だ、て言うから、」
 「言うから?」
 「じゃあ、まだならうちでお食事でもいかがですかってね、」
(ええええ!)
 「そしたら着替えて、三人で一緒に社宅に帰ってきて、ご飯食
  べてったのよね?パパ?」
 「うん、そうそう、『それじゃあ』、とか言って飯食ってったな、
  あのおまわり。」
 「嘘だろう!」
 「ん?ほんとだ、ほんと。まあ、あの頃は、そういう時代だったっ
  てことだよ、けいた。」
 「ほんとにお父さんには手を焼いたわよ。」
 「ばかやろ。」

 僕の限りなく深い懐疑心を置き去りにしたまま、両親は趣旨は飽くまで『やんちゃな父のエピソードの一例』ということで淡々とこの件についての話を終えてしまいました。
 『そういう時代だった』んではなく、本件のあきらかにみぢかえない部分を『時代のせいにしてしまう両親』のほうに、我が子ながら驚いてしまいます。
 この二人にはまだまだ、みぢかえない話が、ありそうです。今後も気が抜けません。

 ところで、これって、数十年前の話とはいえ、とりようによっては、『違法行為』じゃないですかね。 

 終わり
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Re: No title

> ちちうえの「ばかやろ」がよい。今後マネさせていただきたく。
伝わりましたか。通常の声のおおきさでなげやりに、しかし、最後はびしっと切って言ってください。
「ばかやろー」ではなく「ばかやろ」です。ありがとうございます。

No title

ちちうえの「ばかやろ」がよい。今後マネさせていただきたく。

ありがとうございます!!!

とよす様 お読みいただいたうえに、コメントまでいただき、たいへん、たいへん、ありがとうございます。衷心より深謝いたします。
ちちおやは豪快というんでしょうか、本人は「だからあ、そういう時代あったんだよ」で片づけてますけど、僕も時代のせいかなあ、と判然としません。かさねて、ありがとうございます。緑慧太

No title

お父さん、豪快ですね。
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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