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御代川さん。①

 そんなの知ってるよ、って思われるでしょうが、実は『緑慧太』っていうのはペンネームです。このブログの読者のほとんどが僕の本名、どころかそのわかりやすい僕の女性の嗜好、に至るまで御存じの、僕の親しい知己だと思いますけれど、敢えて本名はここでも明かしません。

 僕の本名の名字はわりと珍しいほうです。ありそうだけど、実は案外いない、って感じですかね。そんな曖昧模糊とした表現では珍しさの度合いがわからん、という反論はごもっともですので、もっと説明すると、僕は今まで親戚以外で同じ名字の人の存在を見聞したことこそあれ、実際に面と向かって会って会話したこと、は一回もありません。
 さらに具体的に説明しましょう。ある名字検索WEB(こんなものがあるんですね、凄い世の中になったものです。このWEBは『日本人の名字の98%を網羅している』そうです!)によると、例えば『佐藤さん』はその人数において全国一位で、およそ205万5千人いらっしゃいます。一方、僕が適当にインプットしてみた『砂糖さん』(自分でインプットしてみたくせに驚きました。いるんですね、そういう名字の人!)は全国で51,095位の名字で、およそ40人いらっしゃるそうです。さらに、『御代川さん』という名字は、全国13,154位で、およそ500人いらっしゃるそうです(ええと、別に僕の知り合いに『御代川さん』という人がいるわけではなく、このブログを書くにあたって、さっき、近所の百円ショップに並べてある三文判の中から僕が適当に珍しそうだなと選んできたお名前で、他意はありません。)。それで、僕の本名の名字はどのくらいかというと、そのネットによれば、全国で14,883位、およそ400人、だそうです。
 つまり僕の本名は統計学的に言うと、『砂糖さん』の珍しさには到底及ばないけれど、『御代川さん』よりはやや珍しい、っていう程度、ということです。(といっても、『およそ400人』のうち『およそ30人』は僕と僕の家族と親戚ですけどね。)
 ここでは、便宜上僕の名字は『緑』っていうことで、話を進めます。

 僕は、今『親戚以外の同姓の人とまだ顔を合わせたことがない』と書きましたが、一回だけニアミスをしたことがあります。
 あれは、随分前のことです。インターネットや電子メールはもちろん、携帯電話の普及にすら歳月を待たねばならないの頃のことでした。
 僕は営業職にあり、とても忙しい日々を送っていました。ある日、その日は、本当に電話の多い日で、僕が電話中に他の電話があり、『電話ください』と伝言メモが飛びこんできて、それに対応していると、また電話があって、『電話してください』メモが飛びこんできて・・・という多忙循環にはまっていて、仕事のペースを大いに乱されていました。そのうえ、電車で、40分ほど先のお客さんとの約束の時間は迫っていて、どこかで区切りをつけて脱出しないと、電話の絶え間ない波状攻撃の前に、お客さんとの約束の時間にもはや間に合わない、というような状況でした。当時はメールもないので、ちょっと遅れます、というのも電話で連絡しなければならず、しかし、電話で連絡するくらいの時間があるならば一刻でも事務所から姿を消してしまわないと、この『電話中→電話してくださいメモ→電話中→電話してくださいメモ』の連鎖から逃れられそうにありませんでした。それで僕は、遅れそうです、という連絡もできないまま、じりじりとしていました。すでに今出ても約束の時間には少し遅れてしまうかも、これ以上、電話していられない、とある電話を最後に鞄をひっつかんで、席をたったときでした。同じ課の年次の下の女性が、歩き始めた僕にむかって、
 「みどりさん、電話です。」
 と言いました。僕は苛々していました。
 「電話です、って誰から!」
 「それが名乗られないんです。内線なんですけど・・・。」
 なんだ、この忙しいのに!でも内線で名乗らない、ってのは社内の偉い人がよくやる言動だから、ここは出ておくか、と僕は、また机にもどり、立ったまま電話をとりました。
 「はい、お電話かわりました!」
 早くしてくれよ、もう遅刻なんだよ、こっちは。すると、電話口の向こうから半笑いの中年男性の声が聞こえてきました。
 「みどりさん?」
 「はい・・・」
 「私、みどり、でございます。」
 身に覚えはありました。実は当時社内に僕と同じ名字の年配の社員のひとがひとりだけいる、ということは知っていたんです。そして、ほんの1週間ほど前、ドイツの全然知らない会社から僕宛に葉書がきたことがありました。僕は、ドイツなんか殆ど仕事上では関係ないし、ましてや、発行元の会社名には全然心当たりがありません。ふと、ああ、これは『みどり違い』で僕と同じ名字のあの方のところへいくべきものだろう、と判断したので、もうひとりのみどりさんの部署を調べ、社内便で『みどり違いのようです。』とメモをつけ送っていたんです。どうもそれを受け取った先方が嬉しくなって内線で電話してきた、しかも、僕を驚かせたいので、敢えて電話を取ってくれて女性には名乗らなかった、というのが真相だったんですね。
 ああ、そういうことか。と僕は思いつつも時計を睨んで、焦りはつのります。
 「今回はわざわざ葉書を転送いただき、ありがとうございます。」
 「いえ、とんでもないです。」
 僕も同じ名字の方に親近感を感じないわけではないですし、ひょっとしたら遠縁かも、なんてこともあり得るうえに、むこうは明らかに先輩なので、粗相があってはならぬ、と思い対応しながらも、僕の訪問を待っているお客さんの顔がちらつきます。
 お礼だけなら、もういいんじゃないかな・・。
 「いやね、私もいらっしゃるんだな、とは知っていたんですけどね。なかなかお話する機会がなくて・・・」
 ああ、なんということでしょうか、もうひとりの『みどりさん』は滅法暇な方と見えて、僕の焦りとは無縁に、なにやら親しげに世間話口調で話しかけてきます。
 「いえ、あの、こちらこそ。失礼しました。」
 僕は、1秒でも惜しい身なので、もうすぐにでも電話をきりたかったんです。ところが、なんともうひとりのみどりさんは、
 「ところで、ご出身はどちらになるんですか?」
 と質問をしはじめました。ああ・・・
 「え、いや、父親は満州生まれなんですけど、その前はたしか北九州とかで、おおもとは広島とか聞いた覚えがあります。けど、よく知らないんです。」
 悪いけど、今はどうだっていいやそんなこと、早く電話を切らないと・・・・
 「ほう、西の方ですね。私は和歌山です。」
 だから、どうだっていいんですけど!
 「実はね、私は平家の落ち武者の子孫なんです・・」
 うわあ、このひと、この忙しいのに、先祖を語り出したっ!
 「和歌山で落ち延びた平氏の武士がある部落に居つきましてね、それが我が家の先祖なんですよ。だから今でも和歌山のある一帯には、みどり姓が多くいましてね・・」
 ああ、困った!
 「ああ、そうですか、また改めて・・・」
 何を改めるのか自分でもわかりませんが、僕がそう言って、強引に電話を切ろうとしたにも関わらず、先方が放った言葉は、僕をして、ほぼ絶望させました。
 「どうです、今度ひとつ『みどり会』でもやりませんか?」

 結局、僕は、お客さんとの約束に間に合うどころか、先祖の自慢だの、名字の由来だのを滔滔と語る『みどり会会長』を受話器を手に立ったまま相手しているうちに約束の時間にまだ事務所にいる、という大失態をしでかしてしまいました。その後、幸か不幸か『みどり会』は開催されず、先方はいつのまにやら退社されてしまい、つまるところ拝顔することなく終わってしまいました。
 でも『みどり会』つったって、会員はふたりだけだし、『同姓である』っていうこと以外さしたる話題はないんだから、会ったところで、ぜんぜん話は弾まないんじゃないか、って思うんですけどね。
 いやあ、あのときは本当に、参りました。今思い返すと、かなりの奇遇ではあったんですけど。

 その後その種のことには出会っていないので、現在に至るまで親戚以外とは同じ名字の人と対面したことはありません。会ってみたい気もするし、会う度にいちいち『ひとつみどり会でもやりませんか?』なんて言われるのもなんだか面倒臭そうだしな、って思ってたりしています。

===終わり===
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名字検索WEB

TOCHYさん、ご参考までに僕が参考にした名字検索WEBは下記です。
http://myoji-yurai.net/;jsessionid=B2ED1AAA97F1F6B1FAEE21023164A39F 

負けません!

私の名字も、日本に100軒ないらしいですが…
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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