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ちょっきん。

 他の方はどうだかわかりませんけど、こと僕に限定して申し上げると、人生というのは予想もしなかった出来事の連続です。
 と、いっても劇的なことが次々に起きている、というわけではないです。些細だけれど『あれ、なんで俺こんなことになってるんだろう?』っていうことが日常に頻繁にある、ということです。
 じゃあ、そういうことの連発で僕が『予想外にベリーハッピー』なのか、というと、ええと、そうでもないです。
 最近になって(かなり遅いですけど)これは僕が、どうも主体性もなくなんとはなしに流れに身を任せてふらふらと生きてきてしまったこと、への報いではないかしらん、とようやく思い始めました。そもそもが、ちゃんとした海図や羅針盤はもちろん、目的地ですらあやういまんまいい年までその場凌ぎで進んでいたら、それは遭遇することも予想できなかったりしちゃいますよね。だから実は僕には、その都度驚く資格すらあるのか、怪しいもんなんです。

 先日のある日にも、家の中で、家族でくつろいでいたら、さい君が、ごく軽く、しかし唐突に彼女の母国語で言いました。
 「今度国に帰ったら、フジを割礼させよう。」
 か、かつれい、って・・。
 僕は少し、どきっとはしたものの、これには一応背景があるんですね。さい君の国には男女ともに割礼の習慣があるんです。女性に関しては詳しくは知りませんが、最近はあまり行われていない、やに聞いています。しかし、男性のほうはごく普通に行われていて、『今日はうちの息子の割礼のお祝いだ。』なんて言って幼児を着飾らせて近所を練り歩いたりしてます。さい君がさせよう、と言っているのは、この儀式を含む広義の意味の割礼ではなくて、狭義のほうの、外科手術的な割礼、をさしているようです。但し、現地では少数派の民族に属するモンゴロイドであるさい君の家系には、そういう慣習はないはず、なんですけど。
 「割礼したほうが清潔だし。」
 「・・・・・。」
 いや、そうと決まってるわけじゃないんじゃ・・・。僕がなんと返答したものわからずに、無反応でいると、それを間にはいって、黙って聞いていた息子が、
 「かつれいって何?」
 と母親の母国語でさい君に聞きました。
 すると、さい君は、ごく普通に、左手でモノをひっぱり、右手で表した『チョキ』で、モノをすぱん、と、気持ち良さそうに切る仕草をしながら、
 「こうやって、フジの象さんを、ちょっきん!」
 と言いました。
  一瞬、ぽかん、としていた息子は、次の瞬間、火がついたように号泣し始めました。
 「うぎゃああ、わあん、わあん、象さんを切るなんていやだあ!絶対にめちゃくちゃ痛いに決まってる!ママは男じゃなくて、象を持っていないから、そういうことの痛さがわからないんだ、ひどいい!うびえええん!」
 「これこれ、かつれい、て簡単にいうけど、あんたの兄さんや弟はしてるのかね?」
 「うん?そんなの、しーらない。どうなんだろう、知らないなあ。でも男の場合は割礼したほうがいいんじゃない?」
 さい君は、どこまでも無責任に、思いつきとしか思えないこと、を呑気に言い放ちます。息子は引き続き号泣し続けています。
 「ママはいつだって、そうなんだ、フジのことをわかってくれようとしないんだ、ぎやああん、わん、わん!」

 いや、いつもはともかくとして、これに関して言えば、わかってくれようとする、とかしないとか、ということではなくて、その、あんたの両親が国際結婚なんぞをしちまったゆえの、いわゆる『育ち、とか習慣、とか、価値観の違い』からくる、あれ、なんである。けど、それを説明するにはちょっと早いしな・・・・。

 「わかった、わかった、かつれいしなから、もう泣くな。な?かつれいしないからさ。」
 と平然と、泣き喚く息子を眺めているさい君をよそに、僕は
 「象さんを切るなんていやだー!」
 とたくましくした自らのまがまがしい想像からくる恐怖に、さい君の母国語と日本語をごちゃ混ぜにして泣き喚く息子の肩を抱きながらなだめてやりました。

 こうして、暫時、我が家のJr.の『そのまたJr.を切る』ことは、済し崩し的に検討されなくなりました。
 けど、と僕は思うんです。
 あれえ、自分の人生のひとコマとして、なんだって『割礼に恐怖して泣く我が子を、わかったわかったしないから、って肩を抱いてなだめる』なんて役割を僕が演じているんだろう?って。こんな場面はたいてい予想していないです。
 ま、それもこれも僕が『成り行き』に任せて生きてきたことの結果みたいなので、そろそろ主体性を持って生きてみたほうがいいかしらん、って思い始めてます。
 ちょっと遅きに失したみたい、ですが。

 ・・・え?女性の場合の割礼は、何をどういうふうに『ちょっきん』するのか、説明がない?
 いえいえ、そういうことは自分で調べましょう。僕も『正確なこと』は存じ上げません、ので。

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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