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ツバメの巣。

 息子が唐突に言いました。
 「パパ、『ひとづま』って、どうゆういみ?」

 僕は、真剣に憂いています。他ならぬ息子の『おつむの出来』についてです。こいつは、どうも出来が悪いんじゃないかなあ、と悩んでいるのです。
 僕が、そう考えるに至った拠り所になる事例、をあげると枚挙に暇がありません。

 ある日、駅を降りて息子と一緒に家に帰る途中、彼が嬉しそうに言いました。
 「パパ、知ってる?あそこのクリーニング屋のところにね・・・。」
 「おお、知ってるぞ、ツバメの巣だろ?」
 「へえ、何で知ってるの?」
 「いや、パパも仕事の行き帰りに見つけたんである。」
 「そう!あそこの、コウケイトウの裏にあるんだよね!」
 「・・・いや、あの、『けいこうとう』じゃないのかね?」
 だいじょうぶか、こいつは・・。混血で母親とは日本語であまり会話をしない、とはいえ日本生まれ、日本育ちの9歳だろ。
 「そう、それ。それでね、雛が3匹いるんだよね!」
 それに、三匹じゃなくて三羽だろう、しかし、息子は、せっかく僕が指摘した『コウケイトウ』の誤謬も軽く流してしまいました・・。

 さらに過日、彼が彼の祖父からプレゼントされた大きな地球儀を嬉しそうにぐるぐる回して見ていたと思うと、
 「パパ、『アイスランド』っていう国と『アイルランド』っていう国があるんだね!?』
 「うん、そうだよ。」
 「なんだか、やかましいねえ。」
 「・・・いや、『ややこしい』だろ?」
 「そう、それ。名前が似てるよねえ。」
 またしても軽く流されてしまいましたが、こんな基本的な日本語ができないで、こいつまともに生活できてるのかな?

 加えてもっと親を心配させるのは彼のテストの答案です。先日、ぐしゃぐしゃになった社会科のテストの答案を、さい君が、僕に押し付けるように見せました。
 「これ、みて、ケイタ、間違いだらけ!」
 どれどれ、間違いくらいありなむ、そんなにカリカリしなさんな、と鷹揚に答案を見始めた僕の表情は、しかし、次第に険しくなっていきました。
 その試験は、左上にまず、『水に関すること』が図や絵で示されていてそれを見て、続く問いに答えるようになっています。浄水場の簡単な図解や、家庭で使われる水の用途の簡単なグラフ、などについて『浄水場で水をきれいにする設備はどれでしょう。記号で答えなさい。』とか、『おうちでつかわれる水でもっとも多いのは何のためですか?』などと問われているわけです。それで、愚息は何問か間違えているんですけど、その間違え方、が悩ましいんです。

 問題
 『東京で使われる水が増えているのはなぜですか?』
 息子の記入した答え
 『そういうふうに左上にかいてあるから。』

 「おい、フジ、これ何だよ。こんな答え方するやつがあるか。」
 「だって、そうじゃない?そこにかいてあるでしょ?」
 「・・・・・・。」
 もちろん、彼の答案は、コメントなしで、冷徹にバツにされています。ごもっともです。それどころか、親としては斯様な答案につきあっていただく先生にまことに申し訳がたちません。しかも、こういう答案を彼が斜に構えて、諧謔で書いているならともかく、彼の場合は諧謔でもなんでもなく、真剣に考えた末の回答なんであります。
 さらに答案をくだって見ていくと、間違えたところや、答えられなかったところを復習のために、赤字で自分で正答を記入させられているんですが、なんだか妙な正答記入がありました。僕は、僕の悩ましさに関係なく、じゃがりこをばりばり食べることに専心している息子に、やや、いらいらして聞きました。
 「おい・・これ、なんだ?『工失』って・・・」
 「ああ、それ、それは『くふう』だよ。」
 息子は、じゃがりこを食べながら僕のほうも向かずに造作もなく、退屈気に返答します。
 「『くふう』だ?おまえ、漢字が全然違うだろ?パパ、わかんなかったぞ。」
 それに対して即答した、息子の言は僕の頭の中を一気にもやもやとさせました。
 「べつにいいじゃない。こくごのしけんじゃないんだから。」
 よくない!未来ある少年が、そこで達観してどうする。不安だ、基本的に『出来が悪い』って奴じゃないだろうか、こいつ・・・。

 そんなある日のことです。夕食を囲んでいたら、息子が唐突に言いました。
 「パパ、『ひとづま』って、どうゆういみ?」
 「ええ!?」
 うひゃあ、『蛍光灯』も正しく言えないくせに、なんだってそんな言葉を!・・・・。

 ええと、世の女性におかれては誤解しないで聞いていただかなければなりませんが、こういうとき、大人の男性というのは、どき、っとして、ほぼ同時に何をするのかというと、『ええ、俺がなにか、そういう類のもの、-紙媒体方面関係とか、ネットの履歴方面関係とか、-を息子の目にはいるところに残してしまったのか!』と自問する、んであります。いえ、『そういう類のもの』を確かに鑑賞した覚えがあるか、どうか、はぜんぜん関係ないんです。はい。大人の男性といのはそういうもの、つまり身に覚えがあるかどうか、に関係なく、そういう思考に走るわけです。僕に言わせると100%そうですね。だから、世の中の分別のある女性の皆さんはこういうとき、大人の男性が挙動不審になったからといって、余計な探りを入れるのはやめましょうね。

 ここは動揺しているところを息子にもさい君にも見せてはならん、と、-その実盛んに動揺しながら-、僕は平静を装って答えました。
 「ええと、結婚している女の人、のことだな、うん。」 
 「ふ~~ん、じゃあ、ママも『ひとづま』なの?」
 え?ええと・・・、いや平静、平静に。
 「うう、ま、まあ、そうだな。」
 「ふうん、じゃあ『いけないひとづま』は?」
 「え!?」
 い、いけないひとづま、あああ?そんな言葉は、長く本邦で男性をやっているあんたのパパでも(心の中で、ならあるのか?、は今はともかくとして)たぶん、まだ声に出して言ったことはない、と思いますぞ。こいつ、『やかましい』と『ややこしい』も使いきれないくせに、『いけないひとづま』なんて言葉を何でまた、しかも突然に・・?これはやっぱり、家庭内唯一の大人の男性が何か『サムシングそういう類のもの』を残してしまったのか???僕は大いに動揺しましたが、その場は適当なことを言って切り抜けました。

 ・・・後日、息子の語彙の出典は『クレヨンしんちゃん』であることが判明いたしました。確かに僕自身も嫌いじゃない、どころか、さい君の冷めきった視線をよそに、息子と一緒になって『クレヨンしんちゃん』を見ては爆笑しているけれど、出典がわかってしまうと、なんだか、やっぱり幼いなあ、彼の祖父が買い与えた『十五少年漂流記』は全体いつ読み始めるんだ、この男大丈夫かあ・・、とそれはそれで、心配になりました。

 尚、じゃあ、僕が実際に『サムシングそういう類のもの』に関して身に覚えがある『いけない父親』かどうか、という点については、本旨ではないので、ここでは灰色にしておきます。はい。
 いや~~~、悩ましい。

===終わり===
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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