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痛い!!⑥

 ひゅー、ありが、ぱんぱん! ござい、ひゅー、す、ぱんぱん!打ち上げ花火の音と冒頭の言葉が重なってしまい、失礼いたしました。本ブログは、遅々として増えぬ読者数も、ものかわ、めでたく100回目を迎えることとなりました。これもひとえに僕のひとがらのなすところかな、と、ひゅー、ぱんぱん!

 と、いうわけで、今回は久しぶりに『痛い!!』シリーズです。

 忘れもしません。高校二年の秋、僕が所属するラグビー部が全国大会地方予選の1回戦に臨んだときのことです。試合会場は某日本大学系列高校のグラウンドでした。そんなことまで覚えています。止んではいたもののかなりのまとまった量の雨の後でグラウンドコンディションは最悪でした。
 ことが起きたのは後半もかなり進行した時間帯でした。ボールを自ら持ち込んだ僕は敵に捕まり、後からフォローに来た味方側に体をひねりつつも敵に絡まれて、味方にもボールを渡せない状態に陥りました。僕と僕が持つボールを中心に敵FWと味方FW十数人が拮抗し、おしくら饅頭のような状態になってしまったわけです。当時のルールでは、そういうときはこのおしくら饅頭全体を相手陣に押し込んだチームが有利とみなされマイボールを獲得することになっていました。抱えているボールをとられないように敵に背をむけ転ばないようにやや姿勢を低くし、ひとり味方に正対しておしくら饅頭の中心にいた僕は、これはボールを移動するのは難しい、と判断し、
 「(球は)出せないから押せー!押せー!」
 と形勢有利によるマイボール取得のために指示を出しました。僕のチームはこの声を聞いてボールの取り合いっこを諦め、おしくら饅頭全体を押し込むことに力を注ぎはじめました。それが奏功し、おしくら饅頭はじりじりと敵陣方向に移動し始めました。よし、これで『優勢』をレフェリーからとりつけられる。
 「押せー!」
 僕はかさにかかって叫びました。
 そのときです。僕の記憶によると敵のプレーヤーのひとりが、僕らの押しに崩されたのか、それとも雨のあとのぬかるんだグラウンドに足をとられたのか、僕のすぐ後ろに倒れていました。僕の踵がそのプレーヤーにひっかかり、僕はボールを抱えたまま仰向けに倒れかけました。味方はそんなことには関知せず、依然全力で押してきます。僕はとうとう味方FW6,7人の体重をうけたまま地面にたたきつけられました。そして運悪く、そのとき僕の眼前にだれか味方FWの頭があったようです。即ち、僕の顔面は味方FWの体重がかかった彼の頭と地面の間で挟み打ちにあって叩きつけられてしまったのです。
 実はその直後のことは僕自身はあまり覚えていません。ただその場にいた味方にあとで聞いたところによると、おしくら饅頭が倒れてレフェリーが笛を吹いてプレーを切ったあと、-僕の目論見の通り味方のマイボールで試合再開になったはずです。-、グランド中に響きわたるような、-チームメイトの言葉を借りると『北斗の拳でケンシロウにやられた雑魚みたい』な-、
 「うおおおおおお!」
 といった言葉にならない大音声を上げたんだそうです。瞬間、何が起きたのかわかりませんでした。ただ、気がつくと、当時のラグビーというスポーツの恒例であった『とりあえず怪我したら、なんでもかんでもやかんの水をかける』という処置を、つまりグラウンドに仰向けに倒れたまんま顔面にじゃばじゃばとやかんの水をかけられ、レフェリーから、
 「わめくんじゃない!男の子なんだから!」
 と叱責を受けていました(今はどうだか知りませんが、レフェリーがなぜかプレーヤーに対してこういった教師然とした言動をする、というのもラグビーというスポーツにはよくある光景でした)。
 僕は、水もかけてもらったし、レフェリーの言うこともわからんでもないな男の子だし、と思い、立ち上がりました。
 「!!?」
 立ち上がったときに、自分に起こったことが、僕は全く受け止められませんでした。覚えのない感覚が鼻から口のあたりを広範囲に覆っていました。うん?なんだこりゃ????僕は、それまで経験どころか見聞きすらしたことのない大量の鼻血を左右の穴から流しはじめたんです。その量たるや尋常なものではなく、もし鼻の中に血を満タンにした風船があってそれを突然針でつついたとしたらこうなるでしょう、といわんばかりで『たらたら』などという可愛いものではなく『どばりどばり』という感じでたちまち鼻から下は血だらけになり、それでも鼻血は盛大に流れ続けました。
 やがてその様子を黙ってみていたレフェリーが僕の顔を覗き込んで、僕の鼻骨のあたりをちょこっとつまむと、さっきまでの叱責はすっかり忘れてしまったかのように、
 「ああ、だめだな、こりゃ。折れてら。」
 と呟きました。僕はその場で退場となり、グラウンド外でしばらく仰向けに寝かされていましたが、数分のち試合が終わった直後にグラウンドに到着した救急車に乗せられて某大学病院まで運ばれていきました。

 さて、ここで、ちょっと確認をしておきましょう。僕は『鼻骨陥没骨折』という怪我を負ったわけですが、鼻の頭を触ってみます。やわらかくてぼにょぼにょしています。これは実は、軟骨なんですね。だから簡単に曲がったり、損傷したりします。そこから指をすこし上にあげて小鼻のあたりを触ってみます。ここもやわらかいです。ここも、軟骨なんです。その上に移動すると目の付け根あたりまで堅い部分があります。これが『鼻骨』です。僕はこのとき、この『鼻骨』が『折れて』、かつ『陥没』していたわけであります。すなわち、顔を正面から見ると、目の付け根の下あたりから鼻筋が曲がっていて(僕の場合はむかって右に大きくずれていました。レフェリーが見た瞬間『折れてら』と『診断』できた由縁です。)、なおかつ横からみると鼻が顔面に陥没して凹んでいる、という状態だったわけです。簡単にいうと部分的にですが顔が原型をとどめておりません、ってことです。

 救急車には僕らの試合を観戦にきてくれていたOBの吉本さんが付き添いといて同乗してくれました。やがて、運び込まれた閑散とした大学病院(日曜日でしたから)では『耳鼻科』に行かされました。そのときは、突然のことに驚きつつもまさかあんなことが待っているとは思いもしなかったので、へえ、外科じゃないのか、などと妙に余裕をもって思った覚えがあります。

 待合室で、鼻をおさえつつ吉本さんと待っていると一旦奥に引っ込んだ医者が現れて、
 「ちょっとこっち来て。」
 とすぐ隣の診察室に僕を招きいれました。そして、歯医者の診察用のそれに似た椅子に上を見て座らせられると、淡々と、しかし、こちらに心の準備など与えてくれない早さで、
 「麻酔するから、ちょっと痛いよ。」
 と言うや否や、注射か笑気ガス吸引でもするのかな、と一瞬閃いた僕のその頭を、彼はその言葉のテンションとは裏腹に抱え込むようにがっちりと抑え込え、いきなり、長さ50センチ大、太さ1センチくらいの金属棒を右の鼻の奥深くに突き刺しました。
 「!」
 どうやらその金属棒の先に『麻酔薬』がついているらしいのですが、それは突き刺してから効いてくるわけであって突き刺すときの痛みは尋常ではありません。『痛い!』脳天に突き抜けるような痛みに我を失っている僕にかまわず、間髪をいれずに頭を押さえ込んだまま、左の鼻の穴にも金属棒が差し込まれました。
 「!!!!」
 とにかく痛いです。医者が『ちょっと痛いよ』といったのもわかるし、暴れないように強く頭をおさえつけたのもよくわかります。こ、これが麻酔、ってこんなに痛いんじゃ本末転倒じゃないのか、これでは『麻酔の麻酔』がいるんではないかね、とその痛さに驚愕しつつ、僕は両鼻から金属棒の半分をぶらさげた状態で涙目になって待合室に戻りました。ただ、僕は痛かったけれど、これは麻酔なんだからこれからやることが痛くないための、いわば産みの苦しみなんだから、それになんだか麻酔が効いてきたみたいで、鼻の奥の痛みも少しやわらいできたんではないかしらん、まあこれ以上痛いことはないわけだ、と思い、金属棒をぶらさげたまま、僕を見て唖然として、その後、笑いだしてしまった吉本さんと雑談などする余裕も出てきました。
 「いやああ、これが『麻酔』ってむちゃくちゃ痛いっす。」
 「鼻の骨を折るって、『一二の三四郎』の『五頭信』みたいですよね、知ってます?』
 だの、
 「どうやって治すんですかね、まさか金槌なんか持ってこないですよね?」
 だのと話した覚えがあります。

 数分後、奥から医者が(40代後半くらいの男性で眼鏡をかけた痩せたお医者さんでした。)でてきました。彼はまるで平静に、
 「じゃ、治そうか。」
 と小さな声で言いました。
 その光景は、僕を慄然とさせました。医者の手には、数種類のやはり50センチ大の面妖な形の金属棒たちとともに『木槌』が握られていたんです。
 え・・・、本当に木槌なんか登場しちゃって・・・・。でもあんなに痛い思いをして麻酔をしたんだから、きっと大丈夫だろう、うん、きっと。

 僕は、再び診察台に仰向けになって座らされると、今度は目の上に布がおかれました。施術の様子を本人にわからないようにするためでしょう。そして、医者が言いました。
 「ちょっと痛いぞ。」
 え?それってさっきも聞いた台詞では・・・・・・。

 「!!!」
 その瞬間、鼻に何かをひっかけて全身を吊り上げられたような衝撃を覚え、体中を走るものすごく鋭い痛みを感じました。医者はまず、面妖な金属棒を右の鼻の穴奥深くに突き刺し、それを力任せにてこの原理でもって、ぐいぐいと左右に動かしていたのです。痛い、耐えられん!
 僕が無言をもってこの荒業に応えていると、次に信じられない行為が行われました。医者は『金属棒ぐいぐい』をやったあと、今度はその金属棒はそのままに、その端を木槌で思いっきり叩きはじめたのです。ちょうど彼が彫刻家でのみをもってそれを叩いているのであれば、僕は削られる木ですね。
 「       」
 その打擲の衝撃と痛みたるや、そのせいで頭も心も真っ白になり言葉も沸いてきません。いつのまにか目を覆っていた布はでどこかへ吹き飛んでしまい、いまや僕のまさに『目と鼻の先』でその荒療治は進行されていました。あの麻酔はなんだったんだ!

 ここでちょっと確認しておきましょう。僕の鼻骨は何人もの体重と地面の間に挟み打ちにあったことで、『陥没して折れた』わけです。と、いうことは今考えると当たり前ですが、それだけの衝撃で損傷した骨を元にもどそうとしたらそれと同じくらいの或いはそれ以上の力を加えないといけない、わけです。そして、力を加えなけばいけないのは『両方の鼻の骨』です。そうです。つまり、同じ作業を『右でやったら左でもやる』んです。

 医者は、金属棒を僕の右の鼻から引っこ抜くと、今度は左の鼻の奥にうんと突き刺し、またしても力任せにこれをぐいぐいと動かしました。そして、当然のように木槌でこの金属棒を2回、3回と激しく乱打しました。
 「っつうう!」
 
 ようやく一連の作業が終わり、僕が息も絶え絶えに悄然と横たわっていると、医者が大きめの手鏡をもってきて、僕の顔に前に持ってくると、すこし小首を傾けながら、言いました。

 「ええと、君の元の鼻の形はこれかな?」

 原型を留めていないから医者にはわかんないので、持ち主の本人に確かめるしかないわけです。
 しかし・・・・・。その鏡に映っている顔は僕が親からもらったそれとは大きく乖離していました。鼻筋こそまっすぐに戻っているものの、鼻骨が大きく隆起していてなんだかごつごつしています。僕の『もともとの鼻』はお世辞にも高いとはいえませんが、鼻筋は通った遠慮がちな形でした。よくいうと赤ん坊のような鼻ですね。こんな自己主張のはげしい鼻筋ではなかったはず・・・・。

 「違います。」

 ああ、なんということを言ってしまったんでしょうか。医者は僕の言を聞くと、
 「あ、そう。どんな風に違うの?」
 「いやもっとこの部分が低くて・・」
 「ふん、じゃ、もう一回ね。」
 医者はまるで祭りのくじ引きかのように気楽に言うと、ふたたび阿鼻叫喚の治療を始めました。今度は僕は、すでに痛みを知っているので、『覚悟』はできていますが、一方で、『知っているからこその恐怖』は尋常なものではありませんでした。ふたたび金属棒をグサッ、ぐいぐいぐいぐい、木槌でかんかんかんかんかん!を今度は初めから最後まで眼前でやり、当然のように右、左、と同じことを繰り返しました。僕は、耐え難い痛みの中で、それでもどうやればこの痛みに打ち克てるだろう、と模索しました。いままでの人生で一番きつかったことと比べてみよう・・・そうだ、高校2年の夏合宿の最終日、あれはきつかったぞ、あれを思えばこんなもの・・・だめです。一瞬頭に浮かんだ夏合宿の最終日も木槌一発で吹き飛んでしまいました。いたあい!

 「ええと、君の元の鼻の形はこれかな?」

 再び小首を傾げつつ鏡を持ってきて医者は尋ねました。僕はもうこれ以上の荒療治はごめんだ、という期待をもって鏡を見ました。
 ・・・・違う。どうしよう・・・・・。
 
 違うんです。まだ元の鼻ではないんです。
 僕は迷いました。ここで、これでいいです、と言えばこの地獄のような痛みの繰り返しから解放される、しかし、ここで妥協すれば、俺は明日から一生この変わりはてた形の鼻とともに生きていくのか・・・。

 初めての鼻骨陥没骨折矯正手術である(たいてい初めてですよね、こんなもの)という勢いのせい、もあったと思います。若さもあった、と思います。もし、今同じ質問をされたら僕はとてもあの痛さに自分が耐える自信はありません。時間的には短い、しかし、非常に濃密な葛藤の後、僕は逞しいことにと言おうか、恐ろしいことにといいましょうか、再度言ったのです。
 「・・違い・・ます。」
 「ええ、そうかあ??骨の形状からしてだいたいこんなもんだと思うけどなあ。」
 「違うんです。」 
 「そう、じゃあ、やるか、きみ、我慢強いねえ、こないだやった奴なんか一発たたいただけでもう駄目です、なんていいやがってさ。」
 いや、決して我慢強くないです。

 僕はみたび木彫りの木になりました。いままでの人生のどんなにつらかったことも比肩できない痛み、それからくる恐怖、と三度対峙することになりました。眼前にせまってくる金属棒、三回目だから慣れてたりして・・・・・、浅はかな期待でした。最早顔面は涙と汗と血でどろどろになりながらの、みたび脳天を貫く痛みを右左の鼻から受け、三度目の鏡での確認です。
 医者が言いました。
 「こんなもんだろ?」
 ・・・ちょっおおと、違うな。
 でも元にはもどんないだろうからこれでよし、としよう。
 というわけで、最終的には親にいただいたそれとは『若干違う鼻の形』で、ぐいぐい、かんかんかん、これかな?、を終えました。

 僕は、ようやくメインの荒療治から開放されました。が、そのあと、-人間の鼻の穴って深いものなんですね、今でも耳に残っているんですけど、医者が看護婦に『血止めしよう。脱脂綿20センチ。』って言ったんです。そんなの入るわけないじゃないか、って思ったことをいまでも覚えています。-、左右の鼻の穴に脱脂綿が20センチずつぎゅうぎゅうと押し込まれ(実はこれも『特筆すべき痛さ』でしたがメインの荒療治に比べればまだ『まし』でした。)、鼻骨の横をなんだか柔らかいもので、固定し、それを右のこめかみから斜めにひだりの口の上あたり、左のこめかみから右の口の上あたり、とテープを貼り付け、-ちょうどテープがX印状に顔を覆う形になります。-、そのテープの端を額に左右に貼ったテープで固定し、最終的には、テープが大きく『又』という漢字を僕の顔面に描くように貼られ、さらに大きなマスクをして顔面真っ白にされて治療を終えました。

 そのとき、同席して一部始終を見ていた吉本さんからは、後日なんども、
 「おまえさ、あのとき、1回目だか2回目のとき高くて格好いい鼻だったのに、なんで『違います!』なんて言ったんだよ。」
 と言われました。でも僕にはなんだか下品な鼻にしか見えなかったんです。あれだけの騒動のあとのことなので、本当のことは言っていないかもしれませんが、一応親は『もともとの鼻よりもよくなった』と言ってくれています。

 尚、肝心(という表現がこの場合適切かどうかは迷うところですが)の試合のほうは、最悪のグラウンドコンディションにもかかわらず、32対0という大差で勝ちました。斯様にスコアまで詳細に覚えているのは、あんな痛い代償を払うほどの試合内容ではなかったじゃねえか、とそのとき思ったからです。

 それと、この話には、ささやかながら後日談がありますが、それはまた次回に。

 ひゅーうう、ぱんぱん!

===終わり==
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緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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