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渋い。

 僕の伴侶が外人である、と知った人によく聞かれる質問があります。
 それは、
 「あんたは家では一体何語をしゃべっておるのか?」
 というものです。
 結論からいうと、僕とさい君の会話は99%さい君の母国語です。そして、さい君と息子の会話は、そうだな、90%さい君の母国語、10%日本語、ですかね。ついでに言うと、僕と息子の会話は、だいたい80%日本語、20%さい君の母国語です。
 ほう、では、あんたのさい君の母国語レベルはどれくらいなのかね?というと、まあ『NATIVE』には程遠い、けど会話には困らない、という感じです。
 そんな曖昧な言い方ではよくわからん、と思われるのはごもっともなので、もっと客観的で、具体的な表現を借りましょう。僕が持っている、さい君の母国の政府公認の言語技能検定試験の等級の基準には、こうあります。

 『新聞記事、文献を読んで翻訳でき、平易な業務文書を書いたり、簡単な通訳ができる。職場や社会生活に必要な言語を理解し、使用できる。』
 
 本人としては、その試験の難易度に比べてやや評価が辛い、実はもっとできると思うぞ、と感じないこともないですが、たぶん、当たらずといえども遠からず、これくらいのレベルでしょう。
 じゃあ、上述のレベルの外国語での夫婦間のコミュニケーションには支障はないのか、と聞かれると、これは、なんとも言えないです。
 と言うのは、先に述べたように僕はNATIVE SPEKEARではないので、当然限界があります。一方、さい君の日本語は、というと、まことに心許ないレベルです。
 -ただし、これは、さい君曰く、殆ど僕の責任だそうです。『あんたが、家で全然日本語を話してくれないから、私の日本語が一向に上達しないではないか』といつも言っています。前にも書きましたけど、さい君は、その流暢さの順番でいうと、さい君の母国語、英語、中国語、日本語、を喋ります。一方僕の言語の順番は、順位でいうと、一番日本語、二番さい君の母国語、三番無し、四番無し、五番無し、六番英語、以上、というところです。だから、結婚前から僕らふたりの間の会話は、英語ではなく、さい君の母国語で今に至るわけです。英語では疲れちゃいます。そして、これは、僕にしてみれば、日本語で話しても理解してもらえないし、妙な日本語で話しかけられるのも困るので、仕事で疲れて帰宅した後に『できるだけ快適な環境を選択した結果』なんですね。だって、外でも上司や取引先とのコミュニケーションに気を使い、家でも会話に頭を使う、ってことになったら気を休めるときがないです。だから、僕は、朝、家を出るときと、帰宅して家のドアを開けるときに、頭の中の言語のスイッチをそれぞれ、出勤時『日本語』に、帰宅時『さい君の母国語』に、パチリと切り替える、という感じです。-
 まあ、いまのところは結婚生活を継続できているので、結果としていいや、ってところです。ただ、お互い、無意識のうちに、NATIVE同士のカップルに比べて、なにかしら『取捨選択している』ことはあると思います。
 例えば、さい君は『これは難しい単語だから、だんなに話しても分からないな』と、僕の言語レベルを理解したうえで、使わない言葉があるだろうし、僕は僕で、『今日こんなことがあって、こう思ったけど、これは、ちょっとさい君の言語で表現するのは困難だから、言うのはやめちゃお。』なんてことを頭の中でやっている、と思います。

 「ほう、そうか、家では日本語を使わないのか、それで困ることはないのか?」

 という、質問もしょっちゅう受けます。これも返答に困りますね。
 なぜなら、この質問の根底に潜在しているのは『日本人同士の夫婦に比べたら・・・』という前提なんでしょうけど、僕は日本人と結婚したことがないので、実際には比較のしようがないから、です。まあ、夫婦のコミュニケーションって、こんなところかな、という感じで、いまは良し、としています。だって、夫婦に限らず、日本語を使う人同士でも、
 「だめだ、この人とはどう努力してもコミュニケーションは取れない!」
 ていうことは数多あるじゃないですか?ええと、例えば、そうだなあ、僕と佐川担当課長とか、ですね。

 ただ、どうしても通じない、ということは稀にあります。先日もこんなことがありました。
 さい君の職場で『女子会』があったんだそうです(最近、家でじっとしているのが嫌だ、といって、さい君は近所の町工場でパートを始めています。事務職ではないので、さい君の日本語レベルでもなんとかなっているみたいです。)。
 それで、さい君はみなさんと二次会でカラオケボックスに行きました。そして、帰宅したさい君が開口一番こう言ったんです。
 「ねえ、ケイタ『シブイ!』ってどういう意味?」
 え?
 「なんだよ、急に・・。それはだな、味覚の一種で、なんというか苦いと言うか・・・」
 と僕が限られた語彙の中でさい君の国の言葉で説明しようとしたら、すかさず、さい君に遮られました。
 「味覚?違う、違う!」
 は?なんかおかしいな。
 「どういう時に使われたのかね?」
 「あのね、カラオケに行ったの・・」
 「ふむ。」
 「それでね、せっかく行ったのに、みんな恥ずかしがって、誰も最初に歌いたがらないから・・・」
 「うん。」
 「行きたい、って言ったくせにめんどうなひとたちだなあ、と思って・・」
 「ほう。」
 「私が最初に曲を入力したら・・・」
 「したら?」
 「その曲を見たおばさん達全員が『シブイ!』って声を揃えていったの。なんて意味?」
 おう、そっちの『渋い』かあ・・。これは難易度が高いぞ。
 僕は、いろいろ苦労して『決して派手ではないけど、でも、ネガティブな意味でもなくて、価値がある、みたような・・・』と長々と説明してみましたが、さい君はうまく理解できません。『日本語』/『さい君の母国語』、の辞書を引いてみましたが、辞書にも『味覚』ではなくて、『困った顔』でもなくて、『けち』の意味でもなくて、『味わい深い』ほうの意味は適切なのが載っていません。
 しかも、どうも、この言葉には、他の言語への翻訳も困っているらしく、インターネットでいろいろ調べていたら、なんと、
 『"shibui" はオックスフォード英語辞典の中に収録されている日本語のうち、唯一の形容詞』という事実にあたりました。英語界でも、『渋い』にあたる単語はないようなんですね。

 結局、僕は今に至るまで、この単語に関しては、さい君を釈然とさせることができていませんが、そこは大らかなもんで、
 「まあ、たぶん、わたしの国にはない言葉ね。」
 といって、通過してしまいました。

 ところで、そういえば、この人はあまり日本語の歌は歌えないはず、と僕はふと思い、
 「何をリクエストしたの?」
 と聞くと、さい君は平然と即答しました。

 「テレサテン。」

 渋っっ!!!

===終わり===
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プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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