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盲腸。

 僕の息子は、一応子供部屋をあてがわれているし、我が家にとっては安からぬ勉強机まで買ってもらっているくせに、いつもリビングで宿題をしています。普通は、リビングなんて邪魔が多くてお勉強には集中できないと思うんです。でも彼はそれでなくても元来が落ち着きのない性格なのに、周りに人がいないところでは勉強ができないとみえて、いつも食卓でノートを広げています。
 じゃあ、そういう環境下ならすごく集中力を発揮するのか、というと、これが全然で、しょっちゅう自分から周りの人間に話しかけたり、机から離れてうろうろしたり、しています。
 僕は、何度も、
 「宿題をするときは、自分の部屋の自分の机でやれ。」
 て言うんですけど、どうもうまくいきません。

 その日もいつものように彼は食卓で宿題をしていました。僕は、食卓近くのソファに寝そべっていました。
 と、それまで珍しく黙って宿題をしていた息子が、視線はノートに向けたまま、突然言いました。
 「パパ、にんげんのからだのなかで、やくにたたないもの、ってなんだと思う?」
 ああ、面倒くさいなあ、だいたい今そんなこと関係ないだろ、と思いつつ僕は適当に返答します。
 「盲腸じゃないか。」
 すると、僕のほうを一瞥もせずに、息子は言いました。
 「もうちょう、は役にたっているんだって。じゅくの先生がいってた。」
 ううむ、そうなんだよなあ・・わかっていたけど、そう来たか。大人としては妥当なところを言ったつもりだったけど、これは一昔まえの常識らしくて、どうも最近では盲腸もそれなりに役にたっているというのが常識らしいんですよね、真偽の程は定かではないですけど。
 知っておったか。面倒くさいな。
 「うん、そうか。」
 「ほかには?なにがやくにたたないと思う?」
 なんだろうなあ、あんまり思いつかないし、ちょっと疲れてるし、深く関わりたくない気分なんだけど。
 「うん、なにかなあ・・・」
 それより、宿題に集中しろよ、と僕は、やや、いや、かなり、お座なりに対応します。
 すると、息子がさらりと言いました。
 「セイツウは?」
 え!?僕は、反射的にがばりと半身を起こし、なにか聞き違いでもあったのか、と息子のほうを凝視しました。
 今、確か、せいつう、って言ったよな???息子は、依然としてノートから視線を逸らさず、鉛筆を動かしています。
 セイツウ、せいつう・・・・精通・・・。何度反芻しても僕が、『人間の体に関しての名称として』思い浮かぶ『せいつう』は『精通』しかありません。
 ええと、俺って今、『息子から、精通って言われた父親』なのかな・・・??
 僕は、心中大いに動揺するも、できるだけ平静を装いつつ、聞き返しました。だって、そのまま看過しがたい発言に思われたからです。
 「ええ、おい、フジ、今何ていった?」
 すると、息子は、即答しました。
 「せいつう。」
 ・・・やっぱり、聞き間違いじゃないな。たしかに『せいつう』って言ってる・・・・。続けて僕は再び平静を装いながら聞き返しました。
 「・・・それって、何だ?なんでそんな言葉知ってる?」
 息子は、従前と同じように淡々と返答します。
 「うん、こないだ学校で習った。」
 ほう、性教育ってやつか・・・。僕は少し安心しながらも、はて、我々の時代に比べてちょっと時期が早いような、それに、学校で習ったからといって、そんなこと家庭での話題、それも宿題中の無聊つぶしにするかな、普通はちょっと恥ずかしいものなんじゃ・・・といろいろと考え込んでしまいました。
 と、息子は、そういう父親の心境を知ってか知らずか、さらに視線を机にむけたまま、またしても淡々と、こう続けました。

 「せいつう、ってね、ちゅうがくせいになったら、ちんこの先から『しろいスライム』みたいなものが出てくるんだって。」
 「!!」

 唖然とする僕に視線すら投げずに、息子はさらに続けます。
 「意味ないよね?」
 「・・・・・」
 「パパもちゅうがくせいのとき、でてきたんでしょ?」
 「え??いや・・・う、うん、そ、そうかな。」
 「そんなの、やくにたたないよねえ??」
 「へ・・・?」

 ・・いや、意味ないって・・・・そういうわけじゃないんだけど・・・。
 僕は、戸惑いつつも、一方で息子がなんだか、怪しげな媒体や猥談などからそういう知識を得たのでないことには、少し安心しました。けど、こういう結果というのは『性教育の成果として奏功している』といえるんでしょうか?
 だって、息子は、『中学校に進学して、詰襟の制服を着て、生徒手帳をもつ身なんぞになったら、あら不思議、男性器の先から、ポンっとしろいスライムみたいなものがでてきます。以上。』って思っている様子なんですよね。

 こうやって、今ブログを書いている僕の目の前でも、宿題中のはずの息子は甚だ注意散漫な様子で、
 「パパ、見て見て、ぎりぎりセーフ!」
 なんて言いながら、たまたまそばにあった、『ニッパーの持ち手側で、おちんちんを挟んでみて、ぎりぎりのところで挟み切れない』ことを披露して得意満面です。

 ・・・ま、今のところは、こんな感じで良しとしますか・・・。
===終わり===
 
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白昼。②

 以前、僕の課長だった人の口癖のひとつが『Nobody is perfect.』でした。
 実際、欠点の無い人間なんかいない、とは思いますが、僕はというと、驚くまいことか、すごく欠点が多い人間です。それがまたおかしなことに年齢を経るたびに、欠点が新たに増えたり、従来の欠点がさらに深みを増したりするので、重ねて驚いてしまいます。もはや『欠点』というより『欠陥』に近くて、現在の僕という人間の有り様は『欠陥がワイシャツを着てネクタイを締めて通勤している』ようなもんです(もちろん、決して、それでいいや、とは思ってません。)。
 そんな僕の、あまたある欠点の中でも、筆頭格に挙げられ、かつ深刻なのが『行動力無き事』です。
 これはまことに重大な欠点というべきで、よく、
 「私の長所は行動力のあることです!考える前に、行動してしまうタイプです!」
 なあんて言う人がいるけれど、そういう人に出会うと、心底羨ましいなあ、と感心します。その表現を借りるなら僕は、
 「考えに考えた末に、結局行動しない。」
 しかも、
 「行動しなかった結果が招かれざる事態を招いても悔やむどころか諦念してしまう。」
 という人間だからです。実に憂慮すべき欠陥です。

 けれども、そんな僕でも、ごくたまに、本当に稀に、そうですね、数年に一回くらい、ほぼ反応に近く『全く考えもせず行動に出てしまう』ことがあります。
 先日もそうでした。

 その日、僕は、さるファストフード点のレジの前の行列に並んでおりました。カウンター向こうでは、店のロゴの刺繍されたお揃いの帽子、ポロシャツ、エプロンに身を包んだお姉さん二人が、その頬に笑みなどをたたえつつテキパキと客の注文をさばいております。と、そこへ、いかにも『たった今、休憩から戻り、馳せ参じました!』という風情のお兄さん一人がレジの応援に駆けつけました。お兄さんは、やはり、お揃いの帽子、ポロシャツ、でしたが、急いで駆けつけたと見え、エプロンは手に握り締めたままで、まだ身に着けておりません。そうこうするうちに程なく、僕の順番が来ました。僕の接客をしてくれるのは休憩上がりのお兄さんです。
 その時、僕は始めて気がついたんですけど(それも後述するようなことがあったからこそです。)、その店のカウンター内は客席よりやや床が高くなっていて、僕の目線はお兄さんの腰のあたりにありました。特に支障はないです。
 お兄さんは、まだバタバタとしながら、エプロンを片手に掴み、それを着ようとしながら、僕への応対を始めました。これもまた、別になんてことはないです。僕は僕で、『おうおう、客の相手するんならちゃんと身支度を先に整えてからだろ!』なんてことは微塵も思わず、淡々と注文を終え、そして支払いをすませようと、お兄さんを再度凝視しました。

 そのときです!

 僕の視線に真正面に、しかも至近距離から、『お兄さんの股間のファスナー全開』が飛び込んできました。
 全開も全開、それはまあ、見事な全開で、遠慮がちに開いているのではなく、取っ手が下まできっちり下げられているのはもちろん、ファスナーの開き方も、綺麗な線対称の縦ひし形です。そうですね、例えていうと『マカロニほうれん荘、の登場人物が驚いたときの口の形』そっくりです。今にでもその股間が『きんどーさん!』なんて言い出しそうです。
 ううむむ、なんということだ!
 僕の視線は、ちょうど僕の目線の高さにあるそのマカロニほうれん荘に、そのあまりの見事さに、否も応もなく惹きつけられてしまいました。僕は、全く目線をそらさず、しばし、お兄さんの股間と瞬きすら無しに、睨みあっておりました。
 お兄さんは、もちろん、気付いていません。果たして、次の瞬間、僕がせっかく、お兄さんの股間の『きんどーさん!』を見続けているにも関わらず(そら、そうです、マカロニほうれん荘と違って見世物じゃないんですから)、幕が下ろされるように、エプロンによって、その綺麗なひし形は僕の視界から瞬時に消えてしまいました。お兄さんがエプロンを着用したわけです。
 もちろん、ファスナーは全開のままです。
 普段の僕なら、『これは、黙っておくべきかなあ。エプロンで誰にも見えていないわけだし・・』とか、『いやいや、いやしくも接客業、それも飲食業で『きんどーさん!』はなかろう。だいたいが、その前にお兄さんの如何なる行動の結果が斯様な事態を惹起したのか、まことにわかりやすい、しかし、したくもない推測までしてしまうではないですか!?』だの、『同姓の経験からいって、いつかは自分で気付くはず、だからここは見なかったことに・・・・』などと、まずは黙ったまま、しばし心と頭を千千と乱してしまうところです。
 ところが、そのとき、自分でも信じ難いことに、僕はまさに『何も考えずに』行動に、いやそれはむしろ『反射』といったほうがよいでしょう、に出たのです。
 すなわち、エプロンによって幕がおろされた瞬間、あろうまいことか割としっかりとした声で、
 「ファスナー開いてますよ!」
 と面と向かってお兄さんに言ってしまったんです。
 これには自分でも驚愕しました。己が股間の『きんどーさん!』を指摘されたお兄さんは、それはそれは狼狽しながらレジを離れ、一瞬姿を消すと-さすがに、お客さんの前で、ファスナーを閉める、という不手際は避けたようです。-、間もなく現れ、
 「たいへん、失礼いたしました。」
 とやや小声で、僕に言いました。

 ・・・・・『行動力無き事』が欠点の男が、珍しく、本当に珍しく、僕らしくないことに反射的に行動をしてしまったわけですが、今でもその時のことを振り返ると、
 「果たして、指摘してよかったのかしらん?・・・確かによろしくない状態だけど、そもそもエプロンで見えなくなったわけだから、俺以外のお客さんは別に不快な思いはしないわけだし・・・。でも、見えないつったって、飲食業で、マカロニほうれん荘はないよな。指摘してよかったかな・・・。それに、そうじゃないにしても後で、同僚の女性に指摘されたりするのは、見知らぬ客の俺に指摘されるより恥ずかしいんじゃ・・・。」
 などと、これはこれでいかにも僕らしいことに、ぐるぐると考え込んでいます。

 果たして、指摘してよかったんでしょうか?
 
 まっことに見事な、美しいまでのひし形、でありました。

===終わり===

白昼。①

 先日、白昼、凄いものを目撃してしまいました。
 
 当日は、確か平日のよく晴れた日で、僕は先を急いで雑踏の中を歩いておりました。
 それは、ふと僕の目先の雑踏の風景が少しだけ開けた瞬間に眼に飛び込んできました。
 その人は若い女性で、僕のほんの5メートルくらい先にいて、ブラウスに長めのタイトスカート、パンプスを履き、そのスタイルのよさを披露するかのように、背の中ほどまである黒髪を風になびかせ、かつかつかつっ、きりりっ、と先を急いで歩いていました。
 普通です。
 普通にある『街で見かけた美女』風、です。

 でも僕の視線はその女性のお尻の部分に一瞬にして吸い寄せられてしまいました。
 僕は、眼を瞬かせて、その光景をしばし疑い、そして、驚愕しました。別にその女性のお尻が特にセクシーだったから(セクシーでなかった、とは言いませんが)、とか、僕が異常に女性のお尻に執着があるから(女性のお尻が嫌い、とも言いませんが)、とかいうことではありません。
 僕の視線の先には、タイトスカートのウエストの部分からひらひらと舞う、『70~80センチ大のトイレットペーパー』があったのです。

 女性は、あきらかに気がついていません。トイレットペーパーは女性の、かつかつかつっという歩きにあわせ、微妙に右に、左に、交互に、その舞う方向をリズムカルに変えながら、ひらひらと宙をなびいています。
 僕は、驚愕しつつも、しばし、その『ひらひら』に視線を奪われてしまい、思考停止してしまいました。

 白昼、女性の腰に舞うトイレットペーパー・・・、その有り様は、あたかも腰にしっかりとしがみついた『妖怪・一反木綿』のようです・・・。いや、『一反』には長さでは到底及ばないので、そうだな、『妖怪・サンプル木綿』、といったところです。
 サンプル木綿は、太陽の光を浴び、その白さを誇るかのように、眼にも眩しく舞い続けます。

 僕は、妖怪・サンプル木綿に驚愕し、一反、いや、一旦、頭の中が晒した木綿色のように真っ白になったあと、はて、なんでこんなことが僕の前で起こっているのだろう、と理解しようと勤め、しばし、ははあ、なるほど!と勝手に心中合点しました。
 実は、信じがたいことに、僕も全く同じ結果を招いた経験があったからんです。
 その時、僕は、トイレの個室で用をすませ、トイレットペーパーでお尻を拭いて、ズボンを履き、個室のドアを閉めていつものようにトイレを後にしました。と、トイレを出て数歩のところで、背後に違和感を感じ、振り返ると背中のズボンの腰からトイレットペーパーが1メートルくらい出ているじゃあないですか。どうやらトイレットペーパーを使用してそれを切った際、どういうはずみか、使用した後の『ロールのほうに残っていた端っこ』をパンツを履く際にカラカラと『巻き込んで』しまい、巻き込んだことに気付かずに、個室をあとにし、巻き込まれたロールのトイレットペーパーは、しばし、引きずり出され『長さを稼いだ』あと、個室のドアを閉める際に切られた、ということのようだったんです。だから、『腰から1メートル弱のトイレットペーパーが垂れている』という構図(僕に言わせると『腰から垂れている』方は、メインではなく、『パンツに誤って巻き込まれたトイレットペーパー』がメインで、垂れているのはその残滓、なんですけどね。ま、どっちでも一緒です。)になったわけです。

 僕は、世の中の女性一般の個室での用足しには全く詳しくないので、僕のケースと彼女の妖怪・サンプル木綿とが同じ因果関係にある、とは断言できませんが、おそらく過程はともかく、『最終局面的』には同じことが起こったのだろう、と勝手に合点しました。
 しかし、僕が合点したところで、眼の前のサンプル木綿のたなびき、は別に無くなりません。あまりの隠し立てなしの(まあ、気付いてないんだから当たり前ですが)、堂々としたサンプル木綿の前に、僕は、結局合点はしたものの、ただただ凝視するだけでした。
 どうも周りの人も同じような状態みたいで、誰もその女性に関わろうとしません。
 依然、かつかつかつっ、ひらりひらり、は続行中です。
 そして、こういうときに限って間の悪いことに、女性の歩く方向と、僕の歩く方向は暫時同じ方向です。僕は意図せずして、サンプル木綿に、三歩下がってなんとやら、という風情で追従していく形をとっていました。

 さて、これから、どーする?
 僕は、眼の前の、妖怪・サンプル木綿の動きを眼で追いかけながら、しばし、考えました。
 
 ①そばに言って、肩をたたき、『すみません、後ろからトイレットペーパーが出てますよ。』と言う。
  ・・・いや、いかんでしょう。こういうのを異性に指摘されるのは、女性は恥ずかしいんでは?女性から指摘されたら恥ずかしくない、ってこともないだろうけど、どうせなら同性から指摘されるほうがいいに違いない。よし、異性からの指摘でも、こんな白昼の雑踏の中、というのちょっとまずいんじゃ・・・。もっと人影の少ないところでの指摘のほうがベターだろうし。きっと、ここにいる周りの人も同じように考えているに違いない・・・。
 これは、やめておくべし。

 ②背後まで接近し、女性が気付かないように、そっと、妖怪・サンプル木綿をちぎる。
  これは、なかなかの上策と思われます。なぜなら、そっとちぎって『無かったこと』にできれば、女性は、妖怪を腰からなびかせて街中を歩いたこと事態、未来永劫気付かずにすむ、わけです。せいぜい、次にスカートをお脱ぎになるときに、妙に半端に長いトイレットペーパーが、つまり妖怪の頭部が残っていて、『???』と思うだけでしょう。これはなかなかいいです。しかし、待てよ・・・。これは彼女のとって『見知らぬ男性』である僕としてはリスクが大きすぎないですか?だって、首尾よくいけば大団円ですが、もし、引きちぎるときに女性に気付かれてしまったら・・・・。女性が『お尻に何かが触れたような感触』がきっかけで後ろを振り返ると、そこには不自然に近い距離に立っている、しかも、トイレットペーパーを片手に握りしめた男性が・・・・。これは、かなりの確率で警察の厄介になる構図です。僕の知る(といってもその数は非常に知れてますけど)範囲では、『自分が妖怪・サンプル木綿をスカートのウエストからたなびかせて歩いているかもしれないと、いつも考えている女性』はほぼ皆無だからです。だから、彼女や警察にいくら事情を説明しても信じてくれない可能性は高いです。ましてや、説明の仕方によっては、『これはあなたの妖怪・サンプル木綿を退治したものである!』だの『嘘だと思ったら、いますぐスカートの中をご確認したまい、あなたのスカートの中にはトイレットペーパーが10センチくらい残っているはずである!』だの、と言い訳したら、まず痴漢・変質者扱いは逃れられないでしょう。
 ふむ、これもやめておくべし。

 ③このまま、今いる周囲の人、のみならず、未来の彼女の周りの人、とも『無言のうちの善意のコンセンサス』を取り、彼女が自分で気付くまで放置してしまう。
 ・・・・僕自身の場合を考えてもこういうのは他人から指摘されるのはやはり恥ずかしいものです。少なくともその指摘した人、とそのとき周りにいた人、には妖怪・サンプル木綿を従えて歩いていてこと、を見られてしまったのは『認めざるを得ない事実』だからです。今いる人も、未来の彼女の周りの人達も、見てみないふりをし続け、彼女が自分で気がついたなら、それは、それで、恥ずかしいでしょうけれど、『誰に見られていたか』という『目撃者の具体性』、は排除できるし、ひょっとしたら、論理的にのみですけど、『万が一にも、指摘されなかったんだから誰も気がついていなかったんじゃないか』という『妖怪・サンプル木綿、推定無罪の論理』も彼女の考え方次第では成り立ち得る、かもしれないじゃないですか。(実際には、こんなしがないブログで僕によって世間にさらされちゃってますが。)それに、この方策から導き出され得るもっといい結果は、『最後まで彼女自身も気がつかない可能性がある』というところにあります。すなわち、現在も未来もみんなが指摘しないうちに、彼女が次回の用足しにいくわけです。そこで、用足しの準備をしたとき、妖怪は音もなく、はらりはらりとトイレの床に落ちます。彼女はそれが自分の腰で数時間、虚空を舞わせていたものであることに気がつくどころか、それを見て『前任者の忘れ物』とみなし、『まあ、最近マナーの悪い人が増えたわね、こんな長いトイレットペーパーを床に散らかしていくなんて!失礼しちゃわね!』となり、さしもの妖怪・サンプル木綿もこうなってしまっては、哀れトイレの床に以前から転がっていた塵芥と帰してしまう、わけです。しかも、繰り返しますが、彼女は、自分が妖怪・サンプル木綿を白昼腰から泳がせていたことも知らないままに終わることができる、のであります。この方策は、現在と未来の彼女の周りの人も何もしないでいてくれること、という壮大なコンセンサスを前提とすることを除けば、ベターな方策と思われました。
 うん、これは、いいです。

 結局、僕は、散々心をかき乱された結果、妖怪との接触も対決も回避し彼女のためにも『何もしない』ことを良しとする結論を選択しました。
 ・・・というとなんだか聞こえが悪くないかもしれないですけど、とどのつまり、しこたま理屈をこねて、面倒な事を避けた、ってことですね。
 しばらくすると、彼女は僕と袂を分かち、違う方向へ歩いて-もちろん、妖怪を引き連れたまま-かつかつかつっ、ひらりひらりひらり、と去っていきました。
 そのあと、一体どうなったのか、大いに興味はありますが、僕としては、『妖怪・サンプル木綿、哀れ架空の前任者のマナー違反と散る』ように祈りつつ、見知らぬ彼女との別れを果たしました。

 ただし、僕がもし、トイレットペーパーをお尻にぶら下げていたら指摘してください。少し恥ずかしいけど、僕はほかにも見た目に恥ずかしいところがいっぱいあるので、たぶん大丈夫です。
 是非、ご指摘お願いします。

 それにしても、すごいもの、見ちゃったなあ。

===終わり===
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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