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にちつかしょくのほうそく。

 僕は、あとになって振り返って、ああ、そうだったんだって、思うことがあります。今回もそうです。
 その時は、ある事情から僕ら家族が確か甲子園球場の近くに住んでいた頃の話しなので、僕は小学校の低学年だったはずです。ところで、甲子園って、十干の甲(きのえ)で十二支の子(ねずみ)の年にできたからそういう名前になったんだそうです。『戊辰戦争』の名付けかたと一緒ですね。でもあまりに昔にできた球場なので、『西宮市甲子園浦風町』とか『西宮市上甲子園何々町』とか周りの住居表示にも影響を残していて、長く住んでいる人でさえ、『甲子園という場所にできた球場だから甲子園球場』だと思いこんでいる人がいるらしいです・・・・・さて、本当でしょうか?

 その時、母はたいそう父親に向かって怒っていました。僕ら家族は、その日父親の運転で外出しました。いったい何の用で外出したのか全く覚えていませんが、なんだか家族全体の雰囲気としては、疲労のせいかブルーな空気だったような気がします。よくありますよね、そういうのって。それで、これもよくあるパターンですけど、『疲れていて、もう遅いけど、子供たちに晩御飯を食べさせなきゃいけない』という状況になりまして、さらにその帰結としてよくある選択肢ですけど『しょうがない、今月も決して先立つものに余裕があるわけではないけれど、今日は外食ですませて、帰ったらすぐ入浴、就寝しよう』ということになりました。加えてそういうときに限って、『小さな子供を連れて入れる駐車場のある廉価な店』が全然見つかんなくて、『ちょっと高そうだし、小さい子供はいやがられそうだけどこの際しょうがないか』という大人っぽい高い店に吸い込まれていくはめになってしまうんですよね。僕らはその時、その人口に膾炙した『日曜夜の疲れた家族連れ外食の法則』に従って、ーえ?そんな法則は聞いたことがない?ああ、それはきっと一部の富裕層の方ですね。いえいえ決してせめているのではなく、僕の観察によれば『ごく一部の富裕層』の方は、多くの人が見聞きすることに触れないで育たれる可能性があります。え? いえいえ、その『多くの人が見聞きすること』を常識の範疇に入れ込んで、一部の富裕層の方を非常識者呼ばわりしよう、などという了見は全くありません。はい。ーとにかく、僕らは、『日曜夜の疲れた家族連れ外食の法則』略して『にちつかしょくのほうそく』に沿って、ある幹線道路沿いの、大人向けのレストランに入りました。店内は、装飾に凝っていて、わざと照明に陰翳なんぞがつけられています。注文をとりにこられる店員さんも、けっして、
 「いらっしゃいませ。○○へようこそ!ご注文を繰り返します。
  激辛ジャンバラヤがおふたつ。ホットコーヒーがおひとつ、
  アイスオレがおひとつ、お飲み物はお食事のあと、以上で
  よろしかったでしょうかあ?」
 なんて、制服をきて、縦板に水の如く注文を繰返してくれて、神戸女学院2回生です!っていう感じのお姉さんではなく、如何にも大人っぽい方々でした。
 結果として僕らは、いや、僕ら子供たちは、つつがなく『にちつかしょくのほうそく』に従って、夕食を終えたわけですが、どうも両親のほうはそうでもなかったらしく、帰路、道すがら、また、帰宅したあとも、母親が、たいへん怒っています。それに対して父親は、なんとか反論はしているものの、やや『分が悪そう』に見えます。

母「まったく。みさかいなし、なんだから!!だれの前だと
  おもってるのよ!!」
父「ちがうよ・・・・。ちがうんだよ・・・。」
母「何が違うのよ!! どう見たって、おかしいじゃない!
  それに、自分の奥さんのまえで、よくもあんなことを!!
  外でばれないようにするならまだしも!」
父「違うって。思わず・・・いや、思わず、っていうのは・・」
母「ほら!!家族連れってこと忘れて、いつものようにし
  たってことでしょ!!」
父「いや、思わずっていうのは、その思わずじゃなくて、
  その・・・・」
母「全く!!油断も隙もないわね。懲りないんだから!!
  やるなら、せめてわたしのいないところでやりなさ
  いよ!!」
父「ばかやろ。なにくだらねえこと言ってんだ。」
母「じゃあ、なんでいきなりあんなこと言ったのよ!!」
父「いや、だからそれは、思わず、いや、思わずって
  いうのは・・」
 と同じ言いわけに自分ではまって窮している父。

 僕は、その二人の口論の原因になったレストランでの光景をその時も今もしっかり記憶しています。でもその時、わからなかったのは、いったいなぜ、母親が怒っているのか、なぜ父親
ー以前に紹介申し上げたように、飲む、搏つ、浮気する、縦のものを横にもしない、切れた電球一個変えられない、子供の教育には全く参画しない、という男でした。でも、見ていて考えさせられます。今、晩節を迎えた彼は、ごく最近、『ゴミ捨て』を人生で初めてするようになりましたが、そのことで母親の評価は、尋常でなく高くなり、母曰く『お父さんのおかげでお母さんはとっても幸せ』だそうです。なんか納得いかないですよね。さんざん悪いことして、しかも露見しまくったおかげで、いまになってゴミを捨てたくらいで評価が高くなるって、なんかフェアじゃないです。父親は、こんにちにおいても僕の出身高校を間違えるくらいおよそ家庭人とは遠い男だったのに。でもそういう同じことでも『前後が違うだけなのに』、って意外に世間のものさしになっているのかもしれないです。たとえば、たとえばですよ、某女性人気政治評論家がかつて人知れずキャバクラで働いていた!!っていうのと、現人気キャバクラ嬢が、その後艱難辛苦の末に実力ある政治評論家になった!!としたら、って考えると、前者はスキャンダル、後者は美談、になりそうじゃないですか?どちらもゴシップになることは同じですけど。いえいえ、もちろん職業としてのキャバクラ嬢の評価を話の俎上にのせるつもりは毛頭ないです、個人的にはあんまり好きじゃない場所ですけど(だって以前にも書いたけど、キャバクラの女性はすごく綺麗でたいへんセクシーです。そしてキャバクラは安くなく、僕は話下手です。結果、特に楽しくもなかった時間を二時間ほど過ごし、すっかり吸い取られた財布と、刺激を受けてがっぽり満杯になった性欲、と共に店を出る、ことになるからです。)ー
が、『やや開きなおり気味に言いわけをしている』のかは、全く理解できませんでした。
 しかし、時がたち、大人になり、あるとき、何かの拍子に、その出来事がフラッシュバックして思い出されたとき、思わず膝をたたいて、頓悟しました。
 すなわち、そのレストランに入り、僕らが着席し、注文をとりにきてくれた、妖艶な女性を父はじーっと見つめ続けたあげく、無理くりの低音な声でこう言ったのです。
 「あなた、私とどこかでお会いしたこと、ありませんか?」

 その女性があまりに自分の好みだったがために、家族連れでいる、ということも忘れて、声のトーンまで変えてナンパしてしまい、それを母親に激しく責め立てられた、という父親の迂闊さと光景が一致した刹那ー数年前かなあー僕はひとりおお笑いしてしまいました。ちなみに、その時の結果もちゃんと覚えていて、相手の女性はやや嫌悪感を醸しだしつつ、即座に否定してました。

 そらそうだよ、お父さん、あんた迂闊だよ、ってその場にもどって言ってあげたいです。
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プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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