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みぢかえない冗談。

 久しぶりに、『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』略して、『みぢかえない話』、です。

 新入社員の頃の話です。

 青ちゃんは大阪生まれの大阪育ち、で会社の同じ部門の同期です。仕事もよくできますが、大阪人らしく、とても愉快な男です。
 しかも、頭が良いです。

 僕が、青ちゃんは頭が良いなあ、と思った理由は、入社当時、僕ら新入社員全員が東京本社に集められて研修を受けておるときに『世間一般の関西人以外の人が抱いているステレオタイプの大阪人像を逆手にとる』ことで巧妙にみんなの笑いをとっていたのを見たからです。
 『世間一般の関西人以外の人が抱いているステレオタイプの大阪人像を逆手にとる』ということは具体的にどういうことかというと、これは実際に青ちゃんが、
 「こないだの休みにな、新宿行ってん、ほんでな・・・」
 と『実際にやったこと』として話してくれたんですけど、同期のこれまた大阪人とふたりで新宿の大きな有名百貨店に行き、
 「店員のお姉ちゃん相手に、値切りたおしたった。」
 んだそうです。
 よくよく聞くと、真剣に買う気はなかったようで、単に店員さんをからかって受けをとって喜んでいた、だけのようです。
 「しかもな、値切れません、ゆう相手に、とどめにな、『ほな、ええわ、あんたが、社員割引でこうたらなんぼになるんや、俺らはそれよりちょっと高めにあんたから買うがな。それでも定価より安いやろ?』て真剣にいうたってん。」
 「そしたらどうだった?」
 「いや、そらもう、姉ちゃん、口を抑えて爆笑やで。あはは。」
 青ちゃんが大阪の百貨店でも、そうですね、例えば梅田の阪急百貨店でもこれと同じことをしているのか、というとそんなことは、まずないわけです。
 これは、つまり『関西人は金銭感覚に鋭くて、どこでもなんでも値切る』というステレオタイプな印象を逆手にとってあえてそういう関西人を『演じた』わけです。
 なかなか頭がいいです。

 そんな、青ちゃんが、研修中にある日いつものように冗談を言いました。
 「俺な、大阪におる、連れにな、言うたってん。」
 「なにを?」
 「『東京っちゅうのはさすがやで』いうてな、『俺らの建物の最上階からな、あの建物が見えてな・・』」
 そんな会社はゴマンとあると思いますが、僕らの会社の東京本社も一応、通りとお堀を隔てて東京都千代田区のかしこき場所に面しています。僕らは入社してすぐに、そこで新人研修を受けてから、東京本社を含め、いろんなところに配属されるわけです(蛇足ながら、僕も研修後、そのかしこき場所に面している東京本社とは違う場所に配属になりました。)。
 「うん。」
 「それでな、『俺がたまたま最上階から、そこを見てたら、天皇が散歩してたんや。それで、俺が試しに手を振ってみたら、天皇が俺にな手を振り返してきたんや!東京はやっぱ、ちゃうやろ?』ってゆうたってん。」
 「がははは、そんなわけねえだろ!」
 「がはは、そうやねん、、そんなわけないわな!」
 かしこきところは広大で、実際にはどこにかしこきお方がいるのか、さえさすがに僕らの東京本社の最上階からも見えないし、だいたい、そんなに簡単にかしこきお方がうろうろされているのが一般人に見えちゃうんじゃ、これは治安上の、しかも国家的レベルでの問題である、というもんです。
 でも、冗談としてはなかなか秀逸です。
 僕らはひとしきり、笑いました。
 
 ところが、青ちゃんの話はそれで終わらなかったのです。

 「あはは、そうやろ?おかしいやろ?そんなん冗談に決まってるやんか。」
 「あはは、うん、そうだよな。」
 「ところがやな、その連れがやな、」
 と、青ちゃん、急に真剣な顔になり、
 「うん?」
 「そいつがやな、ごっつい興奮して『ほんまか!?天皇が手え振りよったんか!さすがに東京はちゃうなあ!』言うて、まじで信じてしもうたんや!」
 これは、ありえません!
 「がはは、青ちゃん、そこはうそだろ~~、うそつけ!」
 「あほ、ほんまやて、俺も、うわ!?こいつ俺の冗談信用して本気にしよった、どないしょ、っておもたんや。」
 「ぜってえ、うそ!そんなの信じる奴なんかいるわけないだろ。芸能人じゃあるまいし、てんのーだぞ、天皇!」
 とみんなして、笑いながらも、法螺ふくんじゃねえよ、と否定しましたが、青ちゃんはまだ真剣に、主張します。
 「いやいや、ほんまやて、大阪の人間の中にはそういう奴が、たまああに、おるんや、て!そいつはほんまに信じよったんや!」
 
 これは、『生粋の関西人は東京のことを全然知らなくて、ある種憧憬を抱いているらしい』というステレオタイプなイメージを巧妙に利用した青ちゃんの法螺にきまってます。
 しかし、ステレオタイプの演じ方が行き過ぎたために、冗談転じて、『みぢかえない話』になってしまったわけです。
 
 でも、ほんとうに、かしこき方が、気軽にあのかしこき敷地内をうろうろしていても意外に誰も気付かないかもしれないです。
 『かしこきところ御用達』の寝巻きのまんま、朝からお堀の鯉に『ほれ、ほれ』って、餌なんか投げてたりしてね。

 青ちゃんは、今では、要職にあり、バリバリと仕事をしておられます。今度機会があったら、『天皇に手を振ったら、手を振り返してきた話を信じた友人がいる』話の真相を白状させてみたいと思います。青ちゃんの今の肩書きが例え部長補佐であろうと、この話は、どう考えても法螺だと思うので。

===終わり====
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みぢかえない事実。①

 くうううわあははは!世界で15人(推定、たぶん誤差は前後2,3人)の『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』略して『みぢかえない話』ファンのみなさん、油断してたでしょう!『みぢかえない話』はそう簡単には絶滅しないのであります。
 そして、地球で18人(推定、たぶん誤差は5,6人)の『みぢかえない話なんて・・別に』とか、『そもそもみぢかえない話って何?』と思っているみなさん(この種の方が2,3人おられると思われたので、誤差は少し多めに見ておきました。)、面倒なものに出会ってしまいましたな。(でもそういう方は、10年3月27日みぢかえない話①、4月17日みぢかえない話②、5月23日みぢかえない話③、11月3日みぢかえない話④、11年1月8日みぢかえる父まずまさ、を再読してから読んでいただければ、とりあえず、話にはついていけます。なんだそら、そんなの別にいいや、こっちの勝手だろって、本編だけ読んでいただくのも大歓迎です。つまるところ、全然『入り組んだシリーズ』ではないからであります。)

 つい最近、まっっことに不本意ながら、父親みどりまずかさ、と頻繁に電話で話しをしなければいけない日々が続きました。かずまさは、何度も説明しているように、元サラリーマンとはとても思えないくらいコミュニケーション能力に欠陥を抱えている男です。家庭生活もそうですけど、

(家庭生活についても、この男はよく家族に見放されなかったなあ、と感心してしまいます。この話は-秘密ですよ、絶対に!-本旨と違うので、ここでは軽く触れておくにとどめておきますが、僕の母親、つまりかずまさの妻ですね、彼女が、僕とふたりになったときに何回か真顔で言ったことのある『お兄ちゃんの結婚相手についての最大の心配ごと』は、いいですか、秘密ですよ、なんと、
 「もし、お兄ちゃんがお父さんが拵えた
  婚外子と恋愛に落ちて、その子と結婚
  したい、って連れてきたら、どうしよ
  うかと思って、お母さんドキドキしてね。」
だそうです・・・。それを聞いた僕が、いろんな意味で複雑な表情で黙っていたら、その反応のどこをどう勘違いしたのか母親は、
 「ほら、違うのよ、血が繋がってると妙に
  合ったりするじゃない?それが、この人
  とは兄弟だから、とか、いとこだから、だ、
  とかわかってればいいけど、それを知らな
  いで出会ったりすると『運命的な出会い』
  かなんかと勘違いするかもしれないでしょ?
  それで、恋に落ちちゃうわけよ。もうお母
  さんどきどきしてねえ。」
・・・。いや、あのそんな方面に想像をたくましくして心配する前に、父親が『家族に秘密で婚外子を拵えておること』を前提と見做してしまってるのって・・・、そこは『どうしようかと』思わなくていいのか、母よ・・。
 秘密ですよ!)
 
よく、社会生活を全うできたなあ、と思うくらいコミュニケーション能力に欠けてます。これまで僕の書いてきたものを辛抱強く読んできてくれた方の中には、もうだいたいかずまさ像ができあがってるかとも思うんですけど、簡単にいうと、
 *人の話しを最後まで聞かない。
 *声が馬鹿でかい。
 *一方的に話題を変える。
っていうところがおおまかな欠点ですね。おおまかですが、この三つで充分『あまり会話を交わしたくない人』の条件は満たしてます。以前にも書いたけど思考がたぶん『天動説』なんです、きっと。ご参考までに、本人曰く『ずっと営業だった』らしいです。

 先週の金曜日も仕事中昼前に僕の携帯に電話がかかってきて、電話番号表示がかずまさだったので、驚いてすぐとりました。驚くじゃないですか。あきらかに勤務時間中に父親からいきなり電話があったりしたら。そしたら、
 「おい!」
 「・・な、なに?」
 「あのな、『はなをそえる』って言うだろ?」
 「・・へ?」
 「だから!」
 もう怒ってます。このあたりが天動説男の真骨頂です。
 「誰それが来てくれたおかげで『会合に、はながそえら
  れた』とかっていうじゃないか!ええ!」
 「う、うう。」
 意図がわからずろくな返事もできず唸るだけの僕です。かずまさはかまわず続けます。
 「その場合の漢字はフラワーの花か、華やかのほう
  か、どっちだ!おう?」
 こういうとき、僕の正しい返事のひとつは、
 「用事ってそれだけ?辞書は見たの?」
 だと思うんです。でもそれは相手が常人の場合であって、かずまさを相手にした場合、そんなことを言ったら、やおら逆上して時間の無駄になることは経験則上必至です。だから、僕は、脳内で一回深呼吸したあと、
 「ちょっと調べないとわかんないな。」
 と答えました。すると果たしてかずまさは、
 「お、そうか。」
 言うなり、ガチャン、と切ってしまいました。
 こういうとき、僕のような立場に立ったひとの正しい行動のひとつは『すぐに仕事に戻る』だと思います。でもそれは相手が地動説を理解している常識ある今世紀の社会人の場合です。実はかずまさは、こういうとき、僕がすでに、かずまさのために仕事を投げ捨てて、彼の疑問を調べ始めているはずだ、と思っているわけです。それで、僕がネットで調べて-なんと今回はかずまさのお陰で勉強になりました。どっちでもいいそうです。―パソコンを見ながら電話をしました。
 「おお、なんだ、わざわざ調べてくれたのか
  すまんな。」
 なあんてことは、かずまさに限って間違っても言いません。
 「あのね。」
 「おう。」
 と当然のように泰然自若として構えています。
 「どっちでもいいんだって。」
 「ほう・・そうか。」
 「実際に植物の花による場合は特にフラワーの
  ほうの『花』を使うが、基本的にはどっちでも
  いいらしいよ。たとえば『だれそれさんがきた 
  ことで』っていうときなんかはフラワーの花で
  も『華やか』の華でもいいんだって、さ。」
 「おう、わかった。」
 ガチャン。用が済んだら即切っちゃうんであります。
 僕の隣の席でこの会話の一部始終を聞いていた女性が、
 「みどりさんのおとうさんって、サラリーマン
  じゃないの?」
 って、おそるおそるながら正鵠をずばりと射る質問をしてきました。そらそうですよね。サラリーマンの経験があったら、普通、職場に電話してきて藪から棒にこんな電話しないです。僕は、恥ずかしい気持ちを抑えながら、
 「いえ、元サラリーマンなんです。変な人でしょ?」
 と言いました。彼女はそれについては直接応答はしませんでしたが、
 「びっくりするわよね、仕事中におとうさんから
  電話があったら。」
 って、言外に変人であることを肯定してました。

 そんなわけで、僕は会って話すときも会話を成立させることに苦労するので、父親と電話でコミュニケーションをすんなり為すことは半ば諦めていました。
 それと、かずまさは機械にも弱いです。切れた電球のたまひとつ変えられません。そのくせ大物ぶるので、パソコンなんかノートブック型じゃなくてデスクトップ型の高そうなのを買って何カ月も触ってません。携帯電話ももちろん、電話機能しか使いません。電話番号登録も当然できません。だから、必要な、即ち僕とか僕のさい君とか兄とか母親の電話番号だけは、さい君がかわりに登録してあげています。
 しかし、冒頭に述べたように、ある事情からつい最近、まっっことに不本意ながら、父親みどりまずかさ、と頻繁に、それもお互いの携帯電話で話しをしなければいけない日々が続きました。

 そんなある日、いつものように用事あり、僕が携帯から、かずまさの携帯に電話をしました。
 「はい。」
 「いま、どこね?」
 引っ越しが多かったせいで、僕が父や母と会話するときはたまにどこのだかわかんない方言が出てきちゃったりします。すると、予想外なことにものすごい怒気を含んだ真剣な声でかずまさに、
 「誰だっ!」
 と一喝されました。なんだ、なんだ、この男、てめえの息子に向かって随分なごあいさつじゃねえか、とさすがの僕も予期しない反応に憮然としました。誰だっ!じゃねえだろう、電話番号表示を見りゃわかんだろうが・・。
 「はん?けいただけど。」
 「おう・・おまえか、いや、まいっちゃったよ。」
 いつものように僕の聞いていることには返答してくれません。
 「けいた、おまえ知ってたか?」
 「は?」
 「あれはな、洗っちゃいけねえんだぞ。」
 「へ?」
 だから、俺が用があって電話してるんだけどなあ。
 「いや、まいった。ちょっと時間が余ったからよ、
  洗ったんだよ。」
 「え?」
 「いや、ふと携帯を見たら随分きたねえな、と思ってな、」
 「え?洗ったって・・?」
 「そしたら、おまえ、使えなくなっちまってよ、」
 「いや、その携帯電話を洗ったの?」
 今の携帯は多少の防水機能くらいあるかもしれないけど、洗うことは前提になんかなってないんじゃ・・。
 「おう、あんまり汚れてたしな。石鹸もつけて
  ゴシゴシ洗ったわけよ。」
 「!!せっけんんんんっ?」
 「そしたら、おまえ、うんともすんとも言わなく
  なっちまってよ。」
 「・・・」
 「それで、いまユウ【僕のさい君ですね。】に
  どこに行けばいいか教えてもらってイト―ヨ―カ
  ド―に行って携帯を変えてきてもらったばっかり
  なんだよ。いや、まいった。おまえ知ってたか?
  携帯っていうのはな洗うと・・」
 「そんな人いないよ。お父さん。」
 「そうか。お前は、携帯を洗ってはいかんという
  ことは知ってたのか。俺はしらねえもんだから
  せっけんをつけてゴシゴシ、とだなあ。」
 「馬鹿だねえ。」
 今世紀の人間のやることか。
 普段は縦の物を横にもしないくせに『せっけんつけてゴシゴシ』って『妖怪小豆洗い』じゃあるまいし。
 「そしたら電話番号はそのままだけど、
  あれだ、登録はやり直しらしいから
  お前からの電話ってわかんなくってよ。」
 父親は、一度、自宅にかかってきた『オレオレ詐欺』を撃退した経験があったので、僕の電話にも『とりあえず防衛反応』を起こしてその結果が『誰だっ!』という暴言だったようです。
 あとで聞いたら、どうも病院だか市役所だか、とにかく『公共施設のトイレ』でこの蛮行を挙行したらしいんです。かずまさの性格・報告から想像するに、人目を憚ることなくけれんみもなく堂々と、専心ゴシゴシしていたと思われるので、目撃された人は『え・・えええっ??』と思われたに違いありません。まさに新種の妖怪『携帯電話洗い』とファースト・コンタクトされた思いだったのではないでしょうか?

 尚、以前にも書いたけど父親はコミュニケーション能力に欠陥が見られるのみならず、法螺吹きでもあります。けれども、今回はどうも事実らしいので(さすがのかずまさでもこんなに複雑な法螺は吹かないと思われます。法螺だとしても彼にとっていいことなんて無いですし。)『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』ではなく、今回は『普段法螺を言いそうな身近な人間が真剣に主張する、ありえない事実』ということで『みぢかえない話』からの派生シリーズということで、『みぢかえない事実』①としました。
 してはみたものの、別段定義づけするほどのことではないです。身も蓋もない、ってとこですかね。

 繰り返しますけど『母親の心配』は口外しないでください。
 父親の『新妖怪・携帯電話洗い』はどうでもいいです。
 けど、もし俺は目撃したぞ、という方がいたらご一報ください。

===終わり===

みぢかえる、父かずまさ。

 人の性、とはいえ、悩みはつきません。僕も悩みに悩みました。

 なぜなら、以下の話は、『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』略して『みぢかえない話』その⑤、としたかったんです。
 このブログを継続して読んでくださっている方(ありがとうございます。)は、僕の悩みを共有していただけると思います。初めてお読みいただいた方(ありがとうございます。)、および、迂闊にアクセスしてしまった同じ会社の上層階の巨漢不動さん(おまえのブログ、読んだけど、あんまりピンとこん、などと言わず)は、なんのことやらお分かりにならないかと思いますので、できれば過去の『みぢかえない話』シリーズだけでもお読みになっていただければ幸甚です。

 先日、実家に帰ったときのことです。ごく普通に両親と、とうが立った息子との会話の最中に、それは突然出現しました。
 父親(かずまさ)が、生あくびをしながら、話題を振りました。かずまさは、よくこれで社会人としてやってこられたなあ、と思うくらいコミュニケーション能力に欠けています。

 まず、人の話を聞きません。
 それも聞いてないっていうのが露骨にわかるんです。どういうことかというと、例えば、『お父さん、各位殿っていう日本語ってどう思う?』と話しをふったときに、髪の毛の薄くなった部分を右の掌でぺたぺたと叩きながら、いきなり『なるほど』と何のアクセントも無しに答えたりするんです。そもそも『なるほど』っていうのは、通常、相手の会話に感心しました、っていうときに、つまり会話の中に起承転結があるとするならば、『結』の部分に登場すべき言葉の類です。つまり、かずまさは、話をきいてないから、会話がまだ『起』の段階なのに、いきなり『結』の範疇の語句で、その話題を強引におわらせてしまおう、とするわけです。話しに興味がないのならしょうがないけど、もっと、ほかの意思表示の仕方があると思います。
 「・・って、どう思う?」 
 「なるほど。」
 ・・・会話になってません。

 それから、これもすごいなあ、と思うんですけど、人に話をふっておいて、話題を突然変えちゃうんです。
 どういうことかというと、例えば、『おい、慧太。知ってるか、斎藤、斎藤!』『え、いや斎藤ってどのさい・・』『あいつがだな、』(この時点ですでに会話になってません。)『あいつが次のキャプテンに伝えた三つの言葉があるんだ。なんだと思う?』『キャプテン?いや、だから・・ああ、早稲田の斎藤のことか?』『早稲田の野球部のキャプテンていうのはものすごく重圧があるんだ。』(ひとりで話しをすすめてます。)『いや、だから早稲田の野球部のあの斎藤のこと?』『そこでだ。今度主将になる人間にこれは重要だ、ということを三つだけ言ったんだな。』(会話の相手いらねえじゃねえか。まあ、聞くか。)と、ここまできて、やっと僕がかずまさの思考に追いついたのに、ふと、かずまさは席をたって、1メートル先の冷蔵庫に水を取りに行きました。僕は、寡黙に、かずまさがもったいぶった、『斎藤の三つの言葉』を待っています。かずまさ、席にもどり水をごくりと飲んで、いきなり机の上にあった新聞を読み始めました。ちょっと驚きます。でも、かずまさは、こんなことで会話を終了させるような小立者ではありません。新聞を読みながらも、僕と会話をしている、という意識の残像はちゃんと残ってるんです。そして『斎藤の三つ』を待つ僕に、やおら新聞から視線をあげて、こう言いました。『大学ラグビーはどこが勝ちそうだ?ん?なに黙ってんだ?おまえラグビー好きだろ?』
 ・・・驚きます。

 そのときも、かずまさから話題を振ってきました。僕は、どうせまた途中で『自分のふった話題にすぐあきるパターンだな』などと思いつつ、びっくりしたり、いらいらしたりしないように、あらかじめ脱力しながら、相手をします。
父「最近、仕事のほうはどうだ。」
僕「うん、まあ、忙しいよ。」
父「こないだどっか行ってたな。」
僕「うん、また東南アジア方面ね。直行便だけど、
  長時間だし、エコノミークラスだから疲れるよ。」
父「おお、あれはきついよなあ。」
僕「うん、3,4時間が限界だね。ましてや、三人がけの
  真ん中に・・」
 ここで、彼の得意技のひとつ、他人の話を遮断、
父「飛行機のエコノミー、あれは、だめだ、あれは疲れる。」
僕「あれ?お父さんエコノミーでどっか・・・」
 もともと海外出張などあまりなく、あってもたいていビジネスクラスで行っている、と聞いていたかずまさから、エコノミークラスでの苦渋への予想外の共鳴を得て、僕が、少しだけ注意を惹かれて質問しようとするのを、またしてもさえぎり、かずまさは続けます。
父「あんなせまい椅子に長時間座らされてなあ。あれはきつい。
  体を大の字にのばしてたくてしょうがなくなるよなあ。」
僕「いや、まったく大の字になれればどんなに楽か・・」
父「それで、我慢できないだろ?な?そんで、我慢できないから
  通路で大の字になって寝てたんだよ、そしたら・・」
大いに、意表をつかれて、せっかくのあらかじめの脱力感がかえってあだになり、僕は混乱し始めます。
僕「え?いや、あのお父さん、通路で大の字って、
  その、あの、飛行機の通路のこと?違うでしょ?」
父は僕の質問を軽くかわして、
父「ん?おう、飛行機、飛行機。そしたら、アメリカ人のスチュ
  ワーデスが怒りやがってな。上から俺を見下ろして、こう、
  ううんと、なんだっけな、『ヘイ、ヘイ、ミスター、スタン
  ダップ、プリーズ!』だったかな、こういうふうに言われて
  なあ。」
 とスチュワーデスの身振りつきで、どんどん話を、しかし、しごく自然な様子で続けます。
僕「ええ!そんな人見たことないよ。飛行機の通路で寝たの?
  本当?うそでしょ?いつよ?」
父「ん?ほら、昔出張でアメリカ行ったろ。あんときよ。もう
  やってられんとおもってな、通路で大の字に・・」
 さすがの僕も、かずまさのお株を奪ってでも事の真意を確認したい気持ちを抑えられず、彼の話を遮ります。
僕「本当に、飛行機の通路?そんな人いないよ。」
 かずまさは、もう『アメリカ行きの飛行機の中で通路に寝た』ことの説明はとうに終えているので、僕の再確認には反応せず、別のアングルから、-全然会話としてはつながりのない返事から-、話を、平然と展開します。
父「違うんだよ。」
僕(「違うんだよ」ってなんだよ。)
父「違うんだよ、昔、学生のころ、東京から田舎に鈍行で帰
  るのに、座席がとれないだろ。でも十何時間も立ってら
  れないから、通路に寝るわけよ。それと同じで、」
(いや、飛行機と『それ』は同じじゃないんじゃ?)
 「それと同じで、通路に寝たんだよ。ところが、通路に
  寝ると、歩く人に踏まれるだろ?」
(いや、そら、まあ、通路は歩くところだから・・)
 「でも、ほかのところを踏まれるのはよしとして、
  頭を踏まれるのはかなわんから、通路に直角に
  縦じゃなくて横に寝て、」
(ええ?)
 「それで、頭を座ってる人間の足と座席の中に突っ込む
  わけよ。そしたらよく寝られるだろ?そういう経験
  があったから、」
(・・・)
 「飛行機の中でもそうやって寝たら、アメリカ人の
  スチュワーデスが、怒りやがって、いや、電車では
  な怒られたことないんだよ、寝てるの俺だけじゃな
  いしな、それで、こう、なんだっけな『ヘイ、ミス
  タ―、スタンダッププリーズ!』ってな、いやあ
  エコノミーはきつい、うん。」
 と、かずまさは平然とひとりで話題を締めくくってしまいました。

 そんな人、『あり得ません』。しかし、なぜ今回、この話が『みぢかえない話』シリーズの範疇外になったかというと、実は、今回はある属性が、『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』の条件にもとるからなんです。

 僕の繋類には法螺吹きが二人います。そのうちのひとりが他ならぬ、父みどりかずまさ、その人です。だから、今回の『飛行機の通路で通路方向に90度で大の字になって寝て、スチュワーデスに「ヘイ、ミスター・・」と怒られた』話には、十二分に意表をつかれたし、彼は平然と真剣に主張していましたが、彼が『普段法螺など全く言いそうもない人』とは言い難いので、悩みに悩んだすえ今回の題名は、『みぢかえる、父かずまさ』と、しました。もっとも、決定したとはいえ、この題名もなんのことやら訳のわからん日本語で、僕が溜飲を下げるには至ってませんけど。

 かずまさは、まがうことなき法螺吹きです。それも、『あのな、慧太、おまえは本当は橋の下から拾ってきた子供で本当はお父さんとお母さんの子供じゃないんだ。』という『親の法螺の王道』はもちろん外していないうえに、子供に対しては、『おとうさんはな、ほんとうは、あの、さんおくえんじけんのはんにんなのだ。あれは、雨のふるひだったなあ・・・・』などという『独自性にあふれる罪つくりな法螺』も吹いた前科があります。この法螺を僕は、たしか幼稚園か小学校の低学年の時に聞かされて、完全に信じてしまい、『どうしよう、ぼくはおとうさんがぬすんだお金でそだってきたんだ。どうしたらいんんだ。』と真剣に悩みました。
 また、ある時、かずまさに転勤辞令が出たときのことです。状況からごく自然に、『かずまさ単身赴任案』が、かなり強力な案として家庭内に浮上してきました。しかし、放蕩者のくせに、『電気が消えている家に帰るのが嫌い』なかずまさは、あろうまいことか、『それは、残念ながらできん。なぜなら、俺の会社は、単身赴任に年齢制限があって、俺はまだその年齢に達していないから、単身赴任はできないんである。』とありもしない会社規則をねつ造し、家族全員を欺き、単身赴任案を強引に叩きつぶしたんです。あとで、すぐ『法螺』だと露見しましたけど。
 それから、-ほかにもあるんですけど、なんだか話全体の重心がずれてきていますので、これで最後にします-、会社の人に、『俺の女房は、もとミス下関である』という寸分の根拠もない法螺をふきまくってました。しかもそういうことを家族には黙っていたので本人は『真剣に法螺をふいて』いたんですね。これはなんで露見したかと言うと、ある時、父親が会社の人と飲んだかえり、その人を家に連れてきて(こういうこともすごく頻繁で、母親はとても嫌がってました。)、ほろ酔い気分のその客人が、母親をじーっと見て、
 「おお、なああるほど!確かにお綺麗だ。これが
  高名な元ミス下関ですか!ほほう!」
 と叫んだからです。

 ええと、僕の繋類のもう一人の法螺吹きは、これがまたすごい法螺吹きで、・・・・まあ、この人の話は次の機会にします。

==========終わり==========

みぢかえない話④

 巷間話題沸騰の、『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』略して『みぢかえない話』ファン各位、今日は、その④です。

 再三紹介申し上げているように、僕のさい君は、外人です。そして、僕と、結婚という近現代を跋扈するある種の契約をしてしまったがゆえに、生まれ育った南半球を離れ、日本に住む運命となりました。人生何がおきるかわかりません。気の毒です。当然、あまたの『文化的摩擦』がそこには生じます。
 そのうち容易に予期できることにして、しかし、最も重要なことのひとつは『食文化』です。さい君の故郷には少なからぬと言ってもいい日本料理屋がありましたので、さい君が日本料理に馴染もうと思えばできないことはない環境ではありました。けれども、どちらかというとさい君は『日本料理というものはまずいもんである』という偏見をもっていました。
曰く、「『焼き肉』は食べてみたが、むかむかする
     だけでうまくない。」
曰く、「『そば』とかいう冷たい麺も食べてみたが
    まずい。」
曰く、「生さかなに至っては、挑んでみたが、吐き
    出した。」
そうです。『はて、これはいかがなものか?』と未熟な二人の前途に早くも暗雲が、と思われました。しかし、幸いにも、それは杞憂に終わり、もちろん全部ではないですが、結婚後日本で暮らすようになってから、いくつかの日本料理に対するさい君の評価が、コペルニクス的転回を見せ始めました。
曰く、
 「おおー、『焼き肉』ってこんなにうまいのか!」
 よくよく聞いてみるとさい君が結婚前に食した焼き肉は、おしなべて『焼き肉屋』というより『焼き肉と称する焼き肉屋』において、らしく、
 「ぜーんぶ、ホットプレートで焼かれていた。」
そうです。それで、日本で、
 「まあまあ、そう言わんと。」
 と連れていった、『炭火で、かつ網焼き』の焼き肉を食べて、その違いに慄然としたようです。そばも『そば』というより『そばと称する麺』を食べていたらしく、いわゆる『こし』を舌で理解して、驚いたようです。同じく、たこ焼き、お好み焼き、寿司、キムチ(これは日本料理といえないかもしれませんけど)・・・、など、
 僕  「まあまあ、そう言わんと。」と誘い、
 さい君「おおー!」と頓悟。
 を連発し、すっかり日本食になじんでくれました。
 それどころか、一年もたたないうちに、
 「焼き肉なら、00園だな。え?今日は、違うの?ええ、あそこはチェーン店だし、肉の仕入れが甘い。どうもしっくりこないなあ。まあ、今日のところはいいか。」
 といっぱしの評価やら、妥協やら、までしてくれるようになり、さらに、
 「ケイタは回転寿司ってどこでも同じだと思ってるん
  じゃない。わかってないなあ。」
 と『旦那の嗜好のレベル』を批判するようになりました。
 あまつさえ、―その時、僕は大阪市内で働いてました―仕事中に電話してきて、何事かと思ったら、
 「帰りに鶴橋によってキムチ買ってこい。今日、
  どうしても、どうしてもキムチが食べたい。」
 と言いだすようになりました。
 「ええ、鶴橋(関西の方にはお分かりになると思います)
  じゃなきゃだめなの?会社から鶴橋って帰宅方向と違
  うんだけど。うちの横のダイエーじゃだめ?」
 「だめ。それも鶴橋のわたしがいつも買う店でちゃんと
  買いなさい。改札出てすぐに買えばいいってもんじゃ
  ないからね。」
  と、『ケイタはキムチの微妙な違いが分からないから』と店の指定さえするようになりました。それで僕は、何度か仕事のあとわざわざ鶴橋まで行ってキムチを外人のさい君に買って帰りました。人生、何が起きるかわかりません。がまんです。

 ある時、そんな『味にうるさい嫁』が僕の母親を誘って、『さい君おすすめの近所の回転寿司』に行くことになりました。
 行ったのは、さい君と僕の母、と僕の息子、の三人です。僕の母、みどりひろこは、その伴侶の(僕の父かずまさ、です)放蕩がゆえ、赤貧洗うが如し、の生活を強いられたおかげで、いまだに『外食』を贅沢な行事ととらまえていて、たいてい何を食べても美味そうで、嬉しそうです。その時も嬉々として、三人で出かけていきました。
 三人が、帰宅しました。なんか様子がいつもと違います。さい君と息子は、お気にいりに行っただけのことはあってか、にこにこしてます。ところが、母親の表情が晴れません。
(あれ、まずかったのかなあ。まあ、偉そうにいっても所詮さい君は外人だからなあ。)
とすこし心配になって、でも直接母親に聞く勇気もなく、と言って、さい君に聞いても返答はきまってるし、と思い、僕は、息子に、しかも、さい君の母国語で探りを入れる、という姑息な手段にでました。
 「フジ、今日、寿司食べにいったろ?」
 「うん、マミとバ―バと三人で行った。」
 「うん、美味しかったか?」
 「うん、美味しかった。まぐろのかたきもあった。」
とにこにこする息子。
 「まぐろのかたき、じゃなくて、たたき、だ。そうか・・・。
  あのー、マミとバーバはいっぱい食べてたか?」
 「うん。」
とにこにこする息子。その横で、
 「あそこは美味しいなあ。」
と余韻に浸ってこれまたにこにこするさい君。
(・・・。どうも味は確かなようだな。でも、なんでお母さんの機嫌が悪いんだろ・・・。まさか!?)
まさか、結婚という近現代の社会に跋扈する契約制度の開闢以来、子子孫孫まで、解決不可能といわれているあの難題、そう、『嫁と姑摩擦』を起こしたんじゃ・・・。いや、それは困る。こっちはただでさえ資本主義にうまく洗脳されきれずにいつもおんぶバッタのようにストレスをおぶっているのに、そのうえに『嫁と姑摩擦』などがかぶさってきたら、それこそ身動きもとれないではないですか。
(むむ。南無三!ここは藪蛇を承知で、母親のストレスを早いうちに吐き出させるしかない。)
 僕は悲愴な覚悟を決めて、しかし、びくびくと切り出しました。
 「お母さん、寿司・・」
 「もう、だめ。お母さん、あんなとこ二度と行けない!」
 ええ!
 「まずかったの?」
 「もう、いまでも、心臓が・・」
 えええ!やっぱり!さい君いったい何をやらかしたんだろう。『心臓が』って、寿司の味どころじゃないじゃないですか!
 「いや、その、そんなにまずかったの?」
 「それどころじゃないわよ!」
 うわああ、間違いない!しかもさい君はにこにこしてる!これはたいへんな、深い溝が、回転すし屋内でふたりの間に・・・。
 「まずいの?」
 早くも打つ矢の尽きた僕は、愚問と自覚しながら、むなしく繰り返します。それに対する、母親の返答の『字面』と怒気と言ってもいい『口調』の矛盾、に僕はさらに困惑してしまいました。
 すなわち、母親の返答はこうです。
 「美味しかったわよ!!」
 へ?すると、問題は寿司屋にはなく、やはり両者の間に何かが・・。
 「美味しかったの?」
 「もう、あんなとこお母さん行けない!」
 「いや、あの、でも美味しかったんでしょ?」
 「美味しかったわよ!でもねえ、ユウ!」
 といきなりさい君に賛同を求める母親。
 「うん、美味しかった。」
 とにこにこするさい君。
 「でも、ねえ!?」
 「ああ、アレか?」
 「そうよ、お母さん、寿司どころじゃなかったわよ。
  ああ、まだどきどきする。」
 「ああ、アレね。」
 とにこにこするさい君。
(ほろ??両者の関係は良好のようである。しかも二度と行かない、などといいつつ母親も味の良さは認めている。態度の悪い店員でもいたかな・・?でも、そういうことには、母親のほうがさい君より寛大なんだけどな。)
とひとまず嫁姑問題を回避できて安堵すると同時に、僕の心にはなんだか隔靴掻痒感が。
 「あれって?」
 「あんなの見たのはじめてよ。もう、どきどきして。」
 「いやだから、さ、何を見たの?」
 母親は、とにかく興奮さめやらない様子です。
 「うまくいったからよかったものの。」
 「??」
『うまく』って。
 「あんなことしてまで。」
 「??」
 「何枚かしら?」
 「??」
 全然わかりません。
 「あのさ、ユウ、何があったの?」
 と僕は、さい君に打つ矢の方向を変えました。
 彼女からの返答は、僕をして思わず言わしめました。
 「うそだろ?」
 さい君は、母親と違って平然と言い放ちました。
 「うん、隣に座ってたグループがね、」
 「うん。」
 「若い男女四人でね、」
 とさい君は、淡々と続けます。
 「うん。」
 「かばんにお皿を入れて帰ったの。」
 「!!!!!!!! うそだろ!」
 「全部じゃないよ。」
 「あ、いや、そういうことではなくて・・。」

 さい君たちは、テーブル席について寿司を食べはじめ、隣にもテーブル席があったそうです。そこには若い男女の四人組がいて、ふと、母親が気がつくと、

『食べたはしから空の皿を持参の大きなかばんに入れていた』

のだそうです。

 「うそだろ?」
 「もう、それで、お母さん、ばれたらどうしようと思って!」
 「へ?」
 「それでどきどきして、寿司どころじゃなくて。」
 「いや、『ばれたらっ』って」
 「でも、うまくお皿持って帰れたのよねえ。ああ、よかった。」
 「よかったあ??」

 母親は、いつのまにかその男女に感情移入して、ことが露見しないようにーつまり食い逃げの成功を祈ってーその男女の一部始終を応援していたので、寿司どころじゃなかったんだそうです。

 信じられません。でも僕の母親は、『法螺吹き』じゃないんです。

 *そもそも、リスクが大きすぎる。
 *一方、リターン(=食い逃げで得る利益)は小さい。なにしろ
  『回転すし』ですから。
 *しかも、『おおきなかばん』を用意して、グループ内にも
  意思疎通がある、周到な確信犯である。

と、そういう現場に居合わせる確率ってすごく低いと思うんです。

 それから、肝心なことですが、店員に言いつけろ、とまではいいませんけど、
・『特に驚かない嫁』も、
・『ばれないように心ひそかに応援した母親』も、
少しずれているような気がします。

 ご参考までに、その後、僕もその回転すしに連れていってもらいました。美味しかったです。当然ですが、『目の前で皿をかばんに詰め込んで帰ってしまう男女』も目撃できませんでした。
 どうもいまだに、身内ながら、この話は信じられません。

========終わり===========


みぢかえない話③

「ま、そういう時代だった、てことだな。」

 今日は、『普段法螺など全く言いそうもない身近な人間が真剣に主張する、ありえない話』略して『みぢかえない話』、その③です。
 
 以前本シリーズ(シリーズになっていたのか!)の①で書いたように、この手の話は、送り手(それに関わる目撃者や書き手)が『心底信じ切って』情報を伝えようとする、ということに対しての話の受け手(=僕)の反作用がなんともいえない『現実をわすれさせてくれる感』を生むことにある。だから、その話の送り手の真剣度や、思い入れ度の深さが心地よくて、かつ、その反発心を最高に引き出してくれるのは、
 ①意表をつかれる。
 ②真剣な情報の送り手が目の前にいる。
というのが条件になるのでは、と分析してみました。その見地からすると、今回は上質の素材です。なぜなら、その送り手が、実の親、しかも二人揃って、なのです。
 
 僕の両親、つまり、みどりかずまさとみどりひろこ、は僕の両親歴は数十年におよびます。にもかかわらず、たまに実家に帰ってゆっくり話をしていると、いまだに唐突に、しかし、そこは年の功か、あるいは、そもそもそういう二人なのか、淡々と、みぢかえない話、が飛び出してきます。自分自身を、みぢかえない話の権威と以って任ずる僕としては、『うわ、この人たちまだこんな話があったのか!』と、灯台もと暗し、と驚愕すると共に、勢い、先駆者として沽券に関わらん、という意気ごみで聞き入るとになります。
 
 つい先日のことです。たまたま実家で、僕と両親、三人、という状況になりました。のどかな、緊張感のない時間に満ちています。かずまさはテレビの前で寝ころんで、テレビには彼曰くの『レッドセックス戦』が映ってますが、たまに彼を見るとほとんどうたた寝をしていて、『テレビを見ながらうたた寝をしているのか、うたた寝の間にレッドセックス戦をみているのか』判然としない様子です。僕は、その横のテーブルに座っていて、母親が、僕の無聊の相手をしてくれていました。
 「ほんとにお父さんはよくこの年までいきてるわよねえ。」
 「いやあ、それは俺も子供こころにこの人は長生きできん、
  と思ってたけど。」
 かずまさ、視線はテレビのまま、
 「なにや?言いたいこというなあ。」
 「悪いこと、いっぱいやってねえ。」
 「・・・・・。」
 「ほんとに、たくさん。あ、そういえば覚えてる?あのとき、ほら豊中でおまわりさんが家に来て・・」
(!!お、おまわりさんが家にい~~!なんだなんだ、いきなり、しかも淡々と?そんなの知らんぞ。豊中といえば俺は小学生・・・お父さん逮捕でもされのか?何をやったんだ?)
まずまさ、視線そのまま、一向に動じず、
 「ん?ポリ公がうちに?なんだそら?」
 僕は、すでにいろんな意味でどきどきものです。
 「ほら、酔っ払い運転で捕まって、ご主人をひきとりにこいって
  警察署から電話があって、それから・・」
 「おお、おお、あれか!うん来た来た、うちにな、おまわりがな。
  ・・・あれ?それでうちで飯食ってたんじゃないか?」
(ええ~!!! 話が全然見えんが、とりあえずおまわりさんが、うちで飯を食うって、あり得ないんじゃ・・????)
 「そうそう。ご飯でもっ、ていうことになって三人で警察から
  帰ってきたのよねえ。ほんとにめちゃくちゃなお父さんだっ
  ただったから、いつ死んでおかしくないって、お母さんは
  はらはらしてたわよ。」
 かずまさ、軽く、
 「ばかやろ。」
 と、僕を置いてけぼりにして、二人の会話は暫時完結してしまいました。僕としては、この時点ですでに反発心に満ち溢れ、あきらかに、このみぢかえない話、を掘り下げないわけにはいきません。
 「あの、それってどういうこと?」
 「だからねえ、お父さんは無茶ばっかりでね。いい年して
  『そのへんのあんちゃん』よ。お辞儀の仕方ひとつから、
  お母さんが教えたんだから。家で何回も練習させてね。
  それからあんたも知ってるでしょ、家のトイレで急性
  アルコール中毒で倒れたの、あの時はね、」
 「いや、それは覚えてるけど、さっきの話ってどういうこと?
  まず、お父さんが酔っ払い運転でつかまったんでしょ?」
 「そうそう、よく捕まってたけど、その時は、警察から電話
  で、とにかく引き取りに来なさいっていうからお母さんが
  行ったのよ。」
 「うん、それで?」
 「そしたら、酔っ払ったお父さんが、若いおまわりさんの前に
  座らされていて、お母さんを見るなり『ひろこ、俺は飲んで
  ないよな?酔っ払ってないよな?』ていきなり与太をまいてね。」
 (うん、うん、でも一向に、『警官が家で飯』に結びつかんなあ。)
 「そしたら、その若いおまわりさんが『なら、あんた、ちょっと立っ
  てまっすぐ歩いてみなさい。』って言いだして、おとうさん、まっ
  すぐどころか、ふらふら。」
 かずまさ、
 「は、はははは。」
 「それでね、お母さんがとにかく謝って、それからここの警察
  にはうちの子どもたちもよく届け出ものをして、それをいた
  だいたりしてお世話になってるんです、て、」
 確かにその頃、僕や兄が、腕時計などを拾って届けて、拾得物として半年すぎても持ち主が判明しない、ということで警察からそれらのものをもらったりしたことが2,3回ありました。いま思えば高価なものでもなく、おもちゃに近いような腕時計を原っぱで拾ったりしただけで、警察にとってはむしろ仕事がふえてありがた迷惑なだけだっただろうけど、僕らにとっては、腕時計なんて踏み入れたことのない分野のモノだったし、なにより『いいことをした結果得たものという達成感』にあふれていて、兄や僕にとっては大きな出来事です。母親は子供たちのその喜びようを覚えていて、おまわりさんの機嫌を損ねないように、謝罪する過程で言及したようです。
 「そしたら、話が盛りあがちゃって、」
(んん?盛り上がる?ってのは解せんなあ。)
 「うむ、そうそう。」
 「それで、許してくれたのよね。」
(!!!!!へ???)
 かずまさ、淡々と、
 「そうそう、『よし、そんな素晴らしい息子さんのお父さんなら、
  今回は無罪放免だ!』つってな。」
(あり得えええん!!!!!)
 「え?無罪放免て、言葉で言っただけじゃなくて、本当に許して
  くれたってこと?違うでしょ?」
 かずまさ、あくびをしながら、
 「まあ、そういう時代だったんだな、うむ。」
 答えになってません。
 「お母さん、どういうこと、本当に許してくれたの?」
 「うん。立派な息子さんだっていうことで。」
(えええ~~~?)
 「それでね、ますます盛り上がってね、世間話しなんかしてたら
  今日は、これで勤務は終了だ、て言うから、」
 「言うから?」
 「じゃあ、まだならうちでお食事でもいかがですかってね、」
(ええええ!)
 「そしたら着替えて、三人で一緒に社宅に帰ってきて、ご飯食
  べてったのよね?パパ?」
 「うん、そうそう、『それじゃあ』、とか言って飯食ってったな、
  あのおまわり。」
 「嘘だろう!」
 「ん?ほんとだ、ほんと。まあ、あの頃は、そういう時代だったっ
  てことだよ、けいた。」
 「ほんとにお父さんには手を焼いたわよ。」
 「ばかやろ。」

 僕の限りなく深い懐疑心を置き去りにしたまま、両親は趣旨は飽くまで『やんちゃな父のエピソードの一例』ということで淡々とこの件についての話を終えてしまいました。
 『そういう時代だった』んではなく、本件のあきらかにみぢかえない部分を『時代のせいにしてしまう両親』のほうに、我が子ながら驚いてしまいます。
 この二人にはまだまだ、みぢかえない話が、ありそうです。今後も気が抜けません。

 ところで、これって、数十年前の話とはいえ、とりようによっては、『違法行為』じゃないですかね。 

 終わり
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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