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企業の経済活動

 「いや、それが振り込まれるのが来週だから、ちょっと待ってほしい。」

 先日、図らずも『企業の原始的な経済活動』を身近で見聞する機会を得ました。

 さい君が、地元の外国人援助団体の依頼により、ある催しで模擬店を出しました。
 『お国の特徴的な食べものを』という趣旨だったので、さい君は、①えびせん南半球風、②クッキー南半球風、③緑色のシフォンケーキ南半球風、を何日かかけて調理して用意しました。
 当日は、息子が販売助手として連れて行かれたそうです。その際、さい君は、息子に、手伝ってくれたらお小遣いをあげる、という甘言を弄して彼を助手とすることに成功したようですが、行く前に、僕が、ふと気になって、息子にはいくらあげるつもりか、と尋ねたらさらりと、
 「利益の20%。」
 と応えました。
 なんだそら、親子間の約束としては、ちとドライすぎないか?だいたい、利益が少なかったらどうするんだろう、『1,000円あげるから』くらいでいいんじゃ?
 でも、さい君は、
 「いや、そういうことを学ぶことも、彼には大事だから。」
 と言って平然としています。
 さすが、恐るべし、中国系南半球人です。
 これは、企業同士の経済活動に敷衍すると、いわば『販売代理店と諾成による(それはそうです、まさか、さしものさい君も、息子と契約書を交わしたりはしてませんから。)成功報酬契約の締結』をした、ということですね。
 ちょっと僕にはこういう発想は浮かばないです。

 さて、当日、あなうれしや、息子の奮闘もあってか、さい君の三種類の商品は、催し物が終了する前に完売したそうです。ありがたいことです。売上げは、総計6千なにがし円になったそうです。
 これは企業活動でいえば、損益計算書に売上げが計上されて、かつ、貸借対照表の借方の『在庫』が綺麗にゼロになっている、ということですね、結構なことです。
 一連の販売を終了したさい君は、帰宅すると、息子にあげる『成功報酬』の計算を始めました。
 すごい、言葉だけじゃなくて、この人本当に利益の20%をあげるつもりなんだな、と改めて感心しながら、しかし、僕は、黙って、彼女の上下する電卓を叩く指を観察しつつ、同時にさい君が、ぶつぶつとつぶやく『計算根拠』に耳を傾けていました。
 「ええと、クッキーの材料は、卵と小麦粉と・・・それからえびせんの材料は・・・それと、袋代とリボン代と・・・」
 ずいぶん細かく計算してるなあ、そんなのだいたいでいいんじゃないの・・・。
 暫く後、さい君は、『利益は2,600いくら円』という数字を導き出し、ひいては『フジの取り分は520円』と結論づけました。
 ここで、僕が興味深かったのは、彼女の利益の計算の仕方です。つまり、彼女は、たいへん細かく計算したとは言え、息子に与える利益の根源を、損益計算書上で言えば、売上高から売上原価をひいた、『売上総利益』をもとにしたんですね。これは息子にとっては幸いだったといえるでしょう。だって、さい君が、さらにその2,600円から、『販売管理費』、-まあ、そんなものは無いに等しいですが、引こうと思ったら、今回の販売活動にかかった『交通費』とか、主たる売り子であったさい君の『当日の人件費』とか、まあ、ひねくりだすことは可能なわけです。-を引いた『営業利益』だの、さらにその下の『経常利益』だの『純利益』だのをもとに息子の『手数料』を計算しなかった、わけですから。
 この520円という金額が果たして一日の労働への対価として妥当だったかどうか、はともかく、販売代理店である息子は、雇用主である母親からの『あんたの取り分は、520円』という通告を素直に喜んでおりました。

 さて、その数日後のことです。
 息子が友人に大真面目な顔で、
 「シュンケイ?いや、それがさ、まだなんだよ。え?いや、それが振り込まれるのが来週だから、ちょっとまってほしい。」
 と電話していました。
 なんだなんだ?とさい君に聞いて見ると、さしものさい君が、笑いを堪えながら教えてくれた話を要約してみるとこういうことだったようです。
 息子は、今回の520円を頼って、友人のしゅんけい君とカードを買いに行く約束をしたんですね。ところが、件の模擬店での販売は『クーポン制』で、実際に現金が支援団体から、さい君の手に渡る方法は『後日振込み』だったんです。それで、息子からの『手数料の催促』にさい君は、そのまま、
 「ちょっと待って。あれは振込みだから、来週。」
 とこれまたドライに返答していたもの、だったんです。
 息子は、早くカードを買いに行こうよ、とせかすしゅんけい君に対して、母親の文言を律儀にそのまんま説明していたんです。
 ははあ、なるほど、と思いながら、これはこれで僕には興味深かったです。
 この状態は、企業の財務活動で言えば、さい君の損益計算書では、売上げも利益の計上も終わっているけれど、貸借対照表上の借方に『売掛金』が出現して、未入金の状態です。その『売掛金未入金』を理由にさい君が息子に支払いをしていなかった、ということです。そこで、企業の財務活動を表す、貸借対照表表・損益計算書以外のもうひとつの重要な指標、すなわち『キャッシュフロー』上の事情を、つまり『資金繰り』について、代理店である息子が支払い活動を督促する『しゅんけい君』に理解を求めていた、わけです。
 『いや、売上げはうちも、契約主も確かに立っているんだけど、今、手元流動性が低くて・・・』ってね。
 ただ、ここで、息子は、『本契単体のキャッシュフローはともかくとして、あなたのところは資産はもっと大きんだから、520円の支払い手数料くらい払える手元流動性はあるんじゃんないの?当該売掛金があなたのところに入金になるまで待たなきゃいけないの?』と、さい君をつつくことまで頭が回らず、さい君のキャッシュフローが自分に対して520円を支払えるようになるのも、また来週の入金を待たなければいけない、と錯誤したわけです。
 さすがにそれは可愛そうだ、いくらなんでもそれくらいのキャッシュ捻出はなんとかなろう、ということで、無事さい君から息子に520円が支払われました。

 ちなみに、このブログを書くにあたって、息子に、
 「おい、あの520円で、ちゃんとしゅんけいとカード買ったか?」
 と聞いたら、
 「うん、一緒にカード買いに行ったよ、200円使った。320円残ったけど、その中からママに100円貸したから、今220円ある。ママから100円はまだ戻ってないんだよね。」
 と予想外に詳細な説明がありました。
 息子は、彼の貸借対照表の借方に母親への『貸付金』を計上していた模様です。ここで、借りたほう、つまりさい君が、その貸借対照表の貸方に『借入金』を認識・計上していなかったら(なんだって息子のなけなしのキャッシュから母親が100円借りないといけないのかしらん?)ちょっと問題なので、さい君に確認したら、
 「うん、確かに100円借りてる。」
 と、これまた平然と言っておりました。
 お互い『健全な仕訳』がなされているようで何よりです。

===終わり===
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ありがとうございます。

> ふむふむ、中々良い教育の仕方である。それにしてもえびせん、クッキー、シフォンケーキ南半球風は想像するだにうまそうである。

ありがとうございます、今度ご家族で食べに来てください。

No title

ふむふむ、中々良い教育の仕方である。それにしてもえびせん、クッキー、シフォンケーキ南半球風は想像するだにうまそうである。

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます!

勉強になりました
プロフィール

緑 慧太

Author:緑 慧太
好きな言葉:『終身雇用』
座右の銘 :『負けるが勝ち』

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